1547年(天文16年)4月上旬〜中旬、奥州遠征軍、桑折西山城に到着!
伊達家の天文の乱の発端は父の伊達稙宗が越後国主、上杉家に養子を送り、同時に優秀な人材100名と数千の精鋭を派遣して越後国を掌握する事を企みました。
越後国と南奥州から圧力を掛ければ北関東の制覇、やがては奥州全域の制覇も可能性が広がります。
しかし、嫡男、伊達晴宗は越後国に優秀な人材と精鋭数千を派遣すると伊達家の弱体化を招くと反対、意見が対立して親子が家中を真っ二つに、更に周囲の諸大名を巻き込んだ南奥州の広域に戦場が広がり、内乱は五年の月日が経過していました。
1547年(天文16年)4月上旬〜中旬
4月6日、立花家の奥州遠征軍、先発部隊は三芦城から5里(20キロ)、二階堂家の本拠地、須賀川城に付近に進みました。
二階堂家の当主、二階堂輝行は立花家の使者、藤原家長と対面すると、正式に停戦する事、勅使の饗応、次の目的地、田村家の三春城への道案内を承諾しました。
更に奥州遠征軍の兵糧として米400俵、味噌60樽の調達する事を受け入れ、立花家から手数料込で600貫(6000万円)を先払いされる事に大いに喜びました。
勅使は須賀川城にて饗応され、奥州遠征軍は須賀川城周辺に布陣する事になりました。
4月7日、北へ6里(24キロ)離れた田村家の三春城に到着、藤原家長は田村家当主、田村隆顕と対面、二階堂家に求めた同じ内容で停戦と勅使の饗応、兵糧の調達を受け入れ、次の目的地、二本松家の二本松城への案内を承諾させました。
4月8日、二本松城に到着、二本松義国と対面した藤原家長は二本松家にも同じ内容を受け入れさせて北へ進みました。
二本松城から北へ5里(20キロ)の杉目城にて奥州遠征軍、先発部隊と後発部隊が合流、4月11日、奥州遠征軍は石川家、二階堂家、田村家、二本松家の軍勢を加えた13000の軍勢となり、北へ3里強(14キロ)の桑折西山城へ向かいました。
伊達晴宗の支配地域、杉目城から勅使を護衛する立花家の奥州遠征軍13000が南奥州の大名家の当主を従えて桑折西山城へ向かった事が早馬で知らされました。
―伊達晴宗本拠地、桑折西山城―
―伊達晴宗、中野宗時―
「宗時!遂に来るぞ!
勅使と立花家の軍勢が来るぞ!
しかも立花家は敵対していた大名家の当主達を引き連れて来るぞ!」
「若殿!おめでとうございます!
正式な停戦の勅命が下れば大殿(伊達稙宗)を支援する軍勢も士気が下がり、帰国するでしょう。
立花家が率いる軍勢は13000!
これで我らの軍勢が大殿側の兵力を上回ります!」
「これで頑固親父と支援する奴らも諦める筈…
流石に五年の対立で疲れた…
長年にわたり、幕府に仲介を要請したが、幕府は宛に成らず、朝廷と立花家に救われた…
伊達家も諸大名も無駄に消耗してしまった…
田畑も荒れて、南奥州の民に申し訳無い…」
「若殿!疲れたのは皆同じでございます。
そんな時ですから、若殿は元気な姿で家臣や領民を励まして、希望を与えなければなりません!」
「わかった!元気な姿を見せてやるぞ!
家臣や領民に希望を与えて伊達家を早期に再建するぞ!」
この頃、伊達晴宗の本拠地、桑折西山城に集まった兵力は岩城家と結城家の援軍1000を加えて7000、敵対する父、伊達稙宗の本拠地、丸森城には2倍余の15000の軍勢が武装したまま待機しています。停戦に応じる気配を見せていますが、裁定の内容次第では何時でも戦う姿勢を示していました。
一方、伊達稙宗陣営の本拠地、丸森城には日奉宗政が立花家の使者として訪れました。
―伊達稙宗本拠地、丸森城―
―伊達稙宗、日奉宗政―
「伊達殿、お久しゅうございます。
先日お知らせした通り、ご嫡男、伊達晴宗殿の本拠地、桑折西山城に勅使の御一行と立花家の奥州遠征軍が到着いたします。
私と一緒に勅使、万里小路頼房様にご挨拶に参りませんか?」
「ほぉ、儂に息子の本拠地で頭を下げるなど恥を晒せというのか?
勅使からの要請ならば考えても良いが、其方の手柄になるだけだろう?違うか?」
「いいえ、手柄などとは考えておりませぬ、我が主、立花義秀からのお勧めにございます!」
「断る!停戦には応じるが、儂は従四位下左京大夫、奥州守護職の威信に賭けて動かぬ!
