第10話 少女と壁の中
「……」
「……」
<柿ピー大好き:……>
<きらリン推し:……>
「かべのなかからね、あけろーあけろーって」
「壁っ、嘘……だって、壁ェ……」
輝蘭羅さんが涙目でこちらを見てくる。
私にもどうしようもないわ。
<イマスグモドレーヌ:なに? どういう事!?>
「あ、ごめんなさい。レイくんが見えない方にも説明すると、壁の中に何かがいるって言ってるわ」
<怖い話スキー:壁の中?>
<霊感少女型おいたん:ふむ>
「私たちもちょっと混乱中よ」
<豚バラ炒飯:ミステリとかでは、壁の中というか実は二重の壁になっていて、その隙間に死体がなんてよくあることだけど……>
<きらリン推し:コンクリにそのまま埋め込んで、とかもあるね>
「いやっ! 言わないでっ!」
<きらリン推し:あ、察してたのかw>
<豚バラ炒飯:どうにかして外の壁を映せない?>
<怖い話スキー:なんか別の怖い話になってきたなw>
「外を映すって……ほうきとかにくっつけるとかでいけるかしら」
「ぼくがいってきてあげる!」
レイくんがそういうと、輝蘭羅さんのスマホが宙に浮きだした。
「ちょっとぉ……勝手に話を進めないでよぉ~……行くんなら、あまり他の物は映さないでね」
<闇より井出氏:身バレしたら洒落にならないくらい怖いからね……>
<(^q^)プッ:冷静じゃねぇか>
<8月32日:遂に幽霊が動画撮影者になるんか……時代は(ry>
「いってくるねーっ!」
「いってらっしゃい」
「……てらー」
と言っても、私からそんなに離れられないから、一緒に窓際まで行くんだけど。
「んーこれでいいのかな?」
<柿ピー大好き:もうちょい左!>
<きらリン推し:上下との比較もあるといいかも>
「わかったぁ!」
<怖い話スキー:あれ、幽霊と会話できてるってこと!?>
<イマスグモドレーヌ:レイきゅん! 好きな女の子のタイプは!? 年齢は!? お姉さんのとこに来ない!?>
<aaaa:必死過ぎワロタ>
「ん~、これでどう?」
<柿ピー大好き:いい感じ!>
「つばきちゃん、ぴーちゃんがこれでいいって!」
「ふふ、ありがとね」
<TOR:ぴーちゃんだってw>
<柿ピー大好き:……ふん>
<イマスグモドレーヌ:きーっうらやま! レイきゅん私のことは『おねえたん』って呼んで! もしくは『ママ』!>
私も自分のスマホで見ていたからわかる。
この『イマスグモドレーヌ』をイマスグコロセバイイってことが。
<豚バラ炒飯:明らかに上下と窓の位置が違うね>
<怖い話スキー:壁の位置も2メートルは離れてないか?>
<闇より井出氏:生身の人間の方が怖いってことだ>
動画を見た人たちが色々言っている。
普通に生活していると、案外気が付かないものね。
「……ごめん、みんな! これ以上はダメっ! もう終わりにしよっ!」
「あら、どうしたの?」
「さすがに理事長さんが許さないよ……壁の中に隙間があって死体が、だなんて……」
確かに。
<TOR:確かに>
<柿ピー大好き:確かに>
<豚バラ炒飯:ようやく気付いたか>
「とは言え、ね」
「ま、まぁ……」
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:もう手遅れだぴょん>
<(^q^)プッ:特定しますた>
「どどど、どうしよう……」
「ここまできたら、むしろ事実を白昼の元に晒しだしてしまった方がいい気がするわ」
そうすれば事件になって学校も休み、レイくんと……ふふ。
「そんなことっ! でもなぁ……う~ん……」
「問題は、どうやって壁を破壊するかなんだけど」
<仏教徒ゴリラ:oregaikouka?>
<きらリン推し:ゴリラはとりあえず日本語喋れ>
<豚バラ炒飯:さすがに建物破壊はよくないよ>
<怖い話スキー:いったんレイ氏に見てきてもらえば? 壁の1つや2つ通り抜けられるんじゃね?>
「それはいい考えね。レイくん、お願いできる?」
「ん~、なんかぴりぴりしててはいりづらい~……」
<イマスグモドレーヌ:おねえたんの中ならいつでも入れるわよ?>
<(^q^)プッ:通報しますた>
<ぴょんはピョンピョンだぴょん:レイぴょんがピリピリ? 結界でもあるのかぴょん>
「どうしようかしら」
「このまま続けてもいいの? いや、やっぱり……う~ん……」
<KYONKYON:いい方法があるわ>
どうすべきか悩んでいる私たちに手を差し出してくれたのは、そんなコメントだった。
<KYONKYON:今から教える方法を試してみて>
お読みくださりありがとうございます!
イマスグモドレーヌさんは0感でしたが、椿さんの煽りがあまりに悔しかったため、声だけ聞こえるようになりました。さすが椿さん。
もう1つ小説を投稿しています。異世界転生モノです。
そちらもよかったらぜひお願いします!