第2話 少女と神社
「きらリン☆ キラキラチャンネルー! さぁやってきたよーっ! 今日はなんとぉ……肝試しをしたいと思います!」
車での移動を終え、ようやく着いた目的地。
そこで江ノ島さんは撮影用の棒?の先にあるスマホに向かって元気に挨拶をした。
早速配信用の撮影を開始するようね。
「そしてそして! 今回は特別ゲストをお呼びしています! その名も……つーちゃんでっす! いぇーい! 清楚系美少女だぞーっ!」
「こんばんは」
紹介に預かったので挨拶をしておく。
『こんばんは』の言葉通り、すっかり日も暮れて辺りは真っ暗。
事前にきらリン……江ノ島さんに指示された通り、自分のスマホでも配信サイトを表示している。
すると……。
<きらリン推し:あれっ確かクラスメイトの……>
<TOR:まじか! きらリンと絡みあったっけ?>
なんてコメントが見える。
もしかして生放送?
「そして……今日来た場所はピー村のピーと言う神社ですっ! ここには超強力な悪霊が封印されているとかなんとかっ!」
……情報が全く無いわね。
「ここがどういう場所か教えてあげる」
「へっ?」
「この神社はね、生贄を捧げていた場所なの」
「へっ? い、いけにえ?」
そう、生贄。
「この地域はね、資源豊かな環境だったんだけど、それは悪い神様が治める土地だったからで……ここで暮らしていくためには定期的に生贄が必要だったんだって。大勢の村人を生かすために必要な犠牲だったのね」
「お、おぅ……」
「10年に1人……長い時の中、何人もの人間が生贄に捧げられたわ」
「……」
「そしてその生贄に選ばれるのは……」
ごくりと息を飲む江ノ島さん。
「――健康的な少女、だそうよ」
「へ、へぇ~……く、詳しいのねぇ~……」
<柿ピー大好き:詳しすぎわろた>
<豚バラ炒飯:ミステリアス系美少女……推せるっ!>
<TOR:つーちゃんこんなキャラだったのか>
「……なんてね」
「へっ? あ、あーっ! つーちゃんったらっ! 正直ここにいるだけで怖いんだからっ! やめてよぉーっ!」
ここに来るまでそんなこと言わなかった江ノ島さんも本当は怖いらしい。
気を紛らわせるようにスマホに目を向ける彼女。
<紳士的なお兄さん:こんばんは>
<怖い話スキー:おはつです>
<闇より井出氏:よろしく>
「わっ! 紳士さん、怖い話スキーさん、闇より井出氏さん初めまして! ゆっくりしてってねっ!」
「こんばんは」
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:はじめましてだぴょん>
「ぴょんさん! かわいい名前だね~っ!」
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:ありがとだぴょん。きらリンもかわいいぴょん>
「照れるー! 今回は『美少女2人で廃墟に肝試し企画』だよっ! 楽しんでいってねっ!」
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:調子に乗るなぴょん!>
<キラリン推し:くさ>
「へへっ! そんなこんなつーちゃんが怖い導入を入れてくれたおかげか同接が50人を越えましたっ! ありがとねぇ~!」
あまり配信者事情に詳しくはないからわからないけれど、50人って言うのは多いのかしら。
「さぁっ! この調子で突入したいと思いまぁすっ!」
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:ところでだけど、ここはまじでヤバそうだぴょん>
▼▼▼
「た、建物の中に入りましたぁ。廊下の左右にいくつか扉があってその奥が広間かな……てゆか何だかすごく寒い気がしますぅぅ……」
<闇より井出氏:これが……闇への帰還門……>
<柿ピー大好き:ちょっと本当に怖いんだけど!>
<TOR:俺も……>
「柿ちゃん、頑張って応援してて! 私も頑張るから……ということで進んでみます……!」
<柿ピー大好き:とりあえずトイレ行ってくるから待ってて>
<怖い話スキー:左の扉が怪しいと見た>
「左の部屋はただの集会室よ。目的は奥の部屋にあるわ」
「お、奥ね……え?」
<怖い話スキー:え?>
「ど、どうして知ってるの……?」
「言ってなかったかしら? 私、この村に住んでいたことがあるの」
<TOR:マジ? つーちゃんってこっちに越してきたの?>
「初耳だよぉ! だ、だから色々詳しいのね」
「えぇ。途中の部屋は集会や休憩用に使われているだけの部屋よ。ほら」
「わわっ! いきなり開けないでよ……って本当だ。どこの部屋も机とか椅子があるだけで他には何もないね……」
<柿ピー大好き:心臓に悪いって……>
<豚バラ炒飯:メンタル強者やな>
「広間は……すごい、神様みたいなのを祀ってるのかな? 祭壇っていうの……?」
<TOR:すっげ、こういうの初めて見たよ>
<紳士的なお兄さん:おにゃのこ!>
<闇より井出氏:ほぅ、悪くない>
「紳士さんが言うように、きれいな女の人の像がいくつか飾ってありますね~。こんな神様が生贄を求めるなんて信じられませんが……」
<紳士的なお兄さん:かわいい女神様に食べられるのなら本望>
<闇より井出氏:闇深>
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:いや、しかし……>
「そう、ここに祀られているのはフェイク。本物は巨大な蛇のような見た目よ」
「蛇……って、つーちゃん何してるの!?」
<豚バラ炒飯:さすがに祭壇に触るのはまずいのでは……?>
<きらリン推し:ちょっ! ほんと心臓に悪いことやめて!>
「この祭壇の下にね……あった。ほら見えるでしょ? 床に――」
「こ、これは……取っ手?」
「そうよ。地下室への隠し扉というものね」
<柿ピー大好き:ま?>
<闇より井出氏:これは……>
<きらリン推し:これ本当に大丈夫なの?>
<怖い話スキー:マジかw マジもんじゃねこれ>
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:やばいやばいやばい! それ本当にやばいやつ!>
「み、みなさんご覧いただけたでしょうか……! なんと神様を祀っているはずの場所に隠し扉が……!」
<TOR:さすがに……言葉がでない>
<きらリン推し:い、息がうまくできないんですけどぉ>
「予想外の展開に私もかつてないほど驚いています……」
<豚バラ炒飯:それより気になるんだけどさ>
「……ぶ、豚バラさんどうしましたか……?」
<豚バラ炒飯:なんでつーちゃんはこの場所を知ってたの? さすがに村に住んでたからって、ねぇ?>
<怖い話スキー:確かに>
<闇より井出氏:貴様らには聞こえぬのか? 闇が喚ぶ声が……>
「……そ、れは……」
<TOR:……>
「あら、そんなの決まってるじゃない」
<キラリン推し:……>
<柿ピー大好き:……>
「私が生贄だったからよ」
お読みくださりありがとうございます!
生贄、ダメ絶対。
もう1つ小説を投稿しています。異世界転生モノです。
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