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第五話

 聖堂内の敷地は俺の想像よりずっと広かった。どうも、お祈りを捧げる場である他に、墓地としても機能しているためここまで広くなっているんだとか。実際歩いている間に幾つか墓が置かれている区画を見ることがあった。体感的には屋敷の庭園ぐらい。自由に動き回れると考えればそれ以上になるかも知れない。


 数分歩いてようやくだどり着く。あれだけ真っ白に見えた建物も、風化してヒビが入っている。随分と昔から信仰の場として親しまれているようだ。正面の扉が朽ち果てているのがその証拠と言っても良いだろう。俺の背より随分と大きい。兄さんと比べたらほぼ同じぐらいかやや大きいぐらい。美しく掘られていたであろう教会のシンボルマークとも見て取れる彫刻も、今はかろうじて原型をとどめているだけ。面に手のひらを密着させてみると、ミシッと崩れる音がした。俺はそのまま軽く押してみる。が、開く気配は微塵も感じない。次はもう少し力を入れてみる。数ミリ、ズレるだけで扉が開かないことには変わりない。触れていた表面の一部が剥がれた。


 ならば…。


「ふん……!」


 肩から腕にかけて体重が乗るように押した。力んで腕が震えてくるけれども、この扉の前では無力に等しいようだ。


「俺がやるよ」

 

 ここで兄さんが前に出た。俺は横にずれる。


「はぁぁ!」


 力が伝わった時、床と擦れるような嫌な音がした。扉が押されている。兄さんの右足が一歩進むとさらに音を上げる。ゆっくりと動き出す。ついに扉を開けてしまった。びくともしなかったのに一人でここまで…さすが兄さん。


「あの…どうか…なさいました?キキルト聖堂に何かご用でも…」

 

 扉の向こうには一人のシスターが立っていた。その後方には二十数名のシスターが列をなしている。教会音楽…つまり聖歌を練習してたのだろう。いつか見た昔の映画で歌を練習しているようなシーンがあったのを思い出す。

 

「急な訪問で申し訳ございません。クロズリー家のエクスと申しますが…」と名乗ると、

 

「クロズリー様でございますか?!」

 

 と、とても驚かれた。奥の方にいたシスターの方々にも聞こえたのか、「クロズリー様?!」「え、あの人が?!」と言った感じで慌てている。俺たち、何かしただろうか。脳内では困惑の二文字がぐるぐる回っている。

 

「あの、司祭様をお呼びしますので、ぜひ中へお入りください!」


「みんな、急いで、準備よ!!」

 

「「「「「はい!!」」」」」


 

 あの人の鶴の一声でシスターたちは一斉に動き出した。兄さんの腕を引っ張ってシスターについて行く。

 

 聖堂内は俺が想像していたものよりずっと広く、装飾が美しい。特に天井に貼られているステンドグラス。大小様々な色付きのガラスが真っ白な建物をを鮮やかに染めてくれている。つい見入ってしまう。


 だが、何より目を見張るものがあった。それは遠目から見ても、あれ、なんかデカくね?と思ってしまうぐらい、灰褐色をした何か。正面の、祭壇と呼ばれる場所の奥に鎮座している。まさかその正体が巨大な石像だとは思わなかっただろう。あの女神、エスピルを(かたど)った、祈る姿で。神様を模るのは分かる。前世でもあった。あの十字架に縛られている人が真っ先に頭に浮かぶけれども…。あ、違う。あれは神の子だったか。いいや、そんなことはどうでもいい。ただ、あまりにも規模がデカすぎる…。


 そんな石像を通り過ぎ、ついて行った先には、隅の方にある一つの扉の前。シスターが開けてくれたので中に入るとそこは小さな個室だった。申し訳程度にテーブルと椅子、クローゼットが置かれている。ベッドは置いていない。

 

「それでは、司祭様が来られるまでしばらくお待ちください」

 

 この言葉を残し、シスターらはその扉を閉めた。



作者の瑠璃です。

まずは読んでくださりありがとうございます。

この作品はタイトル通り、それぞれの視点で描かれる異世界物語です。魔族サイドのお話もあるのでもしよろしければその作品も読んでいただけると嬉しいです。また不定期投稿なので気長に待っていただければと思います。ブクマ、評価等していただけるとめっちゃ喜びます!!

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