古河公方軍、足利晴氏が我が儘な行動で戦場を2度、波乱に導きました。古河公方軍の本陣が炎上した事が大きな変化に繋がりました。戦場の将兵達の生死に関わる流れが変わります。
古河公方、足利晴氏の我が儘な一言が朝一番に作戦を潰してしまいました。
次に怖くて本陣から抜け出した事で波乱の導火線に火をつけてしまいました。
古河公方なんて務まる器では無いかも?
小弓公方、足利義明の方が頂点に立つ人物として能力が上かも知れません。
勝つのはどちらか?
互いに正義を主張した戦いの結果は?
1544年(天文13年)4月14日~
──古河公方、足利晴氏は自分の失態が原因で本隊が手薄になりました。
本陣に1000しか残らず、不安の余り千葉昌胤に護衛の軍勢を要求しました。
千葉昌胤は鎌取城を攻撃する部隊から引き抜き、嫡男、千葉利胤に2000の軍勢を与えて本陣に送りました。
不安の余り、千葉勢の到着を待たずに本陣から出発、足利義明を攻撃してる軍勢の後を追いかけました。小山、佐野、小田、那須の率いる4000と合流、足利義明のすぐ近くに接近しています。
千葉利胤が到着した古河公方の本陣は炎上、足利晴の姿は無く、正木時茂の軍勢2700と遭遇戦になりました。
古河公方の本陣が燃えてる姿は周囲6キロ四方のこの戦場の全てから見えました。
そして鎌取城から炎上する炎と煙も戦場の全ての将兵から見えました。
小弓公方、足利義明は嫡男、足利義純が亡くなったと思い込みました。将兵達も同じく亡くなったと思い込み、涙が溢れました。
──千葉昌胤、原胤清
小弓公方、足利義明の本陣から4キロ地点
胤清?
足利義明の本陣の周囲を見ると戦いが続いてるだろう?
公方様の本陣が燃えたのに動じて無いな?
公方様が無事なのは間違い無いだろう。
はい、恐らく無事でしょう。
無事で無いなら又別の対処がありますが……
胤清?公方様が無事で無かったら何とする?
隣の里見勢を腹背で一撃粉砕します。その先の足利義明の軍勢の腹背を一撃して首を取ります。
取れなくても勝てば良いのです。
和議に持ち込み、休戦してる間に周囲の状況次第で古河公方の後継者争いに乗じて勢力を拡大します。我ら千葉家は古河公方家の中では最大の兵力を持っております。
不利になった時には立花家と手を組めば良いのです。小弓公方家も里見家も我らに手出し出来なくなります。
ほぉ、ならば公方様が無事ならどんな対処になるんだ?
はい、平山城に向かった一色正義、真里谷信応の軍勢を攻撃します。
恐らく小弓公方の嫡男、足利義純が匿われてるでしょう。
そうだな、恐らく殿の一色勢では無く、義純は真里谷勢の中に居るはずだ!
はい、殿の見込みで間違い無いでしょう。
胤清、平山城の抑えに当たっている香取正則の軍勢1500に真里谷勢を迎撃させる!
鎌取城方面からの道筋を塞ぐのだ!
至急、使番を走らせろ!
一色勢と真里谷勢は胤清!
お前に任せる!
重傷の足利義純を連れて居るなら早く動けぬはずだ!必ず追い付く!
4000を率いて追撃してくれ!
はい、香取勢に使番を走らせます!
では、殿!追撃して参ります!
