1544年4月14日~下総、古河公方軍と小弓公方軍の決戦2日目、小弓公方軍の希望の星、義純が重傷!?古河公方軍の優位は動かず??
前日の戦いで大活躍した小弓公方の嫡男、足利義純が重傷、指揮出来る状況にありません。
鎌取城で動かせない状態です。
誰が代わりに指揮するのか?
義純は鎌取城、平山城の兵士、農民兵士達から絶大な信頼があり、指揮下に5000余りの将兵が
従います。代役の武将は責任重大です。
1544年(天文13年)4月14日~
──古河公方軍と小弓公方軍の戦いは初日に引き分け、2日目を迎えます。
小弓公方軍が古河公方軍の攻勢を撃退、やや優勢に終わりました。
──前日、小弓公方、足利義明達が軍議中に重傷の義純から書状が届きました。
①一色正義、真里谷信応に指揮を託したいとの指名でした。
②敵方は鎌取城に重傷の自分が存在する事を把握しています。鎌取城が集中攻撃を受けますから囮に利用して、古河公方軍を破る策を立てて欲しいとの内容でした。
足利義明は嫡男からの提案を受け入れました。
①鎌取城に主将、一色正義、副将、真里谷信応を派遣
②有吉城から600、里見勢から1500を抜き、里見家の宿老、正木時茂に与えます。
③正木時茂を小弓城に移動させて小弓城の兵士を加えて2700の攻撃部隊を編成しました。
前日、古河公方軍は小弓城前に抑えの1000を配置したのみでした。
2日目も同じ配置になるでしょう。
正木時茂に預けた軍勢が抑えの軍勢を突破すると足利晴氏の本陣に迫る戦いが可能になります。
──前日の古河公方本陣、千葉昌胤から足利晴氏宛てに吉報が届きました。
足利義純に重傷を負わせ、鎌取城にて治療中との情報です。
その後、間者からの情報で毒矢に侵され、指揮が取れない程の状態だと判明しました。
──古河公方軍本陣
──足利晴氏、千葉昌胤、
昌胤?至近距離で足利義純の胸に毒矢を当てたのだな?
はい、公方様、毒矢にやられて重傷で指揮が取れぬ様子です。代わりに宿老二人、主将に一色正義と副将、真里谷信応が指揮を取ります。
昌胤、自ら家臣の軍勢を救出した上、足利義純に重傷を負わせた功績は忘れぬぞ!
明日は鎌取城を集中して攻撃だ!
千葉勢は鎌取城を攻略して足利義純を捕えよ!
──二人の会談の後、軍議が開かれ、古河公方、足利晴氏の決断で鎌取城攻略に千葉勢が当たります。大掾勢が鎌取城の西に布陣する里見勢を攻撃します。古河公方の本隊は足利義明勢、楢島勢を攻撃する事に決まりました。
─4月14日、決戦2日目早朝─
──古河公方本陣、足利晴氏、簗田高助
高助!
本日は千葉勢と大掾勢に奮闘して貰うぞ!
我らは前に出ず、ここから動かずに戦場を支配するぞ!
えっ?なんと?
あほぉー!高助!
さぼる訳じゃないぞ!
鎌取城の足利義純が心配で足利義明が軍勢を鎌取城方面に動かせば、手薄になるだろう?
足利義明か、楢島勢から兵力を割いて援軍を出したら攻め時だ!
一気に攻撃して足利義明の首を頂くそ!
公方様!?
見事な策です!
高助!我が本隊の兵士達も疲れが残ってるだろ?
少しだけ、楽しても良かろう?
最後に足利義明の首を取る為だからな!
はい、なれど、足利義明と楢島勢がこちらに攻めて来る可能性も有ります!
守備的な備えが必要です!
良し!高助!
備えを任せる!
全ては足利義明の首ひとつの為だ!
