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第7話 少女と学校

「つーちゃんおはよっ!」



 ――レイくんを連れて戻った次の日。

 ……連休の中日。

 平日なので当然学校がある。あってしまう。


 そんな日の朝、駅から学校への道の途中で江ノ島さんと鉢合わせた。


「おはよう、江ノ島さん」

「もぅ、名前で呼んでって言ってるのに!」

「ごめんなさい輝蘭羅(きらら)さん、つい」


 江ノ島輝蘭羅(きらら)さんとは先日の神社の件以降も連絡を取ったりして……要は仲良くなっていた。


「にしてもさぁー、せっかくのゴールデンウイークなんだから間の平日も休みにして欲しいよねっ!」

「本当に」


 せっかくレイくんとのいちゃいちゃパラダイスが始まるというのに。


「ところでさっ、レイくんはその後どうなの?」

「元気よ。ほら、出ておいで」


 元気……霊体だけど。


「えと……きららちゃん! おはよー!」

「おはよっ! 一緒にいたのね」


 当然、2度と離れないと誓ったもの。

 ではなく――あれからレイくんの状況がまた少しわかってきた。


「実はレイくん、私からあまり離れることができないみたい」


 私に憑りついているからかしら。

 離れられてもせいぜい2メートルくらい。


 つまり、私は今、とても幸せです。


「あ、そう……幸せそうね」

「えぇ」




 そんなことを話しながら、教室に着く。


「キララ! それに……椿さん」

「かきぴー! おはよっ!」

「おはようございます」


 かきぴー……例の配信に来ていた『柿ピー大好き』さんかしら。

 たしか柿崎さんと言ったっけ。


 中学の頃から派手めな子だったけど、今や金髪にピアスとさらに派手さに磨きがかかっている。

 胸の谷間が見えているわ。痴女なのかしら。


「あのさ……大丈夫、だった?」

「んー」


 あの日のことを言っているんだろう。

 そういえば……『ざまぁwww』とか言われていた気がするけど。


「てかさ、やっぱりあの配信は本物だったんだね……」


 そういう彼女の視線はレイくんに向いている。


「ほら、レイくん」

「こんにちは! なのはられいです!」

「上手にあいさつできまちたねぇ~! いいこいいこだねぇ~!」


 しっかり挨拶できて偉いわね。


 柿崎さんも輝蘭羅(きらら)さんも、幽霊であるレイくんが元気に挨拶したことに驚いている様子。

 ポカンとしている。


「……こほん。柿崎茜よ。よろしく」

「かきぴーちゃん!」

「馴れ馴れしく――っていいわね、うん! だからそんな睨まないでよ……」


 ふふ、柿崎さんもレイくんの魅力にメロメロね。


「……つーちゃん、レイくんのことになると容赦ないのね……」

「何か?」

「う、ううん! それよりさっ、レイくんは私たちの命の恩人なんだからっ! かきぴーも仲良くしてよねっ!」

「……わかったわよ。よろしくね、レイ…………くん」

「うんっ!」


 柿ピーさんは霊感があるようだし、レイくんも普通に見えている様子。

 羨ましいわ。




「よう! お前がレイってやつか!?」

「おはよう、キララ。それと椿さんと……レイくんも?」


 次から次へとレイくんのところに……というよりは輝蘭羅(きらら)さんのところに人がやって来る。

 よく彼女たちは一緒に過ごしてるのを見かける人たちね。


毒島(ぶすじま)透だよ。お願いだから名前で呼んで欲しいな」

檜木(ひのき)豪だ! お前、凄いやつなんだってなぁっ!」


 短髪にあご髭、更に立派な体格というちょっと近寄りがたい風貌の男がレイくんの頭に手を伸ばし――。


「――やっ!」

「うおっ!?」


 体型のいい男だったが、レイくんの見えない何かに弾かれて尻もちをついてしまう。


「おめぇ……」


 ピシッと、周囲の空気が固まった気がした。

 レイくんに何かするようなら……殺ってしまうことも視野に入れて――。


「ほんとうにすげぇなぁっ! 俺ぁこれでも結構鍛えてるんだがよっ! 完敗だぜっ!」


 笑いながら立ち上がる檜木(ひのき)くん。


「仲良くしてくれよなっ!」

「むぅ~……」


 そう言って今度はゆっくりと右手を差し出す。

 できればレイくんに触らないで欲しいのだけど。

 私ですらまだ触れないのに……。


「いててっ! おい、ひげを抜くなよっ!」

「ぶぅっ!」


 檜木(ひのき)くんが怖いのかしら。

 念動力のようなものでひげを抜いたらしい。


「あははっ! いいじゃん、ひげ怖いしっ」

「俺のトレードマークなんだよ! いかついけど実は心優しいってギャップ男子目指してんだからよっ!」

「今は怖い人って印象だけね」


 そのギャップ目指すより最初から好青年の方がいいんじゃないかしら。


「豪、そのギャップよりも――」


 絵にかいたような金髪爽やか男子、毒島(ぶすじま)くんが喋ろうとしたところでチャイムが鳴る。


「ぷっ! タイミング悪っ!」

「ぐっ! ……また次の休み時間に! もちろん椿さんも来ておくれよ!」


 どうしようかしら。

 正直このグループの人たちとあまり関わるのはめんどくさそうなのだけど……。


「……僕もレイくんとやらを見てみたいんだよ」

「……見えてないんだ」


 ぷぷ。

 こんな愛らしいレイくんを見ることができないなんてかわいそうね。

お読みくださりありがとうございます!

見た目オラオラなギャップ系男子、自分なら近寄らないです。




もう1つ小説を投稿しています。異世界転生モノです。

そちらもよかったらぜひお願いします!

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