第５話 少女と生還
「それじゃ！ 今日の配信はここまで！ みんなぁー！ 次もキラキラしようねーっ！ キラッ☆」
＜ＴＯＲ：おつ！＞
＜キラリン推し：きらっ☆＞
＜怖い話スキー：おつ！ 次も見に来ます～＞
神社を出たところで江ノ島さんが配信を終わらせる。
「……ふぅ」
「おつかれさま。ありがとうね」
「こちらこそっ！ てか、めちゃくちゃ怖かったぁーっ！」
「そう？」
ほっとしたのか、半泣きになって座り込んでしまう江ノ島さん。
「……あはは、漏らしちゃった」
「問題ないわ」
「そ、そう？」
「えぇ、私もよ」
……。
「……やっぱり怖かったんだね」
「怖くなんかなかったわ」
本当よ？
嬉し漏らしよ？
「嘘つきなさい。本当は怖がりのくせに」
「恭子さん！」
「本当は怖いから誰かについてきて欲しくって。だからあなたみたいに明るくて元気な子が来てくれることになって喜んでいたのよ」
「……恭子さん……」
何で言うのよ……。
というか、やっぱり配信を見ていたみたいね。
「つーちゃん……へへっ！」
「……」
まぁ、いいけど。
「ところで、途中で何だかすごそうな勾玉を出してたけどもしかして――」
「えぇ、あれは私が作ったものよ」
「やっぱり！ 恭子さんって何者なんですかっ？」
私の保護者であり、師であり、もの作りが趣味であり――。
「霊能力者であり、除霊師よ」
「へーっ！ って、だったら恭子さんも一緒に来てくれたらよかったのにっ！」
「言ったでしょ、私は除霊師よ？ 幽霊なんて存在、許せないの。ましてや娘同然の子に憑りつかせるなんて……」
苦虫を嚙みつぶしたような表情の恭子さん。
恭子さんとはそういう約束になっていた。
私には協力するけど、基本的にレイくんには直接関わらないと。
「さて、レイくんとやら。少し姿を現してくれるかしら」
「今の話の後では出にくいんじゃ……」
「ちょっと様子を見てあげるだけよ。特別に、ね」
レイくんはというと……今は私の中に入っているような状態で――。
私の中に、入っている……！？
「はぁはぁ……レイくん、出ておいで……」
「（で、でもぉ……）」
「大丈夫よ、レイくんに悪いところがないか見てくれるだけだから」
少しの逡巡の後、レイくんが私の中から出て――。
「はぁうっ！」
「えっ？ つーちゃん大丈夫！？」
「……はぁ」
大丈夫、まだ……！
「……大方レイくんとやらが自分の体に出たり入ったりしてることに興奮してるんでしょ」
「えぇっ！？ ええぇ～……？」
「そんなことばっかり考えてるんだから……清楚系だなんて、聞いてあきれるわ」
仕方がないじゃない……！
ずっと待ち望んでいたレイくんとの再会なのだから。
「はぁ……まぁいいわ。レイくんとやら、少しの間何も考えずに落ち着いていてね」
「うん……なにもしない？」
「しないわよ。多分」
「ひぃっ！？」
恭子さん……レイくんに意地悪をしないで欲しいんだけど。
……。
「……ふ～ん……」
しばらくの間レイくんを観察していた恭子さんが何とも言えない表情をする。
「だ、大丈夫よね？」
「……ん～……」
少し考えながら、恭子さんが続ける。
「……まだ彼の魂は少し不安定に見えるわ」
「……」
かつて――私が生贄にされそうになった時、身を挺して私を守ってくれたレイくん。
その時に蛇神に魂を粉々にされ……いろいろあって修復して貰っていたのだけど……。
「砕けた魂を、悍ましい力と清らかな力と……混ぜ合わせて粘土みたいに形作っているようだけど、まだ完全には安定していないようね。記憶がないのもそのせいかも？」
そんな！
あの人は確かに１７歳になる日と言っていたのに……！
「どう、すれば……」
「さぁ？ 人間にどうこうできる範疇じゃないし……様子を見るしかないわね。不安定といってもすぐにどうにかなる訳でもなさそうだし。それに――」
「それに？」
「今日はもう休みましょう。彼女、江ノ島さんは限界みたいよ？」
江ノ島さんを見ると、しゃがんだまま寝ていた。
せめて下着とか着替えてからの方が……。
お読みくださりありがとうございます！
よく漏らしたまま寝れるなと思います。
もう１つ小説を投稿しています。異世界転生モノです。
そちらもよかったらぜひお願いします！
