第4話 少女と少年
「だめっ! つーちゃん逃げようよっ! 本気で――」
「あら、肝試しの目的ってこうじゃなくて?」
「そうだけどっ! そうだけどそうじゃないのっ!」
<aaaa:美少女のスクラッパー配信?>
<(^q^)プッ:はよ>
「……行くわ」
泣き叫ぶ江ノ島さんを横目に、1歩踏み出す。
その瞬間――。
「……クルナ……」
「「ヒィィィッ!?」」
身の毛もよだつような、悍ましい声が女から発せられる。
「……無駄よ」
それでも歩を進める。
「オォォォ……!」
「「きゃぁぁぁっ!?」」
女から髪が伸び、私たちの足に絡まり上に伸びてくる。
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:肉体に直接干渉するレベル!>
<豚バラ炒飯:本当にまずいって! 逃げて!>
<柿ピー大好き:2人とも!?>
「……カエレ……」
「ぐるし――っ」
これが最後の警告だとでも言うように、髪の毛が喉に絡まる。
けど、そんなの関係ない! あきらめない!
「れ、いくん……! レイくん! 起きて! 迎えに来たわ!」
「……え?」
<TOR:誰? レイくん?>
「オォォ……」
「そんな女のとこにいないで! こっちにきてレイくん! ――ぐぅぅっ!」
いよいよ喉の髪の毛が本気で締め付けてくる。
苦し、けど――。
「んん……」
「レイぐん! レイくん!!!」
女に抱かれた子ども――私が長年待っていた男の子が身じろぐのが見えた。
「……だれ……?」
「私よ! 椿! 迎えに来たの!」
その瞬間、自惚れでも何でもなく、空気が変わった。
「……わか、らない……けど……!」
「オォォ! オォォォォ……!」
「つばきちゃんをっ! いじめるなぁーっ!!!」
レイくんの手から眩しい光が放たれ――。
「オォォォ……オォ……」
あっけなく――。
「……」
本当にあっけなく、女は消え去った。
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:は?>
<霊感少女型おいたん:女の幽霊が消えた……>
<怖い話スキー:さすがに……え?>
<(^q^)プッ:急にSFかよつまんね>
<闇より井出氏:……『彼』も、『そう』なのか……>
「た、助かった……の?」
呆然とへたり込んだ江ノ島さん。
そして……目の前には宙に浮かぶレイくん。
あの時と全く変わらない姿をした、男の子。
「レイくん!」
「うぅ……わからない……つばきちゃんは、まもる? ぼくは……」
<豚バラ炒飯:子どもの方がやばそうだぞ!>
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:錯乱してる。まずいんじゃ……>
<霊感少女型おいたん:幽霊になると生前の記憶が曖昧になるって言うしね>
……大丈夫、想定内よ。
「レイくん、おいで」
「……お、ねえさん……つばきちゃん……?」
「えぇ。私と一緒に行きましょう」
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:まさか憑りつかせる気!? 危険すぎる!>
「おねえさんと……?」
「えぇ、心配ないわ。ずっと……ずーっと一緒にいるの」
両手をめいっぱい広げる。
「……うん! いく! ずっといっしょだよ!」
「ええ、ええ……!」
今度こそ、2度と離れないように。
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主人公の登場です。ちっちゃい子です。
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