プロローグ
ほとんど利用はしていないくせに相手の情報を見るためだけに使っていたSNSのアプリに、通知が入る。
このところ頻繁に、複数のアカウントから同じ内容のメッセージがきていた。
『あなたの夫、不倫してますよ』
送信者のアカウントには覚えがなく、使われているアイコンも海や川の写真で、相手の性別も年齢もわからない。
メッセージには短いその言葉と共に、複数の写真が添付されていた。
知らない女とレストランで食事をしている写真。知らない女と車に乗り込む写真。夫が親友だと言っている相手と手を繋いで歩いている写真。
そんなこと、私はとっくに知っているというのに。
私の愛する理想の夫。
仕事ができる営業マンで、年齢はひとつだけ年上で、顔は少しだけ強面だけど本当はとっても優しくて、鍛えられた身体は本当に頼もしくて……
それで、それで……とってもかっこいい、仲間内でもめちゃくちゃモテてるお兄ちゃんみたいな存在で、何事もはっきりモノを言うとっても頼りになる人で……
職場でもプライベートでも、いつもたくさんの仲間に囲まれていて、その輪の中でも常に中心にいる人気者で……
でも、いつも私のことを最優先にしてくれて、私の考えを尊重してくれる。私にだけは本当に優しくて、私を幸せにしてくれる最高の人。
そんな人が……そんな夢みたいな人が、本当に実在した。
そんな人を、私は夫にすることができた。