１５４４年(天文１３年)４月１３日、小弓城の戦いが始まります。古河公方軍が優勢です。小弓公方、足利義明に打開策はあるのでしょうか？
長距離を移動して来た古河公方軍本隊と大掾勢の休養が終わりました。
古河公方、足利晴氏は自信満々で決戦に望みます。
元々兵力不足の小弓公方軍は農民兵士を多数採用して各地の城に守備専門部隊として配置していました。農民達に絶大な人気がある嫡男、足利義純が決戦に向かう勇者を募ると予想外に多数の兵士が集まりました。
小弓公方家を支持する農民兵士に支えられ、なんとか活路を開きたいのですが………
１５４４年(天文１３年)４月１３日～
──前日の夕方に小弓公方軍は軍議を開きました。足利義純の提案から募った農民兵士達の増員で兵力差は縮まりました。
古河公方軍が２２０００
小弓公方軍は１８５００
わずかに差は３５００です。
小弓公方軍の小弓城、有吉城、鎌取城、平山城の守備兵力も含めた数字です。
軍議の席で楢島正臣の奇抜な策が採用されました。
小弓城の守備部隊を７００、
小弓城西、後方に楢島勢３０００
小弓城の東、後方に足利義明勢４０００
小弓城の東２キロの有吉城に守備隊７００
有吉城の東に里見勢４５００
有吉城の東北２キロの鎌取城に守備隊５００、
鎌取城の東、後方に足利義純勢４５００、
鎌取城の東北２キロ、平山城に遊撃部隊１０００
を配置して敵の側面、後方撹乱を行う。
これは足利義明が囮になる作戦です
。
小弓城が前に有り、後方に総大将、足利義明の軍勢が見えます。
敵方の軍勢は足利義明勢４０００に攻撃を集中するでしょう。
囮に食いついた敵の軍勢に小弓城の兵士７００と楢島勢３０００が側面に攻撃を仕掛けます。小弓城から東へ２キロ離れた有吉城の東から里見勢４５００が敵の側面を攻撃します。
更に有吉城の東北２キロ
鎌取城の東、後方に隠れた足利義純勢４５００が敵の側面を攻撃します。
鎌ヶ谷の後方に隠れてる足利義純の軍勢の大半が勇者として募った兵士です。古河公方軍に存在を知られていない軍勢です。想定外からの側面攻撃を受けた敵軍が驚くでしょう。
さらに鎌取城から東北へ２キロの平山城から遊撃部隊１０００が敵の側面、背後を攻撃します。
農民兵士の配置転換で増員した兵士の数を把握してない古河公方軍が混乱する事が予想されます。
敵が対応しても常に側面攻撃が出来る事、敵が側面攻撃に反撃しても小弓公方軍側が高台で古河公方側が低地になり、有利に戦えます。
小弓城から２キロ間隔に広げた網に掛ける罠の中に古河公方軍を招き入れる作戦です。
小弓城、有吉城の守備力、攻撃力を加えた戦力が加わり、負けない戦いを展開します。
──４月１３日早朝─
立堀城付近から古河公方本隊が小弓城方向に進軍しました。鎌ヶ谷方面から到着した時に海側寄りに布陣した為、古河公方本隊８０００が小弓城の２キロ手前、海側に布陣しました。
その東に大掾勢２０００、千葉昌胤勢１２０００が布陣しました。
──古河公方、足利晴氏、梁田高助
公方様！斥候の知らせによると、小弓城の西後方に楢島勢３０００、小弓城の東後方に足利義明勢４０００が布陣しております。里見勢は離れた場所に布陣してる模様です。
高助、小弓城の前に出ると想定していたが、後ろに引いてるのか？
小弓城が邪魔だなぁ？
楢島勢と足利義明勢を攻撃する時に横から攻めてくるかもしれんなぁ？
公方様のご心配の通りです。
我が軍勢の正面は小弓城と楢島勢になります。隣に布陣している大掾勢が足利義明勢の正面に相対しています。大掾勢と隣の千葉勢が足利義明の陣地に攻撃するのが良いでしょう。
