1544年(天文13年)3月30日、古河公方軍の進撃に関東に激震が走り、北条氏康に希望の光が見えたかも?ピンチ脱出なるか?
古河公方軍の下総侵攻作戦が2日目に成果をあげました。
早くも八街城、中山城が落ちました。
小弓公方、足利義明は木更津城の里見家に頼ろうと、援軍要請を命じました。
しかし、側近は里見家の家臣団、反里見義堯派に固められています。
真里谷、武田、土岐、酒井一族で前当主、里見義豊の元家臣団です。
援軍要請を出したように振る舞い、撤退方法を議論していました。
①古河公方軍が本拠地、小弓城に迫ったら、海路、品川湊に渡り、府中城の立花義秀を頼り、古河公方を倒して、足利義明を古河公方に就任させる事を目指す!
②古河公方軍が小弓城に迫ったら、海路、または陸路にて安房に渡り、足利義明を盟主に打倒、里見義堯を掲げ、亡き当主、里見義豊の敵討ちを唱えて安房を統一、上総に侵攻して古河公方軍と講和して木更津城の里見義堯を挟み撃ちにする。
古河公方軍と上総を半分に折半、里見家に代わり、安房、上総半国を足利義明の領国として再生する!里見家の領地は全ての家臣に分配、里見家は足利義明の家臣になり存続する。
①を選ぶ場合、小弓公方から貰った領地を失います。上総、安房の領地は木更津城の里見義堯が健在な限り安泰です。
さらに立花家が勝ち残れば未来が開けます。
しかし、里見義堯が古河公方に攻撃され負けた場合、領地全てを失う可能性があります。
②を選ぶと安房、上総の領地から兵力を集めて一族を結集出来ます。里見義豊の遺族、遺臣達の兵力を味方に出来ます。
安房を統一出来たとして、古河公方と講和出来るか?解りません。
①②どちらを選んでも、一族の半分が里見義堯派
、半分が旧主、里見義豊派です。
必ず肉親同士の戦いになります。
議論は①立花家を頼るが優勢になりますが、今後の状況次第を見極める必要があります。
足利義明も彼らの不穏な動きを解っていますが、
家臣団の半分は里見家と義明の両方に所属する変則な構成になっています。
里見家の闇が全てを暗黒の世界に引きずり込む事になっています。
里見家が健全な状態なら足利、里見連合軍が千葉勢、原勢と対等に戦えたはずです。
それが残念で悔しい思いを足利義明、里見義堯が共有していました。
下総の戦いは古河公方軍優勢に展開します。
1544年(天文13年)3月30日、午前
前日の座間城の南側で激しい戦いがありました。
──中津、三田頼重、大石盛将
盛将!疲れは取れたのか?
いや、義兄上、私は平気ですが、兵士達の疲労が抜けていません!
昨日は2度も相模川を往復して渡り、午前、午後と戦いました。腰まで水に浸かり、渡るだけでも甲冑が重くなり、体力を使いました。
だよなぁ。(笑)
軍師殿(新納忠勝)から本日は休息するように指示されたからな。
部隊ごとに交代で甲冑の手入れ、下着交換をするぞ!河川敷近くに哨戒を忘れず、監視部隊を出すのを忘れるなよ!
はい!助かりました!兵士達が喜びます。
──前日頑張りましたから、ご褒美の休息になりました。
──戸塚、楢島正臣、長尾政頼
先日、27日の戸塚の戦いに負けて、退却しましたが、補給を整え、兵力再編して3日、再結集しました。
楢島正臣勢2000
長尾政頼勢2000
平山広季1500
久良岐康國1500
合計6000
政頼!負けてからの回復が早かったな!
平山勢、久良岐勢が挽回の機会を願い出てきた!
互いに主人を失ったのになぁ、彼らは軍規を乱した責任を感じてるから、なんとか挽回の機会を与えたい。
そこでだ、ここから3里(12キロ)の早川城を狙いたい。物見の知らせでは、守備兵力が200名程度らしい。
正臣?玉縄城は見逃すのか?
北条氏堯が重傷らしいが、久良岐勢に配慮するつもりなのか?
政頼、玉縄城を狙うのも悪く無いんだが、早川城なら座間城まで3里(12キロ)だからな、座間城の北条氏康と北条綱成が慌てるだろう。
落とさなくても、攻めた事実が恐怖を膨らませるだろう。隣の海老名城まで1里弱(3キロ)
退路を断たれる恐怖を味会わせたいのだ!
それに、北条氏堯には回復して貰いたいのだ。
あんなに清々しい武将はなかなかいないだろう。
いつか、あいつと酒を呑みたくなった!
氏堯が久良岐康成と一騎討ちした理由が泣かせるからなぁ。
前日に同士討ちを含めて玉縄城の家臣を800名失った責任を取って死ぬ積もりだった。
久良岐勢を圧倒してたのに、康成に一騎討ちを申し入れ、相討ちで康成が亡くなり、氏堯も刺されて倒れたんだ!
康成が亡くなって悲しいけど、氏堯の潔い心が堪らなく泣かせるじゃねーか?
倒れた氏堯を見た北条軍兵士達が皆泣いていたそうだ!奴らも氏堯の気持ちが解っていたからだろう!
わかった、正臣、早川城に行こう!
それじゃ、玉縄城に酒を届けるのはどーだ?
お前が一筆カッコいい書状を添えて贈ればいいじゃないか?
わかった!敵に酒を贈る!
カッコいいかもしれんな?
