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第十八話

 エリナ、アルヴァが戦闘を始めて少しした後、エクスは父に呼ばれ自室の前にいた。


「エクス・クロズリーです。失礼します」


 父上は腕を組みながら自室の席に座り、シャーロット公は窓から見える庭園を眺めていた。


「やっ、エクスくん。さっきぶりだね」


 と、軽く手を振ってくださった。

「急に呼び出してすまない。そこに座ってくれ」


 ソファを指したので一度頭を下げてから座る。父上の自室に滅多に入る事がなく、今はシャーロット公もいらっしゃる。どんな理由でエクスを呼んだのか、彼の心の中に不安が積み上がっていく。


「ちょっと確認したいんだけど、もしかして今、エリナとアルヴァ君って模擬戦してる?」

 

 窓の外を指差しながらシャーロット公は言う。


「そうですけど、それが何か……」


 質問を振られたので律儀に答える。すると父上は「模擬戦だと?」と、振り返って窓に向かった。エクスも覗きに窓の外を見ると絶賛手合わせをしてる状況だ。見たところアルは押されているみたい。


「おいおい……」

 

 ため息をつくと、「全く、誰の子に似たんだか」と父上はシャーロット公の肩を叩く。


「いやぁ、本当に誰に似たんだろうねぇ」


 シャーロット公も後頭部を掻きながら苦笑している。


「まさかだけど、エリナから誘ったわけじゃないよね?」

「ことの成り行きはアルが作りましたけど誘ったのはエリナ様です」


 先程のようにしっかりと答えると、その瞬間、二人は爆笑し出した。


「はははは、やっぱり血は争えないんだな、なあ、シルヴァ」

「まさかそこまで似るとはね。我ながら天晴れだよ」


 その後も二人の笑いは途絶えない。完全に二人の空間となったこの状況に耐えられず、「あの、なぜ笑っているのでしょうか」と質問してしまった。


「すまんすまん。実はな、訓練生だった時、それも初めて会った頃だ。いきなり勝負しないかってシルヴァが誘ってきたんだ」

「ほら、僕の家系って剣術に長けてるでしょ?勇者の孫がどんな実力なのか知りたかったんだよね。まあ、その後ボコボコにやられたんだけど」

「懐かしいな」

「そうだね。あの頃を思い出すよ」


 彼らの空間はより強固になってしまったのを感じる。エクスが呼ばれた意味はなんだったのか……。

 

「それで、要件はなんでしょうか」

「ああ、そうだった。そろそろ本題に入らないといけないな」


 一度咳払いをしたのち、さっきまで笑いの絶えなかったこの部屋は沈黙に包まれる。真剣な眼差しでこちらを見てきた。

 

「エクス、以前ルークに師事していたことがある、そのようなことを言ったな?」

「ええ、師事とまでは行きませんが、指導を受けたことは何度かあります」

「なるほどねぇ。あのルークが」


 シャーロット公も、食事会の時のようなほんわかしたものは消え去り、領主としての威厳を感じた。何かやらかしてしまったのかと、冷や汗が流れそうな気分だ。


「どうするか、シルヴァ。エクスだけでも話しておくべきか?」

「そうだね。その方がいいかも。少しでも真実を知っている人は増えたほうがいい」

「だな」


 と、何やら口裏合わせをしている様子。もしかしたらルーク団長に何かあったのだろうか。真実とは一体……。

 

「何か、ルーク師団長の身にありましたか?」

「本来は箝口令がされているから話すのはダメなんだが……」

「実はね、ルーク……ルーク第一師団長が亡くなったんだ」

「え?」


 ルーク師団長が亡くなった?


 歳にしては若すぎるはずだ。だって父上とほぼ同じぐらいだし、この前の指導だって衰えるどころか俺たちのように若い訓練兵以上に動けてしまうような人だったはずだ。急に亡くなるなんて、もしかして病気でも患っていたのだろうか……。

 

「亡くなった……?嘘ですよね?」

「今でも到底信じることができないが本当だ。死因は殉職……つまり戦死だ」

「多分、老衰ってことでルークの死は国民に伝えるはずだよ。本当の死因は一部しか知らない。極秘にするって判断が下されたんだ。国王から直々にね」


 エクスは状況が読めなかった。戦死……。他国と戦争なんてしてないはずだ。第一、この国のトップの実力者であるルーク師団長が負けるわけない。だけど……少なくとも父上やシャーロット公の仰ったことは本当のことだと、彼らの言葉と表情から読み取れる。


「ルークの死因を知っている者は先日集められた各領主と各師団の幹部、死に立ち会った兵士、そして国王とその側近のみだ」

「もしかして王都に呼ばれたのって……」

「ルークの死が原因さ」

「しかしどうしてルーク師団長が……」

「この前、会議の内容はお前たちに関係がないと言ったがここで話しておこう。今、この国で何が起きているのかを」



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