我が軍勢は小弓城を牽制する為、小山勢１０００を配置します。
本陣に１０００を残し、
残る簗田勢６０００が楢島勢に狙いを絞り、敗走させます。
そのまま回り込み足利義明の軍勢を包囲して潰します！
高助！それだ！効率が良さそうだ！
大掾勢と千葉勢に足利義明を先に攻めさせて、後から一番美味しい処を頂くぞ！手配を頼んだそ！
──千葉昌胤、原胤清
胤清、小弓城の東後方に足利義明が布陣しているが、嫌な場所だな？
小弓城と有吉城の兵士が側面攻撃して来るぞ！
我が千葉勢１２０００の前には足利義明勢、有吉城、里見勢が並んでおる。
戦場心理で敵方の総大将、足利義明の軍勢に攻撃が集中してしまうだろう。攻勢に出ると有吉城と里見勢から側面を攻撃される。
有吉城と里見勢に正面から攻撃して彼らを抑え切り、足利義明の軍勢を
倒さなければならぬ！
足利義明勢の真正面には鹿嶋流の剣士が揃う大掾勢２０００が奮戦するだろう。彼らに足利義明勢を削って貰う！適度に大掾勢を支援しながら、折を見て一気に足利義明の軍勢を叩き！義明の首を取るぞ！
殿！
大軍同士の決戦では城の前に出て戦うのが常識でしょう。
我が軍勢は２２０００！
敵方は１３０００！
小弓城の後方に布陣したり、有吉城の側面に布陣するのは城の防御力を利用する消極的な戦い方です。
時間が掛かりますが、兵力の差で押仕切れば良いでしょう。
──古河公方から大掾勢、千葉勢に足利義明勢に攻撃する様に指示が出されました。
──古河公方軍は兵力差が９０００
と信じています。小弓公方軍が１８５００に増員、兵力差が３５００まで縮まったのを知りません。
─古河公方軍の配置
─古河公方、足利晴氏
軍勢８０００
本陣１０００
小弓城の抑えに１０００
簗田勢６０００→楢島勢３０００
─大掾正興、
軍勢２０００→足利義明４０００
─千葉昌胤、軍勢１２０００
酒井勢４０００→里見勢４５００
有吉城の抑えに１０００
原勢５０００→足利義明勢４０００
周囲数キロの範囲に軍勢が揃いました。緊張感が高まります。
午前８時頃、
─小弓公方、足利義明、真里谷信之
公方様！敵軍が少しずつ接近しています。我が軍勢の真正面に大掾勢、２０００！左に足利晴氏の軍勢８０００！右に千葉勢１２０００！
信之！目の前に迫り来る古河公方の軍勢２２０００！
壮観だな？軍列の幅１里(４キロ)にもなるだろう。
小弓城手前から街道から外れて田畑や水田、野原や雑木林の周辺から進軍して来る奴らの嫌がらせに田んぼに水を張り、周辺を湿地帯にしてやった！(笑)
さらに馬防柵を巡らして進軍の邪魔をしてやったから難儀しながらの接近だろう。
後は囮の我が軍勢が敵引き付けて間延びさせれば、味方の軍勢が敵の側面から攻撃する！
なかなか面白い策だぞ！
──敵襲！正面から大掾勢の先鋒部隊、騎馬５０！長槍５０！長刀２００が接近します！
─物見の兵士が叫んで知らせました。
信之！長弓で討ち取れ！近付けるな！
─わぁー！うぉー！
─掛かれぇー！
大掾勢２０００が小弓城の東、後方に控える足利義明の陣地に攻撃して来ました。
足利義明の軍勢は馬防柵に守られた陣地から長弓を放ちます。
大掾勢は長弓を避けながら接近します。一旦停止すると盾兵を先頭に前進を再開しました。
足利義明勢は長弓、弓部隊２００が前進する大掾勢を狙い撃ちにします。
ほど良く戦うと後退、５０メートル下がった馬防柵から待機していた弓部隊２００と合流、合計４００の弓部隊が馬防御柵に支えられ防戦します。馬防柵の左右から騎馬隊１００、長槍部隊２００が繰り出します。時に攻勢に出ながら、しばらく戦います。