──重傷の玉縄城主、北条氏堯を讃え、清酒五樽、焼酎五樽、楢島正臣の書状が添えられ、氏堯に届きました。
史実では、武田信玄が北条家、今川家に塩の取引を停止されて困っていた時に上杉謙信が武田領民を救う為、大量の塩を届けたとか、故事となりました。
最近の研究により、上杉謙信は越後の塩商人を信濃、甲斐の国へ派遣して正規の商売をしただけらしいが、法外な値段をつけず、正々堂々の商売をした事が武田信玄や家臣、領民に評価されて故事になったかも?
という説もあります。
敵に塩をおくる!
もしかしたら、後年、楢島正臣が北条氏堯に酒を贈った事が故事になる?かも?(笑)
敵に酒を贈る!
たぶん、故事にならないと思います。
故事になるとしたら、楢島正臣の義理の父、立花将広が吉良家に乗り込み、泥酔しながら岩槻太田家、江戸太田家、世田谷吉良家を同盟に率いれた、泥酔しながら同盟を成立させた。❪通称泥酔同盟❫の方が有り得るかもしれません。
次の故事候補なら、八王子、滝山城の広域の敷地が城内に所在する少林寺の所有地と領地だった事件!
❪滝山城、賃貸契約物件事件❫とか、
その、所有権を巡り、少林寺住職と立花将広が直談判で口説き落とした❪滝山城泥酔、売却交渉事件❫などが、故事になりそうですが、……
(笑)
──楢島正臣率いる立花軍は戸塚から長後を経由して早川城付近に到着しました。
城兵達が慌ててる様子が見えます。
彼らは立花軍が戸塚に布陣した事を知っていましたが玉縄城に向かうと思っていました。
早川城から早馬を走らせます。
3キロ先の海老名城、12キロ先の座間城に立花軍6000来襲を告げる為、懸命に走りました。
鬨の声を挙げました。
エイエイ!おぉー!
エイエイ!おぉー!
エイエイ!おぉー!
エイエイ!おぉー!
楢島正臣は戸塚の戦いで軍令違反で負ける原因を作った平山勢、久良岐勢に挽回の機会を与えるため、早川城の東から平山勢1500、南側から久良岐勢1500を接近させました。
太鼓を叩き、応援歌を始めました。
ダダダン!にっぽん!
ダダダン!にっぽん!
おぉー!にぃーぃーっぽぉーぉん!
にぃーぃーっぽぉーぉん!
にぃーぃーっぽぉーぉん!
にぃーぃーっぽぉーぉん!
ヘイヘイ!ヘイヘイ!
おぉー!にぃーぃーっぽぉーぉん!
にぃーぃーっぽぉーぉん!
にぃーぃーっぽぉーぉん!
にぃーぃーっぽぉーぉん!
ヘイヘイ!ヘイヘイ!
ダダダン!たちばな!
ダダダン!たちばな!
繰り返し、腹から声を出しました。
東から平山勢1500、西から久良岐勢1500名、さらに近くに見守る楢島勢2000、長尾勢2000
、合計6000の軍勢の合唱が城外から響きました。
突然の大合唱に腰が引けた城兵達、
その様子に、主将、楢島正臣が決断します。平山勢、久良岐勢に攻撃を命じました。
戦意喪失状態の城兵が逃亡します。
ダメだ!逃げるぞー!
200名の兵士は大半が玉縄城からの補給の中継要員です。
軽装で充分な防具を与えられていません。命を掛ける義理が無い存在ですから、海老名城へ逃げろー!
の一声で逃亡が始まりました。
早川城は呆気なく陥落しました。
捕虜を15名ほど確保、酒を呑ませて情報を取りました。
最近、立花、武田、今川の同盟が成立、駿河の今川義元が富士川を越えて、駿河の北条領に侵攻する!
武田信玄が、津久井城経由で小田原城を攻撃する!などの噂が信じられてる事が判明しました。
──早川城、楢島正臣、長尾頼政
正臣!
早川城の捕虜からお前の流した流言が北条家に浸透してるのがわかった!これなら座間の北条軍兵士たちまで噂に怯えてるだろう。
凄いじゃないか?
あぁ、それは戸塚の陣地から頼政と、平山、久良岐達に手伝って貰った結果だ!皆のお蔭だ!
立花、武田、今川の同盟が出来たら、巨大戦力、古河公方軍も怖く無いからな。俺の願望だ!
やはり、足利幕府の支配力が衰えた今も、古河公方の権威は怖い。
簡単には勝てぬからな。
さて、頼政!
早川城を、取れた!
隣の海老名城まで1里弱(3キロ)、
偵察部隊を出して様子を見る。
状況次第で海老名城をどーするか考慮しなきゃならんからなぁ。
正臣!
義國様や将広様から与えられた任務は補給路を脅かす事だ。
早川城が落ちた事を知ったら玉縄城の北条軍は座間城への補給を諦めるだろう。
無理せず、まずは早川城で落ち着いたらどーだ?
わかった!
今日は早川城に留まる!
岡津城経由で原町田の本陣に今日の成果を報告して、ここから座間城の北条氏康を脅かしてやるぞー!
──楢島正臣と長尾頼政、
若い二人、主将の正臣が走り出すと、落ち着くように巧みに速度制御する頼政。
将来が楽しみな武将です。
──座間城、北条氏康、北条幻庵
氏康!
大変だ!早川城が落ちたぞ!
戸塚の戦いで綱成(北条綱成)に負けたはずだった立花軍だ!
楢島正臣率いる6000が驚く程の回復力で立ち直りやがった!
叔父上!
これは不味い、玉縄城、三浦半島からの補給が遮断されます!
小田原から相模川を渡る補給路は中津の立花軍に遮断されてしまいます!
今川家と武田家が北条領に侵攻するのが近いとの情報もあります!
頭を抱える二人でした。
古河公方軍は順調に作戦を進めています。
北条軍は大ピンチになりました。
さて、これからの展開がさらに激しくなりそうです。




