正体
ノワールが現れてから1週間後の話です!
少し、地表現があります。嫌な方はブラウザバッグしてください。
ノワールが現れて1週間が経った。ある日、僕達は森の奥にひっそりと開けた小さな草地に来ていた。
勿論、魔法の訓練をする為にだ。特に威力を強化するらしい。
主人は、ちゃんとエドガーさんに連絡したらしい。
「もう一回。さっきより風を溜めて放って。」
僕は小さく息を整え、右手に風の魔力を集めた。
先程より良くなった。
ルナティナは僅かに目を細めて頷いた。
「いいね、形が崩れる前に――」
その瞬間、風がザッと逆巻いた。
森の奥から、たくさんの歩く靴の音。
僕は思わず振り向き、風刃が手の中で揺らぐ。
「主人……誰かが」
「……来る。三、四……八人。エドガー」
主人は剣を構えながら、ベルを鳴らす。
遠くの枝葉を揺らしながら、影がこちらへと近づいてくる。
来た。
そこには沢山の兵達が居た。……兵が襲ってきた。
僕は魔法を使った。倒せたが、主人は?急いで向かわなければ、主人も危ない。そんな事を考えながら主人を見つけた。
主人と兵が戦っている。
「何が目的?」
返事の代わりに、兵達の一人が言葉を吐き捨てた。
「そいつを回収する――それが命令だ。」
その言葉が理解するより早く、魔法が主人に放たれた。
僕は咄嗟に風で弾道を逸らす。良かった、当たらなかった。
だけど僕は今気づいた。
もう一つ、主人の頭上から火弾がある。咄嗟に叫ぶ。
「主人、上!」
――その瞬間、
「ガッ」と何かが風を切り裂き、火弾が真横に弾かれた。
「……やれやれ。訓練の邪魔をするなんて、マナーがなってないですね」
涼やかな声が響いた。黒色の髪を揺らしながら、悠然と立つ男の姿──エドガー・アシュフォード。
「遅れて申し訳ありません、お嬢様」
兵の一人が呻き声を上げながら後方に吹き飛ばされた。
「……っ!?」
何が起きたか、僕には見えなかった。が、主人は静かに目を細めて呟く。
「雷華、かな?」
「そうでございます。弱い魔法程度なら、迎撃は容易いですね」
エドガーは目線だけを兵たちに向け、軽く指先を鳴らした。
空気の中の魔力がピリ、と震える。枝葉が小刻みに揺れ、上空で雷光が散った。
「なに、やってるんだ……!撃て!撃ちまくれ!」
兵たちは踵を踏み込んで一斉に攻撃魔法を放つ。しかし、黒い雷に弾かれていく。
「フィリシア、風を使って左側を抑えて。あとは――」
夜蓮のスキルの詠唱を口にし始めた。
『――晨闇に咲く夜蓮よ、その刃を此処に降ろせ』
淡い闇色の蓮弁が宙に散り、そのまま弧を描いて兵たちへ向かった。
僕は右手を突き出し、風刃を連続で放った。斬撃が木々の間を抜け、敵の前に風壁を作る。これで、逃げられない。
「くっ、バリア魔法か……!」
大分倒れた。
しかし、まだ魔力をまとった者が一人、こちらに杖を向けていた。
「そいつだけは……絶対に回収しろ!」
「させません」
エドガーが、静かに剣を振り下ろす。
小さな雷の花が咲き、次の瞬間、鋭い雷光が一直線に走った。次見た時にはまるで、花火が落ちる様に赤く散った。
「終わりです」
淡々とした声と共に、森の奥の靄が薄れていく。
気づけば、その場に立てている敵はいなかった。全員が動けないまま地面に伏せている。
息を切らしながら僕は主人の方へと駆け寄る。
「しゅ、主人……大丈夫?」
「うん、大丈夫。フィリシア、よくやった」
主人は微笑んだ。
「大丈夫なら、良かったです。……さて」
エドガーはいかにも面倒そうに、丁寧に剣を振り、片手で持ち直した。
「状況は理解しました。魔導騎士団ですね。これほど急に動くとは……。さて、彼らがなぜ“フィリシア”を狙っているのか、詳しく聞かせてもらってもいいでしょうか」
「……もう誤魔化せない」
ルナティナは小さく息を吐き、目を伏せた。
「フィリシアのブレスレットから推測できるよ。まぁ、こいつらの頭を覗いてもいいけど」
不吉とも、優しさともつかない視線が僕に注がれる。
鼓動が、痛いほどに鳴った。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
予告しときます。次の話ではフィリシアの正体が分かります。説明することは無いので、これだけ言っときます。
ここまで読んでくださりありがとうございました。