──簗田高助が万が一の守備の備えに部隊に指示を出し、防備を整えました。
─小弓公方、足利義明、真里谷信之
千葉昌胤の奴め!義純に毒矢など使いやがって!汚い手を使う卑劣な輩だな?
公方様!
それです!
千葉勢が使った毒矢が古河公方の命令だった!卑怯な公方だと宣伝するのです!
我が軍の兵士達には御曹司が毒矢にやられた事を伏せておりましたが、古河公方が仕出かした事にすれば怒りは数倍になります!
おぉ!そうだな?
信之!全軍に知らせようぞ!
使番を各部隊に派遣して知らせてくれ!
そうだ!信之!
大声自慢の者を10名程集めろ!
馬で戦場を駆け回り、古河公方の毒矢使用を罵倒しまくるんだ!
罵倒部隊だ!
女癖が悪いとか?ケチだとか?即興の作り話で構わぬ!
好き放題罵倒しろ!
古河公方本陣に聞こえる様に罵倒すれば、怒りに任せて我が本陣に攻めて来る様に仕掛けるのだ!
小弓城に隠した正木時茂の軍勢に足利晴氏の本陣を狙わせる!
これで義純から願い出た囮の策を生かす事が出来るだろう?
はい!公方様!
すぐに手配致します!
──鎌取城、足利義純、一色正義、
真里谷信応─
義純は胸に受けた矢傷は止血に成功しましたが、毒が仕込まれていました。意識不明に陥りましたが、立花家の医師が解毒に成功、会話が出来る程度に回復しました。
まだ、体内に毒が残り、全て排出するまで数日の安静が必要です。
二人は床に伏している義純の前に呼ばれました。
正義、信応、数日の間、床上げは無理みたいだ、我が兵士達を頼む。
はい!お任せください!
それだけ答えると医師に促され、部屋から出る二人に不安が掠めました。
あの逞しい義純が弱々しく、命の危険から抜け出した様には見えませんでした。
医師の立ち会いで、一言言葉を交わしただけで退出を促されたのが気になりました。
正義殿?
御曹司は大丈夫かな?
毒矢にやられると、生き延びても、食べても吐き出してしまい、衰弱して無くなると聞いた事があるんだが?
信応!
俺もそれが心配なのだ!
そうで無い事を願って戦うしかないだろう!
その時、医師から二人に義純からの指示書が渡されました。
鎌取城の西、後方へ里見勢、鎌取城の東、後方に一色勢を配置して敵勢に鎌取城を攻めさせる。
鎌取城の守備部隊500が奮闘して千葉勢の主力を集めるから、その隙に平山城の兵士達と協力して千葉昌胤の首を狙えとの内容です。
二人は顔を見合わせす。
考えは同じく、引き継いだ軍勢を鎌取城の正面に布陣して千葉勢を迎え討つ事でした。
信応、御曹司の気持ちだけ頂いて置くぞ!病床の御曹司を危険に晒すなんて出来ぬぞ!
前に出て戦うぞ!
里見義堯殿にもこの事を伝えるぞ!
御曹司の気持ちを伝えたい!
想いを分かち合いたいのだ!
はい!正義殿!
お任せください!私から里見殿に直接伝えて参ります!
御曹司の想いを伝えて参ります!
─隣の里見義堯の陣地まで1キロ余り、馬に乗り真里谷信応が足利義純の気持ちを伝えました。
─里見義堯、真里谷信応
信応!
御曹司の想い、我が身に染み込んだぞ!我らも前に出て戦うぞ!
