表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/28

第十一話

 陽の光が窓から入ってくる。朝になったんだ。目元を擦りながらベッドから起き上がり、軽く伸びをした。外から見える庭園の花々は窓越しに見ても美しさは変わらない。ようやくまともに動けると思うと気分が高揚してきた。


 実は聖堂から帰ってきて三日経っている。だけどここ二日はずっとベッドで寝ていた。理由は、風邪を引いたからだ。寒い中ずっといたのが決め手だった。当然っちゃ当然なので仕方ないことだけど、せっかく魔法が使えるってなったというのにできないまま時間が過ぎていく昨日、一昨日は実にもどかしかった。


「アルー、入っていい?」


 と、兄さんが扉をノックしながら言う。


「いいよー」

 

 軽く返事をした。部屋に入ってくると開口一番、「体調どうだい?」と聞いてくるので、だいぶ良くなったよ、返す。


「熱は……うん、なさそうだな」

「飯、食べられる?もしそうなら今持って来させるけど……」

「うん、食べたい!」

「わかった。ちょっと待ってな」

 

 と言って部屋を出ていく。俺はまた一人になった。


 窓を少し開けて外の風に触れる。生暖かい風と共に、庭園から流れてくる花々の香りがわずかに入ってくる。いつもの朝、って感じがした。


「失礼します。お食事をお持ちしました」


 と、メイドさんが入ってくる。トレーと共に一切れのパンとスープが運ばれると、すぐ横の小さな机に置いてくれた。


「それでは、失礼します」


 と言って出ていくと、入れ替わりで兄さんが入ってきた。


「ちゃんと、食べられるか?」

「流石に食べられるよ。もう体も動かせる様になったし」

「そうか。良かった。一昨日とか酷かったもんな。久しぶりじゃないか?ここまで倒れてたのは」

 

 兄に言われて気づいたけど、基本俺は熱を出すような風邪をひいてきてない。ここは前世と違ってどうしても衛生面がそこまでしっかりしていない。手洗いするなど予防はしてたつもりなので、うまく噛み合っていたんだろうな、とふと思った。

 

「うん、ずっと頭痛かった」

「やだよな、頭痛。幻覚とか見なかった?」

「幻覚?なんで?」


 そう問うと、兄さんは腕を組みながら話し続ける。


「俺が確か……アルと同じぐらい?いや、もっと小さい時だったかな。ちょっとよく覚えてないけど、儀式してもらったんだよね。その後から熱出しちゃって」

「俺と同じだ」

「まさにそうだね。頭痛が酷くてさ、多分そのせいかな?今でも信じてないけど、目の前に父上が三人ぐらい出てきて」

「え?三人?」


 一体なにを言い出したかと思えば、父上が三人?


「そう、三人。そしたら突然魔法使って戦い合い出したんだよ」

「え?なに言ってるの?」

「やっぱそんな反応だよね。アルもおかしいと思うか?」

「うん、おかしいよ」

「だよねぇ。でも見たんだよなぁ。まあ、そのぐらいの記憶しかないから、きっと夢の話なんだと思うけど、頭痛がひどいとたまに思い出すんだよね。でも夢にしちゃあ鮮明に覚えてるから幻覚ってことで片付けてる」

「ふ〜ん」

「アルは見てないんだ」

「見てないよ」

「なら、夢だったのかな……」

「多分そうじゃない?聞いた事ないもん」

「そうかぁ」

 

 多分、兄さんの言ってることは多分本当なんだろう。でも幻覚なんて前世でも経験したことないし、病気について詳しく知らない。だからそう答えるほか無かった。自分も頭痛や咳に苦しんでたけれど兄さんはもっと酷かったんだな、と思った。


「あ、そうだ兄さん」

「なに?」


 今の俺は昨日や一昨日に比べるとすこぶる調子が良い。外も晴れてるんだし、その間にできなかったことをしてみたくなった。

 

「もう動けるからさ、後で教えてよ!魔法!」

「いいよ〜って言いたいんだけど、まだダメ」

「えええ!?なんでさ??」

「だって、病み上がりでいきなり動いたら疲れちゃうでしょ?万全じゃない体で魔法使っても良くないから、今日まではゆっくりしてなさい」

「ええ……」


 意外だった。メイドや執事に止められるならまだ分かるけど、あの兄さんがダメって言うなんて……。


「返事は?」

「……はい」

「よろしい。さ、冷めないうちに食べちゃいな」

「うん」

 熱いスープをパンに染み込ませて食べる。胃に優しい味だ。麦の香ばしい匂いと合わさって深みが増した。質素なものだけれど、調理次第でここまで化けるのか、料理人の腕はやはり素晴らしいな、と改めてそう思った。

 

「美味いか?」

「うん、美味しい」

「そうか。それは良かった。ん?あれは……」

「どうしたの、兄さん。窓の方とか見て」

「あの馬車……」

 俺も外を見る。庭園の奥からちょっとだけ見える道には兄さんの言うように馬車がいる。木の影に隠れているため、どこの馬車なのか分からない。でもこんな時に来るのはあそこしかない。


「父上だ。父上が帰ってきたんだ!」

作者の瑠璃です。

まずは読んでくださりありがとうございます。

この作品はタイトル通り、それぞれの視点で描かれる異世界物語です。魔族サイドのお話もあるのでもしよろしければその作品も読んでいただけると嬉しいです。また不定期投稿なので気長に待っていただければと思います。ブクマ、評価等していただけるとめっちゃ喜びます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