1544年(天文13年)4月18日、関東管領、山内上杉家、筆頭宿老、長尾憲長の策略が波乱を呼ぶ?
長尾憲長は越後国から国主の弟を引っ張り出して来ました。
しかも援軍8000を率いてやって来ました。
なんと凄い手腕でしょうか?
次に何を考えてるのでしょうか?
1544年(天文13年)4月18日
上尾城の北3キロの越後勢陣中にて、関東管領、山内上杉憲政は越後国守護、上杉房朝の弟、上杉英房と対面しました。
二人は同い年の21歳です。
形式的な挨拶を済ませると上尾城に向かいました。
上尾城の扇谷上杉家、上田朝直は直前に
越後国守護、上杉房朝の弟の上杉英房の御座所として上尾城に場所を提供する事を通告されました。
通告したのは関東管領、山内上杉家、上杉憲政の名前を使い、宿老の長尾憲長の策略でした。
直前に通告して3キロ北から越後勢8000を引き連れて上尾城に迫ります。
上尾城の上田朝直も直前の通告に混乱していました。川越城の当主、上杉朝定に問い合わす暇もありません。
川越の上杉朝定からは立花家と古河公方家の間で中立する指示が出ています。
しかし、今、越後から到着した上杉英房を拒否したら古河公方軍の攻撃を受けます。
上杉英房を城内に受け入れたら古河公方軍に参加して、立花家との和議を破る事になります。
上田朝直は城門を閉ざすか?開くか?
短時間に決断を迫られました。
上尾城の本丸から眺めると、北から越後勢8000の軍列が軍旗を掲げて向かって来ます。
我が扇谷上杉家が古河公方軍に参加したら?
越後勢が加わり勝てる可能性が高いかも?
もう、頭が混乱、思考の限界でした。
流れに逆らわず、越後の上杉英房を受け入れる事に決めました。
城門を解放する命令が伝わり、上尾城は城門に兵士が整列、越後勢を歓迎する姿を見せました。
上田朝直はこの状況を川越城の上杉朝定と岩槻陣地の立花将広宛てに急使を送りました。
上尾城に到着した越後勢は上尾城を囲む様に陣地を築き始めました。
上尾城本丸には屈強な護衛に守られた上杉英房と
本庄実政、大熊政秀、上野勝家、柿崎信秀の越後勢の武将達、山内上杉憲政、長尾憲長と錚々たる人物が揃いました。
上尾城本丸の広間の上座に上杉英房
、上杉憲政、左右に越後勢の武将が並び、上座の脇に長尾憲長が扇谷上杉家、上尾城の上田朝直ら扇谷上杉家の武将と対面しました。
─長尾憲長、上田朝直─
上田殿、越後守護職、上杉房朝様の弟君、上杉英房様である!
本日より、御座所に提供して頂き、感謝の意を申されておりまする。
ははぁー。
有り難き幸せにございます。
上田殿!
本丸は英房様の御座所に使わせてて頂く、貴殿の弟、上田義直殿を英房様の世話役を頼むぞ!
はい、承知致しました。
それから、貴殿の軍勢は越後勢の指揮下に入るから承知願いたい。
古河公方、足利晴氏様、越後守護職、上杉房朝様のご意向である!
越後勢の主将、本庄実政の指揮下に
入る事になった!
この戦いは古河公方家、関東管領家、越後守護上杉家の主導する御公儀の戦である!
異存有るまいな?!
ははぁー。
─完全に長尾憲長の策略の流れに巻き込まれ、抵抗不能の状態に置かれました。上杉英房の世話役に指名された弟の義直は完全に人質です。
上田朝直が不審な行動をすれば、弟は殺されてしまうでしょう。
─岩槻陣地、立花義國、立花将広
上尾城の上田朝直から急使が緊急事態を知らせました。
義國!やられたぞ!
長尾憲長が上尾城を取り込んだぞ!
越後守護の弟を利用して御座所にしやがった!
これで上田朝直は動けねぇぞ!
監視されてしまうだろう?
上田朝直からの情報提供は難しくなったぞ!
はい、最後の情報かもしれません。
─川越城、上杉朝定、長尾信忠
上尾の上田朝直からの急使から上田城が越後の上杉英房の御座所になったと報告が届きました。
殿!上尾城が乗っ取られました!
長尾憲長の策謀です!
上尾の上田朝直の軍勢は従わざるを得ません!
信忠?
上田朝直と2000の軍勢が人質みたいだな?
逆らえないじゃないか!?
はい!長尾憲長の思い通りに動くしかありません。
逆らえば、殿が強制的に隠居させられるかもしれません。
古河公方軍に加わるしかないか?
勝てるだろうな?
はい、古河公方軍の兵力が立花家に勝ります!
下総の小弓公方を滅ぼして、こちらに戻るでしょう。
ならば勝つ可能性が高いのだな?
勝ち馬に乗るぞ!
荒川を渡り、大宮城に向かうぞ!
お待ち下さい!
すでに荒川の渡河地点の指扇周辺に立花軍が布陣しています。
川越城の北から入間川を渡り、荒川を渡り、殿山城に入ります。
殿山城の東南へ1里(4キロ)に上尾城があります。
これなら単独で立花軍と戦う事を回避出来ます!
わかった!それで良し!
煩わしい指図が来る前に出るぞ!
はい、グズグズしてると長尾憲長からどんな面倒な指示が来るかわかりません。
直ぐに出立します!
おい、信忠!
岩槻陣地の立花将広に知らせろ!
万が一、古河公方軍が負けた時の担保、貸しになるだろ?
はい!手配致します!
─川越城から扇谷上杉軍5000が出立、北から入間川を渡り、荒川を渡り、殿山城に入りました。
─岩槻陣地、立花義國、立花将広
川越城の長尾信忠から知らせが入りました。上尾城の情報と川越城から扇谷上杉軍の行軍予定です。
青梅の銘酒、澤乃井の雫、大吟醸をぐびぐび飲み立花将広
叔父上、上尾城と川越からの情報が一致しています。
青梅の銘酒は旨い!
閃いたぞ!
青梅の三田勢を狭山、入間方面に進出させる!
扇谷上杉家との国境の所沢、新座周辺の城から国境に軍勢を進出させるぞ!
鎌ヶ谷方面の兄上(立花義秀)に事後報告になるが、箱根ケ崎城、宮寺城、山口城、八国山城、清瀬城、平林寺城から川越方面に軍勢数百ずつ国境に軍勢を出させる!
牽制に使うだけで扇谷上杉軍が川越城に撤収する理由が出来るだろう?
川越城から知らせてくれた見返りに川越城に戻る状況を作り出してやるのだ!
更に!日本酒を呑んでたら気がついたぞ!米だ!
もうすぐ5月の田植えが始まる!
越後勢の多くが農民のはずだ!
越後勢が滞在出来るのは精々半月!
5月には帰国せねばならん!
これを踏まえて戦うぞ!
はい!叔父上、泥酔軍師の策に期待しております!
(笑)
策士、長尾憲長の策謀に扇谷上杉家の想い、立花義國、立花将広の想いが錯綜します。
各々の立場で策を練り上げます。
戦いはどんな展開になるかわからなくなりました。