勅使がこちらに参るなら歓迎するぞ!」
「承知致しました。ならば停戦の証に丸森城に集まった軍勢を帰国させては如何でしょうか?」
「それも断る!このままの態勢で勅使を待つ!
小勢になったら晴宗の陣営から無理難題を吹っかけられるから真っ平御免だ!」
「なるほど、それでは仕方ありません。
勅使の護衛に立花家の奥州遠征軍が帯同して参りますのご承知ください」
「ほほぉ…それで、立花家の奥州遠征軍?
どれ程の軍勢なのだ?」
「ははっ、立花家が率いて来た軍勢が13000、伊達晴宗殿の軍勢が加わると20000になりますが、更に蘆名家が参加するらしく、25000程になるかと存じます」
「待て!其方は前回、立花家が率いて来るのは3000程度と申したではないか?謀ったのか?」
「いいえ、立花家の本隊は3000程ですが、同盟大名家から参加した軍勢6000加わりました。
朝廷の官軍の証、錦の御旗を掲げて小名浜湊から北へ進軍すると岩城家が1000、結城家が1000と奥州遠征軍に加わりました。
更に石川家、二階堂家、田村家、二本松家が其々500ずつ兵力を差し出して道案内を務め、ご当主の方々も勅使の御一行に加わり、ご嫡男、伊達晴宗殿の桑折西山城に本日中に到着致します」
「待て!岩城家、結城家だけでは無く、他の大名家の当主達も一緒なのか?」
「はい、恭順の証にご当主の皆様もご一緒でございます。これで万が一にも丸森城周辺で諍いになれば、伊達稙宗殿の名誉に傷となりましょう…」
「うむむ、…そうだな、少しは考えても良い…
此方に来るとなれば早くても二日後だな?」
「はい、早くても二日後にございましょう。
これは伊達家の為、奥州の諸大名と領民の為、ご明察の程、お願い致します!」
「それで、朝廷の意向はどうなんだ?」
「ははっ、朝廷は伊達家当主、伊達稙宗殿の実績を高く評価なされてると聞き及びます。
我が主、立花義秀も寛大な裁定と信じております!」
「そうか、寛大な裁定…だと良いな…
伊達家の夢を広げる為に良かれと思ったのだが、儂がやった事はやはり間違っていたのか…?
後は晴宗に任せるしかないのだな…」
反骨心を剥き出しにしていた伊達稙宗が弱気になりました。彼は59歳、嫡男の晴宗は28歳…
家督を譲る潮時かもしれないと悟りました。
「日奉殿、諸大名の援軍のほぼ半分を帰国させる!
半分は残す!残る軍勢は8000だ!
これ以上は譲れぬぞ!」
「ご配慮に感謝致します!」
日奉宗政は伊達稙宗の殺気を宥めて譲歩させる事に成功、挨拶を済ませて退席しました。
宗政は帰り際、城兵や城の周囲を警備する兵士達に停戦成立を告げて去りました。
正式に停戦になると知った兵士達は喜び、丸森城から殺気が消えて、久々に帰国出来る喜びに浸りました。
4月11日、正午過ぎ、立花家の奥州遠征軍が桑折西山城の城下に到着しました。
黄金菊の紋章の軍旗数百が掲げられて風に靡き、兵士達が挨拶の意味を込めて気合いの声を上げます。
「エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!」
城下町には多数の領民が見物に現れ、警備の兵士達が領民達を道端に座らせて、勅使を見てはならぬと、礼儀正しく平伏させました。
先頭の兵士達の後から優雅な勅使の行列が連なります。立花家の女性騎兵50騎が弓を鳴らして邪気を祓う鳴弦の儀式を始めました。
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
「奥州の、民の安寧を祈りまするー!」
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ!
「奥州の、民の安寧を祈りまするー!」
鳴弦と女性騎兵の声が響き、奥州の民に都から来た勅使が平和を齎す事を確信させました。
女性騎兵の後には平安時代の壮麗な装束の行列が続きます。都の近郊ならば勅使は牛車に乗りますが、万里小路頼房、烏丸義光の二人は好んで馬に乗り、奥州の風景を楽しみました。
安全を期すために多数の影武者を周囲に配置、更に勅使の二人の装束の中に防刃服を着せています。
防刃服と勅使の壮麗な装束の厚みで弓矢も刀も通さぬ仕立てになっていました。
やがて桑折西山城の正門前に伊達晴宗と重臣達が平伏して勅使の行列を迎えました。
万里小路頼房、烏丸義光、二人の勅使が下馬して従者に馬を預け、伊達晴宗の挨拶を受けました。
「伊達左京大夫殿、良くぞ耐え忍びましたな?
