第12話 少女と念願の
「はぁん……いいわレイくん、いいっ!」
「う、うん……」
やましいこと?
一切していないわ。
「もっと……もっと強く、いれてぇ……?」
「……う、うんっ!」
学校の休校。
家族の不在。
となれば、ヤることは1つ。
「らめぇっ! らめぇぇぇっ!」
「はぁ、はぁ……」
そう、先日KYONKYONさんから教えて貰ったレイくんとの共同作業の練習よ。
「はぁ……はぁ……れ、レイくん、もう一回、しよっ?」
「うんっ!」
「……何してるのよ、あなたたち」
――っ!?
「きょ、恭子さん。やましいことは一切していないわよ?」
「その言葉が後ろめたいがあるって何よりの証拠よ……」
誰もいないと思っていたのに、急に声をかけられたからびっくりしただけ。
「まぁいいわ。準備、できたわよ」
「――っ!?」
先ほどとは違う理由で声に詰まる。
「つ、ついに……」
「えぇ。レイくんを連れて行きましょう。他のご家族にも連絡済みよ」
ついに、念願のレイくんとセッ〇ス!
▽▽▽
「はぁはぁ……お、お待たせしました神宮さんっ」
病院の待合室、そこでお父さんがようやくたどり着く。
これで全員――私、レイくん、両親、さくらちゃんが揃った。
ちなみに、神宮さんとは恭子さんの苗字よ。
「いえ、お忙しいところ申し訳ありません」
「いやいや、今の私の最優先事項ですから!」
最優先事項。それはもちろんレイくんのこと。
遂にレイくんの魂に体を会わせる準備ができたということ。
「本当に神宮さんにはお世話になりっぱなしで……」
「いえ、それは……」
気まずそうに視線を逸らす恭子さん。
彼女がここまで協力してくれるのは、ただの善意だけではない。
彼女曰く罪滅ぼし――まぁそれは別の機会に。
「では早速……」
病室内に入ると――。
「レイくん……」
「お兄ちゃん……」
以前来た時と変わらず、様々な生命維持装置に繋がれたまま寝ているレイくん。
また少し大きくなったかしら……。
体は細く、身長も同年齢の人たちと比べてかなり小さい。
それでも生きている。生きてくれていた。
「……」
誰も、何も発することができなかった。
ただただ、成り行きに任せる。
「……ぁ」
レイくんが小さく呟く。
「……」
ゆっくりと体に近づいていく。
「……」
「……」
触れた瞬間、レイくんの霊体が体に吸い込まれていった。
やがて――。
「……ぁ、かはっ……」
「……!」
うっすらと目を開け、声を出そうとするレイくん。
「玲! 玲っ!!!」
「あぁ……神様……」
「にぃにっ!」
一斉に声を上げる両親たち。
「……かはっ、ごほっ」
「無理をするなっ! しゃべらなくていい!」
久しぶりに声を出そうとするとうまく出せないものね。
「た――ごほっ」
「玲っ! だから――」
「お父さん、見守りましょう。玲、大丈夫。待ってるから、ゆっくりね」
その時のお母さんの表情は、きっと生涯忘れない。
母、とは。
そして――。
「た、だ、い、ま……ごほごほっ……!」
「玲っ! おかえり!」
「玲、おかえりなさい」
「にぃにっ! うわぁ~ん!」
「レイくん……よかった……」
▽▽▽
――翌日。
「で、どうしてレイくんはレイくんのままなの?」
哲学的な問いではない。
宙に浮かぶレイくん(霊体)を見ながら輝蘭羅さんが尋ねる。
「実は……」
あの後、なぜか体からまたレイくんが出て来た。
もちろん、現場はパニック。
恭子さんの見解では、魂が不完全だから肉体との間にズレが生じているのでは、とのこと。
ただ、魂と肉体との繋がりがはっきり見えているようなので心配はないのでは、とも。
その証拠に――。
「キララちゃん、改めてよろしくね!」
「うん……ん? 何だか言葉がたどたどしくなくなった……?」
魂が肉体と繋がったことで、肉体に蓄積されていた記憶が戻ったらしい。
もしかしたら肉体に合わせて精神的にもズレが修正されていくかも知れないと恭子さんは言っていた。
「そっかぁ~……何だか寂しい気もするねっ」
「……」
以前の彼を知らない輝蘭羅さんにしてみれば、そうかもしれない。
けど私にはわかる。
レイくんの本質は、いつだって変わっていない。
「関係ないわ。今までも、これからも……ずっと一緒にいるだけよ」
「うんっ!」
お読みくださりありがとうございます!
1週間も誰とも話さないと、声が出なくなりますよね!
ということで次章からレイくんの視点となります!
引き続きご覧いただければ幸いです。
もう1つ小説を投稿しています。異世界転生モノです。
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