第14話 少年と夏休み
ちょっと前のことを思い出したのは、メリーちゃんをおいしくいただいた後にきょう子さんの仕事場に来たから。
ここは……やっぱりこわいし、ピリピリする。
「配信、見てたわよ。とりあえずおめでとう」
「どうも~☆ 私たちにかかれば余裕でっす!」
「そうね。私とレイくんの愛の力で――」
そう! ぼくとつばきちゃんとキラちゃんのパワーでどんな悪りょうでも――。
「見事に調子に乗ってるわね」
「うっ」
……またまたこわくなった……。
「そもそも『名前付きの霊』というのは、現世に名前という明確な結びつきを持った非常に強力な存在なのよ。メリーさんなんてその筆頭で……特級霊体ね」
「現世の、結びつき……」
「確か、誰かが『名前付きを倒すとは』ってコメントしてたわね」
むむ。
メリーちゃん、そういえばいつもの悪りょうよりもおいしかったなぁ。
「メリーさんは『儀式型』に特化しているから、あの時点で倒せただけね。と言っても、メリーさんもあれくらいじゃ滅びないわ。しばらくは出て来ないでしょうけど、ね」
またメリーちゃんに会えるってこと!?
「『儀式型』……?」
「霊や……霊力を使う存在の力の分類よ。『儀式型』は、必要な手順を踏ませることで自身の霊力を何倍にも引き上げる型のこと。そもそも霊力は思いの強さに比例して強くなるから、それをより明確にしたものね」
思いの強さ!
それならだれにも負けないよっ!
「制約と誓約……うっ、頭がっ」
「わかったっ! メリーさんって確か何度も電話をかけてきて、それで最終的に……って言うのが儀式ってことだっ!」
キラちゃんがすごくキラキラしてるっ!
「その通りよ。後もう1段階クリアして完全体となったメリーさんは……」
「メリーさんは……?」
「死ぬわね」
そう言って首をふるきょう子さん。
「……」
「……」
……。
「ま、そういう事だから。あまり油断しない方がいいわよ」
「わ、わかりましたっ!」
「わかったわ」
「わかったよ……」
まっ、何があってもつばきちゃんは守るけどね!
「他の分類とか伝えたいことは後でメッセージで送るわね」
「わかった。後で『LAY-NE』を見ておくわ」
他……『ぎしきがた』みたいなことかな?
LAY-NEっていうのは、はなれていてもメッセージが送れるスマホアプリだよ!
「来週から夏休みでしょ? あなたたちの活動が本格的になる前に伝えられてよかったわ。私も忙しくなるし」
「そうなんですかっ?」
「えぇ……私のような仕事をしてる人間にとって、夏はかき入れ時ね」
そう言ってわらうきょう子さん。
何だか……べつの意味でこわい……。
「夏休み……ふふふ」
こういう時のつばきちゃんも、ちょっとこわい……。
「清楚系って紹介、もうやめようかな……」
キラちゃんがいると安心するねっ!
▽▽▽
「ねねっ! 恭子さんも言っていたけど、もうすぐ夏休みだねっ!」
「そうね。今から楽しみだわ」
夏休み……!
なんてすてきなひびきっ!
「もぅ! つーちゃんのことだからどうせレイくんと過ごしたいんでしょうけどっ! そうじゃなくって、一緒に遊びに行こうよっ!」
キラちゃんがいつもよりキラキラしてる!
「はぁ~……夕焼けの見える海岸、河原でバーベキュー、そしてひと夏の恋……なんつって!」
「私のしたいことがわかってるなら、邪魔しないで。それに恋人は間に合っているわ」
つばきちゃんがぼくを見ながら言う。
こい人! ぼくとつばきちゃんはこい人!
「もぅ! 少しくらい私にも協力してくれたっていいじゃないっ!」
「むぅ、それは……そうかも知れないけど。そんなに恋人がほしいの?」
「……あなたたちのイチャイチャを見てると、こう、ね」
キラちゃんの顔が赤くなってる!
「ムラムラするのね。ごめんなさい」
「愛されてて羨ましいってだけっ! この年中発情女っ!」
「まぁ、失礼ね。レイくんのことを考えている時だけよ」
「間違ってないじゃないっ!」
……。
何だかふれてはいけない話の気がする。
「はぁ……とにかく、除霊だけじゃなくって一緒に遊びに行こうねっ!」
「わかったわよ。狙っているのは……毒島君? それとも檜木くん?」
「あははっ! あの2人とはそういうの無理っ!」
「それじゃあ、どうするのかしら?」
「そりゃあ、まぁ……」
しばらく何もしゃべらないキラちゃん。
「……ナ、ナンパ?」
「……あきれた」
すごい、これが『あきれる』って表じょう……!
また1つかしこくなったよっ!
お読みくださりありがとうございます!
夏休みですね! 私の予定は……仕事です……。
もう1つ小説を投稿しています。異世界転生モノです。
そちらもよかったらぜひお願いします!