第3話 少女と生贄
「い、生贄……? つーちゃんが……?」
「えぇ」
江ノ島さんが信じられないものを見るような目で私を見る。
「えっ? だって……つーちゃんは生きて……? えっ?」
「さぁ、どうかしら」
ふふ。
今にも泣きそうな顔でこっちを見ているわ。
「ひっ……ひぃぃ~……!」
「ふふふ」
<TOR:きらら! にげろ!>
「た、たすけっ……!」
「うふふふふ」
<TOR:そこから離れろ! 生贄にされる! 逃げろ!>
「なーんてね! つーちゃんが幽霊な訳ないじゃん! 騙されないよっ!」
「あら、残念」
<TOR:逃げ……え?>
<キラリン推し:知ってた>
<柿ピー大好き:さすがにねぇ。私は4年以上同じ学校だし>
あら、柿ピーさんは私のことを知ってる人だったのね。
柿……柿崎さんかしら?
<TOR:え?>
<きらリン推し:『TOR:逃げろ! 生贄にされるぞ!』>
<怖い話スキー:くさwww>
<紳士的なお兄さん:くさwww>
<闇より井出氏:少年よ、友を心配することは恥ずべきことでは……ぷぷwww>
「TORさん心配してくれてありがとねっ! さっ、気を取り直して……」
「えぇ、扉を――」
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:待って! その扉は本当にやばいって!>
「――開けるわ」
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:待って本当止まって>
「わ、わぁ~……」
扉を開けた瞬間、江ノ島さんの顔が強張ったのが見えた。
「行きましょう」
「まじ……?」
<怖い話スキー:なんか黒い影見えない?>
<きらリン推し:……見えちゃった>
<霊感少女型おいたん:いるね。そこかしこに>
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:今すぐ配信止めて! あなたたちもそこを動かないで!>
いると言われても……。
私には感じられない。見えたとしても関係ないけれど。
「つーちゃんは見えないの!? 何か黒いもやもやが見えるしっ! あり得ないほど寒いしっ!」
「言ってなかったけど、私いわゆる0感なの。全く何も見えないわ」
「何それっ!? 何それぇぇぇっ! 自分だけずるいじゃないっ!」
あ、そういえば。
「こっちの部屋に色々いわくつきのものをまとめてるって聞いたことが……ほら」
「んぎゃーっ!? 人形が動いてる!? あの箱カタカタ動いてるぅっ!? 何あの鎧!?」
<TOR:んん?>
<闇より井出氏:HAHAHA……はは>
<怖い話スキー:おいやめろもっとやれ>
<柿ピー大好き:つーちゃんこの野郎覚えてろよ>
<霊感少女型おいたん:0感の人って幸せだね……>
配信サイトのコメント欄も阿鼻叫喚の様相。
でも私には何も異変が起こっているようには見えない。
「それでもね……私はここに来なければいけなかったの」
「えぇっ!?」
いわくつきの物を集めた部屋を出て先に進む。
「私が生贄に選ばれていたのは本当。そしてあの日、私はここに来た」
「――えっ?」
代々村の長を務める家系から、5歳に満たない女の子を1人。
当時4歳だった私は……突然村に伝わる話を聞かされ、ここに連れて来られた。
地上へと戻る扉は固く閉ざされ、泣きながら進んだ先で見た物は……とぐろを巻いた巨大な蛇。
「悪い神様――巨大な蛇に食べられそうになったその時……ううん、この話は後にしましょう」
「……」
「さぁ、この先に私が待ち望んでいた人が!」
「………………」
巨大な蛇が留まれるような広い空間、そこには何もなかった。
「……コヒュッ」
「……」
<TOR:……何も見えないぞ?>
<きらリン推し:きらリンは見えてるっぽいね。泡吹いとるw>
……私は0感ですもの、仕方ないわね。
「ここに、恭――高名な霊能力者さんから頂いた不思議な勾玉があります」
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:あ、それは……ぴょん!>
「これを付けるとあら不思議。霊感の全くない私でも――わたし、でも……見え……」
「……コヒュッ……コヒュッ……!」
<霊感少女型おいたん:見えちゃったね……>
<柿ピー大好き:ざまぁwww>
<TOR:え? え?>
「……」
「……ゴホッゴホッ! もぅ、いやぁ~……帰りたいぃぃ……」
<霊感少女型おいたん:髪が異様に長くて白い服を着た女の人、だね>
<怖い話スキー:子どもを抱いてる……? てか本当にやばくないかこれ……>
<豚バラ炒飯:まずいですね>
<柿ピー大好き:あっはっはwww こわずぎ助けてwww>
私にもはっきり見える。
「……ふふ! うふふふふ!」
「ちょっ!? つーちゃん!? 行っちゃだめだよっ!!!」
<豚バラ炒飯:こわれた?>
ようやく……ようやくよ!
「会いたかったわ……!」
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夜の神社、いきなり不気味な女の人がいたら私もチビリますね……!
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