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なろうラジオ大賞6応募作品集

俺の寝言が超高等魔法の詠唱だった件。

作者: 富井トミー

 その日の俺は散々だった。

 普段であれば、戦士として仲間たちの最前線で戦っている俺。

 しかし、今日だけは違った……。



 何気なく踏み込んだ迷宮。

 そこは、物理無効の魔物の巣窟だった。

 せめて、みんなの盾になる。そう意気込んで前に出ても、霊体の魔物は身体をすり抜けていくばかり。


「おい、お前は下がってろ! 魔法発動の邪魔にしかならないんだから」

「あっ、はい」


 俺は最後尾で小さくなるしかなかった。

 仲間のみんなが魔法を放つ中、俺は一人追随するだけ。

 その時、思った。家に帰ったら、魔法の練習をしよう、そうしよう、と……。



 我が家の本棚を漁る。

 魔法関連の本を探す中、見つかるのは筋トレ関連書籍ばかり。

 歩く筋肉と呼ばれる俺の家だ。当然、そんなもんだろう。


 やっとの事で見つけた本。タイトルは「ゴリラでも分かる魔法入門」。

 何を思ってこの本を買ったのかは置いておくが、なんて最適な本なんだろう。

 早速、その本を開いてみる。


「なになに、魔法の基本は詠唱です? いや、ゴリラに詠唱は出来ないだろ……」


 早速、期待を裏切られた気分だ。比喩的な表現だったとしても、だ。

 ただ、俺はゴリラに負けない筋肉を持つだけの人間。希望はある。

 ペラペラとページをめくり、詠唱文一覧へと目を向ける。


「ええと、『我が前に顕現せよ、ファイアーボール』」


 魔法は発動しなかった。

 もしや、属性に適正がないのかもしれない。

 そう思った俺は、その後もいくつもの魔法を試し……落ち込んだ。


「ゴリラに出来て、筋肉男には出来ないか。世知辛い世の中だ……」


 そして、俺は落胆しながらベッドへ潜り込んだのだった。



 ――その日の深夜。村は異常な冷気に襲われた。



 そして、朝。異常な寒さの中、俺は目覚めた。

 夏だというのに窓は凍り付き、室温は冬の雪山のようだ。

 この鍛え上げられた筋肉が無ければ、俺は部屋で凍死していただろう。


「異常気象か? それにしたって、限度があるだろうに……」


 そんな異常な現象は、毎日繰り返される事となる。

 ある時は、竜巻に遭ったかのように屋根が一夜で消えていた。

 またある時は、我が家の下に一夜で山が出来上がっていた。


 流石の俺も、命の危険を察していた。

 ベッドに潜り込まず、椅子で一夜を明かそうと考える。

 が、眠気には勝てず、意識が朦朧とする中で……俺は俺の寝言に恐怖した。


「『天を切り裂く雷よ、(中略)ゴッドライトニング』」


 ああ、俺の寝言は超高等魔法の詠唱だったようだ。

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