─信応は里見家に所属しながら、小弓公方家、足利義明にも臣従する家臣です。
小弓公方家と里見家の両方に所属する家臣団に支えられて小弓公方家が存在しています。
本来、信応は前当主に仕える立場にあり、反乱を起こして相続した里見義堯に反対する家臣達の中心的存在でした。家中の内紛を煽っている存在です。
互いに意識していましたが、久々の対面に過去の事を引き摺る事無しに会話を交わしました。
過去に触れ無いまま対面が終わり、信応は鎌取城に戻りました。
両軍対戦図
古河公方軍
足利晴氏7000→楢島勢2500
足利晴氏→足利義明3500
足利晴氏→小弓城
大掾勢1500→里見義堯2000
千葉勢10500→一色勢4200千葉勢→鎌取城500
千葉勢→平山城900
足利晴氏は小弓城に正木時茂の軍勢2700の存在を把握していません。小弓公方、足利義明の秘策が待ち構えます。
──午前8時開戦──
足利義明の指令で小弓公方軍全体に御曹司、足利義純に毒矢が使われ、重傷だと公開されました。
古河公方の命令で毒矢が使われた!
噂には聞いてた兵士達も怒りに奮えます。
千葉勢が動きます。
鎌取城の北、4キロの陣地から鎌取城を目指します。邪魔になる東に見える平山城の手前に1500を配置して動きを封じます。
残る9000が前進します。
鎌取城の正面に一色正義勢4200が立ちはだかります。
隣の大掾正興の軍勢1500が鎌取城の北西、里見義堯の軍勢2000に向かって前進します。
千葉勢はゆっくり一色勢に向かって前進します。
先鋒の軍勢2000が幅500メートルに広がり隊列を並べて迫ります。
うぉー!
わぁぁー!
エイ!トオ!エイ!
エイ!トオ!エイ!
エイ!トオ!エイ!
声を揃え、気合いを掛けながら隊列を整えて前進します。
一色勢は縦、横幅50センチ程の急造の柵を多数配置しました。
一晩で素早く
簡単に作る為、近くの雑木林から集めた集めた細い木材、退去済みの住居から使える材木を集めて作りました。1/3から半分地中に埋めて雑に配置します。
敵の前進を少しだけ邪魔するだけですが、人の腰より下の低い位置に有り、安易に突破出来ます。
しかし、多数の軍勢が殺到すると滞留が発生します。
そこに弓矢を放ち、近所から拾い集めた砂利や
石を投げ込みます。
余った木材も退去した住居から投げられる武器に成りそうな物を集めて使いました。
前進する千葉勢に負傷者が続出しました。
古河公方軍が汚い毒矢を使うなら武器ならなんでも有り!
そんな気持ちで一色勢が纏まりました。
武田信玄が石礫専門部隊を使っています。
邪道ですが、効果は抜群です。
前進する千葉勢は弓矢に石礫にがらくたを浴びて苦戦しました。
騎馬隊も低い位置にある柵に引っ掛かり落馬、隊列が乱れた処に弓矢、石礫を喰らい、撃退されました。
仕方なく、千葉勢は軍勢を東に移動、柵の無い地域から一色勢に迫ります。一色勢も対応して東に軍勢を回します。
少しずつ千葉勢が押し始めました。
──鎌取城、西北、大掾勢1500
里見勢2000の戦い──
大掾勢は前日に死傷者を多数出した反省から、弓部隊を増やして先鋒に配置しました。長槍部隊に守らせ、自慢の長刀部隊を後方に回し、接近戦になるまで待機させました。
大掾勢と里見勢は互いに弓部隊、長槍部隊の攻防が続きました。
里見勢は長刀部隊に接近されたくありません。
一色勢に見習い、前日から砂利、石礫を集めて準備していました。
恥も外聞も気にせず、里見家初の石礫攻撃を実行しました。
大掾勢は常陸国、鹿島神宮の神様を信奉する、正義の為に戦う剣の達人が多数在籍しています。本日は剣を弓、長槍に替えて対戦しています。
これは戦を冒涜する行為です。
石礫攻撃を受けても石礫を投げ返す者は1人も居ません。
盾を前に出して耐えました。
里見勢は守備に徹して前に出ません。
大掾勢は耐えてジリジリ前進を続けました。
──古河公方本陣、午前9時─
──足利晴氏、簗田高助──
高助?鎌取城はどうだ?