原胤清が追撃を開始しました。
間も無く一色勢に追い付きました。
一色勢は抜かりなく後方を気にしながら平山城に向かっていました。
一色勢1200は200名づつ交代で最後尾を勤めました。
どんなに犠牲がでても、先に平山城に向かった真里谷勢を平山城に無事に入城させるのが任務です。
弓矢を中心に近づく敵を倒します。
しかし、矢が尽き果て、接近戦になると追撃する原勢が圧倒的に有利になりました。
原勢は行く筋かの道に別れ、真里谷勢を探しながら追撃しました。
真里谷勢は重傷の足利義純を連れています。慎重にゆっくり運ぶ為に屈強な兵士達が交代で背中に担いで運びます。戸板や畳で運ぶのは揺れ過ぎて危険な上、4人で担いでも短い距離しか運べません。
義純は揺らされて消耗しています。
時折休憩する必要があります。
当然かなり緩やかな行軍になります。
平山城へ繋がる道筋は限られて、さらに行軍が遅くなり、不安が募ります。平山城の備えに配置された香取勢も真里谷勢の進路を探しました。
──足利義純、真里谷信応──
義純の容態が急変しました。
意識が朦朧としています。
毒がまだ体内に残り、戦場を無理に移動しました。担がれた影響で胸の傷口から出血もありました。
御曹司!お気を確かに!
御曹司ぃー!
信応、皆に感謝してる…田植え、収穫、農民達と楽しく過ごせたよなぁ…
来月は田植えの季節だなぁ…
有吉、鎌取、平山の民と田植えの約束してたからなぁ…
元気になれば、田植えに行くぞ……
御曹司ぃー!
行きます!一緒に行きます!
皆が楽しみに待っています!
夏祭りも盆踊りも約束してます!
元気になって行きましょう!
そうだな……約束したら守らなきゃダメだよな?…
信応、父上に伝えてくれ、囮の役目
、果たせましたか?……
役にたちましたか?……
御曹司ぃー!
囮の役目。十分に果たしました!
果たしましたから!
元気になりましょう!
──周囲の全員が覚悟の時を悟りました。皆、声を抑えて涙が溢れています。
信応、ありがとう…
皆さん、ありがとう…
─小弓公方家の希望の光、足利義純が息を引き取りました。
優しくて、農民達に絶大な人気がありました。あの笑顔に逢えなくなりました。しかし、悲しみの中、危険が迫ります。
素早く行動しなければなりません。
亡骸は近くの青蓮寺に託すことにしました。屈強な兵士5名と近習3名に送らせます。
一同手を合わせ、心の中で感謝の気持ちを念じました。
二度と逢えないと想うと涙がとまりません。見えなくなるまで悲しい見送りとなりました。
青蓮寺の住職と義純は寺領の田植えの手伝いや収穫の手伝いを通じて親交がありました。
突然の悲しい再会に住職も堪えきれず、泣き崩れました。
──なんで、こんなに優しい御曹司が?天に召されるなんて、あまりにも早すぎる!
住職の気持ちも乱れました。
生前の様子を涙を流しながら聞き入る住職は受け入れを快諾、住職の好意で急ぎ密葬する事になりました。
義純を見送った直後、真里谷信応は、平山城に向かわず、追撃してくる千葉勢を欺き、反撃を考えていました。
鎌取城から平山城に向けて北東に進んでいますが、南に転回して千葉勢の本隊に素早く攻撃する事を考えました。平山城に向かってる2000名の半分1000を予定通り平山城へ、残りの1000を自分が率いて千葉昌胤の本陣を襲撃します。
その場に居た仲間と相談した結果、
信応の提案に賛成多数で実行が決まりました。平山城に向かう1000の軍勢は間も無く千葉勢の追撃部隊と遭遇します。必死の戦いが予想されます。彼らが囮の役目を果たします。
別動隊、真里谷信応が率いる軍勢1000も千葉昌胤の本隊に決死の戦いを挑みます。玉砕する可能性がありますが、御曹司、足利義純の命を奪う毒矢を使った敵と刺し違えて全滅も辞さない気持ちです。
真里谷信応達が南に転進して間も無く、千葉勢と平山城に向かう味方の軍勢が衝突しました。
小弓公方家の希望、足利義純が多数の将兵に見送られ、天に召されました。
真里谷信応は劣勢ながら諦めていません。
戦いは鎌取城から平山城周辺が古河公方軍が優勢ですが、小弓城周辺の戦いは優劣つけがたい状況です。
戦いはまだ続きます。