やがて、軍勢を引き上げ、さらに後方５０メートルの馬防柵に退避して防御に徹した戦いで少しずつ大掾勢を引き込みます。
長刀部隊の前進を弓部隊が少しずつ削ります。接近する敵に長槍部隊が大掾勢長刀部隊の頭を叩き、接近して肉弾戦に持ち込むのを防ぎます。
騎馬隊の半数が弓を放ち、半数の騎馬隊は短槍を投げて長刀部隊に犠牲を強いる戦いに持ち込みます。
大掾勢は少しずつ前進しますが、想定外の死傷者を出しました。
古河公方の本隊８０００は小弓城の正面に小山勢１０００を配置して城からの出入口を塞ぎました。
本陣に１０００を残し、残る６０００を簗田高助が率いて楢島勢３０００を攻撃始しました。
楢島勢も足利義明勢と同じ戦い方で馬防柵を利用して戦いました。
しばらくすると５０メートル後退して馬防柵で守りながら時に反撃しますが、やがてさらに後方５０メートルの馬防柵で防戦します。
６０００対３０００の兵力差が有りながら、巧みな防戦で持久戦に持ち込みました。
──千葉昌胤の軍勢１２０００は有吉城の抑えに１０００を配置して城の出入口を塞ぎました。
次に隣の大掾勢２０００を支援して、原胤清が５０００の軍勢を率いて足利義明勢の攻撃します。合計７０００の軍勢が足利義明の首を狙う事になりました。
さらに里見勢の正面に、酒井勝春の軍勢４０００を配置して足利義明の軍勢を攻撃する味方の腹背を狙われないように攻撃を仕掛けました。
千葉勢４０００と里見義堯の軍勢４５００名は一進一退、激しく戦いました。
──里見義堯、真里谷信隆、
信隆、戦い開始から一刻(２時間)は過ぎたであろう。
当初の想定と違う展開だが、少しずつ後退して千葉勢を引き込み、東に待機しておられる御曹司、足利義純様に千葉勢を背後から叩いて貰うぞ！
義純様に使いを出せ！
里見勢が後退したら千葉勢の背後から攻撃して貰うのだ！
はい！手配致します！
──千葉勢と里見勢が戦う戦場から１キロ東に鎌取城があります。その裏手に足利義純の軍勢４５００が潜んで居るのを千葉勢は知りません。
里見義堯より連絡を受けた足利義純は里見勢が後退するのを待ちました。やがて里見の後退を確認すると千葉勢の背後に迫りました。
─午前１１時頃
掛かれぇー！
うぉー！！わぁーぁー！！
大声を挙げて千葉勢の背後から襲いかかりました。腹の底から声を出して自分達を鼓舞しながら千葉勢を恐怖に落とし込みました。
勝利に向かって里見勢を追い込んだ
と夢中になって進む背後から奇襲を受けて千葉勢は崩れました。
里見勢も偽りの後退から攻勢に転じました。酒井勝春が指揮する千葉勢４０００は隊列が崩れ、崩壊しました。その影響は隣の千葉勢５０００を率いる原胤清の軍勢にも波及しました。
──里見義堯、真里谷信隆
信隆！
後は義純様に任せて、今から公方様の軍勢を攻撃してる千葉勢、原胤清の率いる５０００を粉砕するぞ！
はい！左に転進の太鼓で全部隊に知らせます！
ダダダン！ダダダン！
左転進！
ダダダン！ダダダン！
左転進！
ダダダン！ダダダン！
左転進！
里見勢が左に転進、原胤清の率いる軍勢５０００の背後から攻撃を開始します。
原胤清は隣の味方の軍勢が崩壊するのに気が付きました。里見勢が太鼓の音でこちらに転進するのを知り、部隊を撤収すべく、引き金を鳴らすか否か迷いました。
しかし、攻勢中の軍勢に引き金を聞かせても直ぐに退却は出来ません。
右に転進の合図、右転進の鐘を叩きました。
カンカン！
カンカン！
右に転進だぁー！
カンカン！
カンカン！
右に転進だぁー！
原胤清の究極の機転でした。
