1544年(天文13年)4月16日、古河公方、足利晴氏は小弓城にて思案中、小弓公方領の後始末、鎌ヶ谷方面への移動、敏腕宿老、簗田高助が重傷でどーすれば良いのか?
古河公方、足利晴氏は小弓公方家との和議交渉は一方的に有利な交渉になりました。
大敗した小弓公方家から制圧していない地域まで譲歩させる事に成功、小弓公方領地の6割を獲得しました。
領地受け取りに関わる手配をしなければなりません。面倒な裏方仕事の手配は簗田高助の得意でありましたが、現在の高助は胸に矢を受けて重傷の身となり、敏腕を奮う事が出来ません。
晴氏が裏方仕事に気を配らなければならず、簗田高助の回復を願うばかりでした。
1544年(天文13年)4月16日~
─小弓城、古河公方、足利晴氏、簗田高助─
負傷して床に付いてる簗田高助を見舞う晴氏
高助?傷の具合はどうだ?
はい、公方様、傷口が塞がり、間も無く馬にも乗れそうです。
そろそろ鎌ヶ谷方面の高城勢の支援に参らねばなりません。
高助、まぁそんなに焦るな、我が軍勢も2日に渡る激戦で疲労困憊の状態だ。まだ休息2日目に過ぎぬからな、あと少し疲労から回復したら鎌ヶ谷方面に移動する。
公方様、鎌ヶ谷方面の支援なら気力、体力が回復した部隊を先行して出発なされませ!
大軍の移動は時間がかかります。
分散して出発すれば結果的に目的地に早く集結出来ます。
さらに高城勢の士気が上がり、少しでも有利な状況を作れます!
わかった!高助、回復した部隊を先発させる!
古河公方の大軍2万が鎌ヶ谷方面に向かう!
こんな噂を流しながら先発部隊が鎌ヶ谷方面に向かうのはどうだ?
はい、公方様それで宜しいかと思います!
さらに新規の領地から従軍兵力を募集しながら西へ向かう部隊が必要です。
小弓城から海岸沿いに兵力1000程の部隊を習志野、船橋方面にゆっくり募兵しながら向かわせます。小弓公方領の領地から兵力を吸い上げ、予備兵力として使えます。
そうか、見せかけでも兵力増やして利用するんだな?誰が適任なんだ?
はい、小田政治殿が適任です。
温厚で人当たりが良いので最適だと思います。
そうか、わかった!小田政治にやらせる!
公方様!やらせる!じゃなくて、頼んで下さい!
お前にしか出来ないから頼む!
この言葉が人の心を動かします!
この様な役目は地味で嫌われる仕事です。
相手の気持ちを考えて頼んで下さい。
頼む!の気持ち次第で集まる兵力が替わります!
高助、わかった!
小田政治に頼んでみる!
頼めば良いのだな?
はい、公方様、宜しくお願い致します!
──幼少期からチヤホヤされ、上から目線が当たり前の晴氏は家臣に対する心使いが苦手です。
簗田高助は晴氏が家臣達に無用な不満を持たせない為にも再教育が必要と判断しています。
──晴氏は簗田高助に言われた通り、小田政治に兵力を募集しながら習志野、船橋方面に向かう事を頼みました。
小田政治からすると普段は高慢な晴氏が珍しく優しく丁寧な態度でした。お前にしか頼め無い!等と依頼されたので快諾しました。
──足利晴氏は小弓公方軍を破りましたが、簗田高助が病床にある為、普段なら丸投げして任せていた案件が悉く(ことごとく)決済を迫られ、クタクタでした。
古河公方家の重臣、千葉家の当主千葉昌胤が戦死した事で嫡男、利胤の相続に立ち会い、仮通夜、葬儀にも出席、合間に膨大な雑務の決裁に奮闘しました。
──南市原城、小弓公方家──
小弓公方家は当主、足利義明、嫡男、足利義純を失い、本拠地の小弓城及び領地の6割を失いました。
残った領地は推定7万石、小弓城を失い、小弓公方家と名乗るのも恥ずかしい状況です。
小弓公方家を名乗る?名乗らない?
家臣達に不毛な議論が発生しました。
里見家の支え無しには崩壊確実が状況です。
里見家にとっても小弓公方家の存亡は重大です。
古河公方家の配下、千葉家との領地境に小弓公方家が有る事で緩衝地帯が里見領を守っていました。
──里見義堯、楢島正臣─
酒を酌み交わしながら会談中です。
義堯様、このままではどうにも小弓公方家は士気が下がり、支援する里見家の将兵も疲労困憊、打開策を講じる必要が有ります!
楢島殿?何か良い策が有ると?
はい、小弓公方家の名前は地に落ちました!
昇る運気の名前にするべきかと考えます。
新たに上総公方家にしては如何かと思います。
南市原城の名称も上総城に改称しては如何かと思いますが如何でしょうか?
おぉー!
それは素晴らしい!
上総公方家か?!
さらに南市原城の名称を上総城に改称すれば、自然に上総公方家の上総城!
全て運気が上昇しそうだな?!
はい、それで宜しいかと思います。
全て里見義堯様のご発案にして下さい!
それで全て丸く収まります。
それで良いのか?発案した貴殿に申し訳無いが?
義堯様、ここは里見家の美談にすれば全て丸く収まりますから、お気がね無く根回しをお願い致します!
さらには上総城を改修、拡張して威風堂々の城にする必要があります。里見家が提案して始めて頂けたら立花家からも支援の為に資金提供する事になるでしょう。
それから、兵力不足は否めません。
義堯様さえ良ければ立花軍の常駐を申請しては如何でしょうか?
上総城付近に常駐する城を設置すれば古河公方軍、千葉家の軍事力にも牽制力を発揮します。
なんと?楢島殿?
素晴らしい提案だ!
これなら反転攻勢が可能になりそうだ!
はい、全て里見義堯様の発案にて進行して頂きたく、お願い申し上げます!
わかった!楢島殿!この恩は生涯忘れぬ!
里見義堯は楢島正臣の手を握り、目から涙が溢れました。
そして里見義堯が中心となり、足利家の新体制が決まりました。
上総公方家、当主、足利頼純
筆頭宿老、一色正義
宿老、細川忠勝、安西直政
本拠地、上総城(南市原城)
小弓公方家を正式に名乗るのか?
元々が初代足利義明が自称していた称号です。
小弓城も失い、さらに名乗る根拠が無くなりました。里見義堯の発案で上総国から上総公方家を名乗る事にしました。
次に南市原城の名称を上総城に改称、イメージアップを計りました。
さらに上総城の拡張、改修を決め、里見家が支援します。さらに立花家にも資金援助を申請、さらには、立花軍の上総国常駐も打診する事に決まりました。上総城周辺に立花軍の常駐する城を普請します。上総公方家、里見家の家臣達の顔に希望の笑顔が戻りました。
立花家の財力、軍事力を利用して逆襲する準備に入ります。上総の国から密かに逆襲の準備がはじまります。
古河公方、足利晴氏が普段以上に働きました。
その背後で上総の国から逆襲の準備に入る里見義堯、楢島正臣達の想いが、きっと希望の道に繋がる気がします。




