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第9話 少女と音楽室の霊

「音楽室は3階の端っこっ! 早速行きましょーっ!」

「おーっ!」


 玄関から進み、階段を登り始める。


「今日は階段を使うけど、この学校にはエレベータもあるんだってっ!」

「利用者への配慮が手厚いのね」


 そう、とある条件とは学校のPRをところどころでするということ。


「階段と言えば、怪談――怖い話が好きな人がこの動画を見ると思うんだけど」

「そうだね~」


 せっかくなので恭子さんに聞いた話を1つ。


「そういう話を見てると、肩が凝ったなぁーとか、寒くなってきたなぁーとか感じることない?」

「あるあるっ! でもそれって姿勢が悪かったり、ずっと動かないからでしょっ?」

「知り合いの霊能力者の人に聞いたんだけどね、怖い話とか幽霊の話をしてると本物が寄ってきちゃうらしいわよ」

「ま、またまたぁーっ! あははっ!」

「霊も本能的に仲間意識とか帰属意識が働くとか。よかったわね」

「よ、よくないと思うよ……?」

「1人で怖い話を見るのは怖いでしょ? そばには幽霊がいてくれる……ほら、あなたの後ろにも」

「あははっ! そんなわけ――」


 ガタンッ。


「「ぎゃぁぁぁぁーっ!?」」

「わぁーいっ! ぼくでしたーっ!」

「な、なんだぁ……今の音はレイくんの悪戯だったみたいっ! よかったぁーっ!」


 レ、レイくんたら……。

 かわいいから許すけど。


 <怖い話スキー:わろたw>

 <柿ピー大好き:実際に幽霊じゃん>


 でもおかしい。

 スカートの中が何だか生暖かいような……?





「うぅ……どうにか3階まで辿り着きました。噂の音楽室は……あちらのようです」


 そう言って反対側の突き当りを指さす輝蘭羅さん。

 さて、出番ね。


「この学校、積極的にICT教育を取り入れているそうよ」

「そうなんだ! すごいねっ!」

「ちょっと見てみましょう」


 教室のドアが独りでに開く。

 どうやらレイくんが念動力で開けてくれたみたい。


「え?」

「ほら、教室の前方には黒板じゃなくてスクリーンがあるでしょ? 先生や生徒のタブレットの画面を映し出したりして授業内容の伝達や情報交換をしやすくしたり――」

「え、今ドアが勝手に――」

「他にも個人の学習状況に応じてAIがサポートしてくれたり、VRゴーグルを活用した歴史、美術などの授業も――」

「ドアァ……ドアぁぁ……っ!」

「詳しくはHPで調べてみてちょうだい。ドアももちろん自動ドアよ」


 <豚バラ炒飯:いやどこの学校よ>


「うぅ……それは秘密ですぅ……」

「きらリンさん、次に行きましょう」

「うん……」


 教室を出て廊下に戻り、先に進む。

 不思議ね、いつもはそう思わないのに音楽室まで遠く感じる。


「ほんと、夜の学校ってだけで怖すぎだよぉ~……」

「ふふ。この学校には音楽室にしか幽霊はいないみたいだから大丈夫よ」


 そう思えばほら、何も怖くない。


 <きらリン推し:でもつーちゃんは0感なんでしょ?>


「ちゃんと勾玉付けてるから、いたら見えるわ」


 <イマスグモドレーヌ:その勾玉あったら幽霊見れるの!? どこで売ってる!?>

 <怖い話スキー:モドレーヌちゃん、怖い話好きなのに0感だもんね……>


「あら、それじゃあこのかわいいレイくんも見えていない? かわいそうに」

「えー!」


 <柿ピー大好き:自分も素じゃ見えないくせに煽るなw>

 <イマスグモドレーヌ:きーっ! その通りよ! お願いだから教えて!>


「それじゃあさ、もし提供できそうだったらチャンネルの方に乗せとくから――」


 <イマスグモドレーヌ:したわよチャンネル登録! 高評価も! だからお願い!>


「へへっ! モドレーヌさんありがと~!」

「わぁーいっ!」


 恭子さんの事務所に行けば普通に売ってるから大丈夫だと思うけど。

 後で聞かなくっちゃね。




「そんなこんな、ようやく音楽室に辿り着きましたっ!」

「本当に幽霊はいるかしら」

「まずはドア越しに耳を澄ませてみようか……」


 といっても、ピアノの音なのだからドアに耳をくっつけなくても聞こえるはず。

 ということはやっぱり柿崎さんとニアさんのでたらめだったってことね。


「……コヒュッ!?」


 <きらリン推し:出た、『コヒュッ』>

 <aaaa:ふむ、悪くない>


「……どうしたのかしら? 私には何も聞こえないわ」

「――ッ! ――――ッ!!」


 輝蘭羅さんが涙目でドアを指さす。

 耳を当ててみると――。


「……ケテ、……ス、ケテ……」

「……」


 急いでスカートを見る。

 大丈夫、透けてはいない。


 <豚バラ炒飯:何かあった?>

 <闇より井出氏:……闇の住人の息遣いが聞こえる……>


「……えと、ドアの向こうから『タスケテ』って声が……」

「……」


 <怖い話スキー:おぉ! 今回も幽霊が出るのか?>

 <霊感少女型おいたん:ささ、ドアを開いて、どうぞ>


「うっ……わかりました……開きます……」


 恐る恐るドアを開ける輝蘭羅さん。

 そこには――。


「……何もいないわね」


 ピアノを弾く音どころか幽霊もいない。

 ベートーヴェンやモーツァルトの肖像画もない。


「あれ、おかしいな……確かに聞こえたんだけど……」

「不本意ながら、私もよ」


 <ぴょんはピョンピョンだぴょん:あまり感じられないぴょんね>


「ん~、気のせい、だったのかなぁ~?」

「こっちだよ」


 しばらく教室の中を見回していると、レイくんがある方向を指し示す。


「レイくん? こっちって……壁しか見えないよ?」

「うん、そこだよ」


 レイくん……また悪戯かしら?


「そこって……」




「うん、かべのなか」

お読みくださりありがとうございます!


某動画投稿サイトのガイドライン的に幽霊を移すのは問題ないのでしょうか……気になりますね。




もう1つ小説を投稿しています。異世界転生モノです。

そちらもよかったらぜひお願いします!

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