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第四話

兄さんは執事に馬車を用意させ、街の中心地にある教会…『キキルト聖堂』へ一緒に出向いた。馬の手綱は執事が握ってくれている。着くまでの間、兄さんからあの本を借り、適当に読み漁って時間を潰していた。

 

 魔力回路が開くようになったからなのか、何書いてあるかさっぱりだった魔法についても少しだけわかるようになった。例えば使える魔法の種類。火、水、風、土…いわゆる四大魔法と呼ばれるやつだ。この四種類は元から備わっているらしい。だから誰でも使える。それでも扱う魔法に得意不得意はあるというのだ。例えば、エクス兄さんは火と土の魔法が。グレン兄さんは風魔法、ノエル姉さんは火と水魔法が得意らしい。もちろん、それは攻撃を目的とした運用を主としている。だから、水が欲しいとか、火を使って料理したいとか、日常生活を送るぐらいなら問題ないらしい。

 

 さて、そんな魔法なのだが、やはり自分に合う力を知りたい。そのためには教会に赴く必要があるというのだ。何のことだか分からなかったが、兄さんの話によると、俺をここに転生させたあの女神、エスピルを信仰する教会で司祭様と『儀式』することで女神と契約を結ぶらしい。その内容は、女神エスピルに忠誠を誓い、女神エスピルは俺たちの適した魔法を『神託』として授けるという、いかにも胡散臭そうな話なんだが、俺はあの女神を知っているし、兄さんも俺と同じぐらいの年齢でやっていて本当に授かったという。


 そしてもう一つ。この四大魔法の他に家系魔法、固有魔法と呼ばれるものがある。どちらも四大魔法とは違う特殊な魔法として載っていた。この二つの特徴は、次世代に継承されるか否かの違いがあるらしい。特に、家系魔法の記述を見ると、カナン王国の建国時代に遡るらしい。記された内容は以下であった。


 

 カナン王国が建国される前、ある一人の男が神と契約した。神は自らの信仰を守ることを条件に、その男に今の『魔法』と呼ばれる力を与えた。その力で大陸を治めると国を興し、自らを国王と名乗った。国王は家臣に末代まで仕えることを契約させると魔法の力を分け与えた。その魔法が家系魔法の誕生と考えられる。


 

 これは『魔法』の起源はいつなのかという謎に対しての有力視されている魔法誕生説というもので、真偽は定かではないらしい。兄さんにも聞いて見たのだが当時の文献も僅かしかないので謎が多いとの事だった。それでも、今も王家に仕える貴族や家臣は家系魔法の使い手もしくはその血筋であることが殆どらしく、この説の裏付けになっているため、こうして教科書に載せられているのだそう。因みに俺たちクロズリー家も遡れば家臣の血筋に当たる。

 

 それに対して固有魔法。先述のように、継承することのできない魔法のことなんだが、なんと四大魔法が使うことができないらしい。また、固有魔法の所有者も歴史上に確認されているだけで十数件しかないらしく、実は家系魔法よりも謎の多い力だそう。一部の学者からは『神の祝福』、ある学者は『(のろい)』とまで言われているんだとか。一例として、『万物を癒す祝福(ユーロジア)』と、名前の通りどんなものでも瞬時に回復させるチートみたいな魔法を使う人もいれば、『霧に染まる(エクリプス)』という、霧のように体を透過させることができるので、物理攻撃が実質効果がなくなるが、制御できずに本体ごと消滅してしまったような、自己の破滅を招く魔法まであった。

 

 そのほかにも、兄さんからこんなものも教えてもらった。

 

((あー、あー、聞こえる?))

((ん、ああ、聞こえるぞ。さっきよりも上手くなってるじゃないか))

((うん、少しずつコツ掴んできた))

((さすがアルだ。すごいぞ!))

((えへへ〜))

 

 そう、これは魔力を使ったコミュニケーション方法、魔導暗号である。脳内に思い浮かべた単語や文章を魔素を媒介として相手に送ることができる魔法の一つだ。正確には魔法ではなく、魔導…つまり、魔力を利用した技術の一つで部隊の連絡用として使われる。傍聴されるリスクのない便利な技術だ。


「…!…アル、見ろ」

俺の肩を軽く叩いては窓の外を見るように催促した。兄さんのそばに寄って窓から顔を出してみると、そこにあったのは、石造りの建造物。周囲に他の建物がないので一際目立っている。白く塗られた外壁は太陽の光を反射し、厳かでありながら神々しさをうっすら漂わせている。

 

「あれキキルト聖堂さ」

「す……すごい綺麗…」


 実際、ここまでしっかりとした建物は俺の住まう屋敷の周囲では見たことなかった。それに、こういった類は前世でも入ったことがないので、内心興奮している。


「エクス様、アルヴァ様、もう少しで到着致します。降車の準備を」

「分かった。ご苦労」

 

執事は手綱を持った状態のまま軽く会釈をした。

そこから数分もしないうちに馬車は聖堂前に停まった。執事には馬車の番をさせ、俺と兄さんは敷地内に足を踏み入れた。

 

作者の瑠璃です。

まずは読んでくださりありがとうございます。

この作品はタイトル通り、それぞれの視点で描かれる異世界物語です。魔族サイドのお話もあるのでもしよろしければその作品も読んでいただけると嬉しいです。また不定期投稿なので気長に待っていただければと思います。ブクマ、評価等していただけるとめっちゃ喜びます!!

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