まさかの右転進は里見勢の背後からの追撃を受けながら、西側の楢島勢の背後を通過して海岸沿いに抜けて北に向かい、追撃を振り切り、古河公方の配下、簗田勢と合流しました。
里見勢は深追いせず、足利義明勢を攻撃していた大掾勢を撃退しました。
足利義純の軍勢は酒井勝春の軍勢の追撃を続けました。近くに待機している平山城の遊撃部隊に召集をかけました。
そこに味方を救出すべく、千葉勢の当主、千葉昌胤自ら２０００の軍勢
を率いて救援に来ました。
新手の元気な軍勢が足利義純の軍勢を押し返します。
敗走中の酒井勝春の軍勢が最後の気力を振り絞り、千葉家当主の救援に答えて反撃しました。
疲れの見えた足利義純の軍勢が不利になりました。
そこに義純が編成した遊撃部隊１０００が平山城から到着しました。
追撃中の義純から連絡を受けてタイミング抜群の状況で間に合いました。
乱戦となり、千葉家当主、千葉昌胤と足利義純が互いに認識出来る距離に近づきました。
義純が騎兵２０騎、長槍２００を率いて千葉昌胤の首を取るべく突入します。
──千葉家当主、昌胤殿！その首、我が父に献上すべく頂きに参る！
いざ！参るぞぉー！
千葉昌胤の周りにも旗本３００が守りを固めています。
弓８０、騎馬２０長槍２００
足利義純が自ら先頭で２０騎の先頭になり突撃します。長槍２００も勇気を振り絞り続きました。
千葉家当主の意地で突撃を正面から受ける昌胤、心配した嫡男、利胤が昌胤の周りに弓の名手を集めました。至近距離に来た義純を弓で討ち取るつもりです。
やがて昌胤に狙いを絞った義純が近づきました。わずか２０メートルまで接近した時でした。
弓の名手１０名が放った弓矢が義純の右胸に１本当たりました。周りの騎馬兵士も弓矢を受けて落馬する者が続きます。義純を守る為に前を遮り、自らを犠牲に義純を守りました。
側近達は、さらに放たれる弓矢から義純を守りながら撤退します。
追撃する千葉勢に平山城の遊撃部隊が盾になり阻みます。農民兵士にとって足利義純は失ってはならない大切な恩人です。
死ぬ事を厭わず戦う姿に千葉勢も危険と察して追撃を停止、撤収しました。
義純の軍勢は右胸に矢を受けた足利義純を守りながら最寄りの鎌取城に入り、医師の治療を受けました。
──午後２時過ぎ、６時間の戦いが終わりました。
開始から３時間は古河公方軍優勢、
後半３時間は小弓公方軍が優勢に終わりました。
古河公方軍２２０００名
死者1100、負傷者1900
損耗率13%
小弓公方軍１８５００
死者８００、負傷者１３００
損耗率11%
小弓公方軍のやや優勢の形に１日が終わりました。
しかし、鎌取城から足利義純、右胸に矢を受けて重傷の知らせが入りました。
小弓公方、足利義明の嫡男として優秀な後継者です。万が一にも失いたく無い存在です。
優勢に終わった１日の喜びが吹き飛ぶ悪い知らせでした。
楢島正臣の陣地から立花家の医師が派遣されました。
夜８時頃になり、鎌取城から連絡が入ります。
右胸の出血が止まるが、高熱有りました。弓矢に毒が塗られていた可能性が有り、解毒処理中との連絡です。
小弓城内で明日に備えた軍議に暗雲が立ち込めました。
鎌取城から足利義純が動けません。
優秀な精神的支柱の指揮官不在で明日の対応をしなければなりません。
足利義明、里見義堯、楢島正臣、その他の武将達も頭が真っ白になりました。
小弓公方軍が大健闘でやや優勢に終わった１日でした。しかし、精神的支柱、次代の後継者足利義純が重傷との事態に明日はどーしたら良いの？
小弓公方軍のピンチになりました。
明日はどーなる？
お詫び、
解りにくい文面を数ヶ所修正、加筆しました。