はい!
敵の一色勢が石礫攻撃で恥も外聞も捨て去り、武士にあるまじき攻撃で千葉勢が苦戦しております。
まぁ石礫が無くなれば突破するに違いありません。
そうか?大掾勢はどうだ?
はい!実は、里見勢も石礫攻撃をしておりますが、これも石礫が無くなれば、剣豪揃いの大掾勢が押し始めると思われます。
なんと?石礫か?
貧しい甲斐国の武田家の石礫部隊の真似をしておるのか?
恥知らずな奴らだな?
それにしても、本陣近くが騒がしいが、なんだ?兵士達が喚いてるぞ?
公方様!
昨日、千葉昌胤殿が毒矢にて足利義純を撃ったのは公方様の命令だと喚く輩が数名居りまして、我が陣地の前にて大声を張り上げています。
兵士達が怒って言い合いになっております。
なんだとぉー!
あれは千葉昌胤の独断じゃないか!
俺は命令してねぇーぞ!
たったの数名だぁ?
討ち果たせぇー!
ごらぁぁー!
使番!今すぐ輩を討ち果たせぇー!
使番!走れぇー!
討ち果たせと伝えて参れぇー!
簗田高助が止める間も無く、使番が慌てて走り、騒ぎの現場に命令を伝えました。
使番に晴氏の怒りが伝わりました。
公方様の命令だぁー!
奴らを討ち果たせぇー!
うぉぉー!
うぉぉー!
殺したれぇー!
本陣の騒ぎに集まった兵士達が馬で逃げる罵倒部隊の兵士を追いかけます。簗田高助は足利晴氏に伝えてませんが、罵倒部隊が晴氏が女に溺れてるだの、即興で有ること無い事、作り話で罵倒していました。
兵士達が怒る程酷い内容でした。
漲る怒りに古河公方の本隊の軍勢が動きます。
罵倒部隊は距離を計りながらゆっくりと足利義明の陣地に馬を走らせます。
本陣から軍勢を眺める晴氏、じっくり構えて時間を掛ける予定を自分で破る事になりました。
想定外の事で本陣周辺の部隊が次々に罵倒部隊を追撃します。
足利義明の陣地に向かいました。
始めに数百の兵士が騎馬兵を先頭に罵倒部隊を追いかけました。
騎馬に続き、罵倒された内容に怒った兵士が続いた事から軍勢が動いてしまいました。
足利義明の陣地に4000の軍勢が隊列を乱したまま、殺到します。
──足利義明、真里谷信之─
信之!
罵倒部隊が見事に役目を果たしてくれたぞ!
来るぞぉー!
ジグザグに組まれた馬防柵の合間から隊列を乱した兵士が前進します。
程良く侵入させて弓矢の雨に晒します。罵倒部隊が挑発的な言葉でさらに多くの軍勢を引き付けます。
馬防柵を抜けた古河公方本隊の兵士は多勢に囲まれ潰されます。
堪らず多数の犠牲者を残して退却します。その軍勢に西に控えていた楢島勢2500が腹背から包囲します。
──足利晴氏、簗田高助──
高助!やっちまった!
怒りに任せて、自分から作戦を潰してしまった。
公方様!
本陣に残る兵力 3000から私から2000を率いて楢島勢の背後から攻撃します。
楢島勢の勢いを止めたら飛び出した軍勢達が立ち直ります。
後は流れ次第で臨機応変に戦って参ります!
わかった!俺が悪かった!
高助に任せる!
頼んだぞ!
古河公方軍と小弓公方軍の決戦2日目、互いの作戦に
秘めた想いが絡み、想定外の事が起こりました。
戦いの始まりから意外な展開になりました。
戦いはさらに激しくなります。
どちらの想いが勝利に繋がるのでしょうか?