帝の御心は奥州の民の安寧…それが全て…
勅命を授けに参りましたぞ!」
「ははっ!恐悦至極に存じます!」
万里小路頼房の言葉に凛とした響きを感じて、伊達晴宗は一言返事するだけで緊張が高まりました。
万里小路頼房、烏丸義光の二人は晴宗の重臣に導かれて桑折西山城の本丸に向かいました。
勅使の二人の後には南奥州の大名家の当主達が次々と正門前にやって来ました。
勅使への礼節と違い、伊達晴宗と重臣達は立礼で諸大名家の当主達を迎えます。
岩城家、岩城重隆、白河結城家、結城政勝、石川家、石川晴光、田村家、田村隆顕、二本松家、二本松義国、その後には立花家の奥州遠征軍の同盟大名家の当主達7名が晴宗と挨拶を交わし、本丸へ案内されて行きました。
その後から立花義秀と松千代、立花家の重臣と同盟大名家7名の当主達が下馬して現れました。
義秀が伊達晴宗を見つけると早足で駆け寄りました。
「伊達晴宗殿とお見受け致します!
私は武蔵国守護職、立花義秀と申します。
此の度は勅命を授かり、南奥州の騒乱を鎮める為に同盟大名家の軍勢と共に参りました!」
「立花殿、日奉宗政殿から伺いました!
此の度は朝廷への仲介に感謝致します!
伊達家はこの恩義を末代まで忘れません!」
伊達晴宗は膝を付いて義秀に平伏しました。
「伊達殿、顔を上げてくだされ、未だ蘆名家、相馬家、大崎家に葛西家が停戦に応じておらず、そこ迄為さる必要はありません」
義秀の態度は伊達家に対して威圧的な態度を取らず、謙虚な姿勢を見せました。
関東で古河公方、足利家、関東管領、前橋上杉家との戦いに勝ち抜いて来た噂だけは南奥州にも伝わっていましたが、これほど謙虚な人物とは…伊達晴宗や伊達家の家臣は立花義秀を初対面で信頼出来る人物と悟りました。
伊達晴宗は立ち上がり、深く一礼すると、自ら本丸への道のりを案内に立ちました。
「立花殿、同盟大名家の皆様もこちらへどうぞ!
足元に気を付けて、少々急な階段もございます。
ゆるりとこちらへ!」
桑折西山城の本丸は標高193メートル、城下から本丸まで高さ100メートルを登ります。
遠慮して祖父、立花義秀と離れていた松千代が義秀に追いつきました。
「伊達晴宗おじさま!
立花義秀の孫、松千代7歳でございます!
此れよりお世話になりますので、宜しくお願いいたします!」
松千代はペコリと頭をさげました。
「ほぉ!お孫さん?松千代殿、こちらこそ宜しくお願いします。
立花殿、これは礼儀正しく、利発なお孫さんにございますぞ!」
「ぶははは!孫にせがまれて、ついつい連れて来てしまいました。お世話になりますぞ!」
「大歓迎にございます。
我が子供達の遊び相手をお願い致しましょう!」
桑折西山城には久々に平和な時が流れ始めました。
ふうふう言いながら登る立花義秀に、松千代が元気な笑顔で励まして登ります。
やがて本丸に到達すると下界には南奥州の絶景が広がります。
「お爺!凄い綺麗だよ!」
「おぉ、絶景じゃ!来てよかったな!」
南奥州の大河、阿武隈川と米処の平野と遥か彼方に広がる山々の姿が美しい絶景が広がりました。
「お爺、伊達稙宗側の大名家の当主を口説いて連れて来たのは正解でしょ?」
「ぶははは!参った、その通りだった。
勅使と共に行動すれば朝廷からの見返りがあると囁いたら効果覿面じゃったなぁ」
「きゃははは、決め手は勅使、万里小路頼房様が帝、後奈良天皇の甥だと知らせたら…
目を丸くして皆さん積極的に動き出したでしょ?」
「ぶははは!そうだったな、今回も松千代の知恵に助けられたぞ!」
「お爺、南奥州の主要な大名家と交流が出来たし、岩城家は立花家と縁組が決まった。
後は岩城家と結城家、石川家を互いに縁組させて立花家側に取り込む必要があるよ!」
「解ってる。すでに政家(筆頭宿老、鹿島政家)に密かに工作を命じておるぞ!」
「それは良かった。さてお爺、史実の伊達家はね、再建に手間取るよ。
父の伊達稙宗殿が利権を餌に勧誘しまくり、領地の権利を乱発、対抗して伊達晴宗殿も味方を募るのに領地を与えて引き抜きや引き留め工作を互いにやり続けた結果、領地が被ったり混乱するの。
それに徴税権、裁判権など複雑な絡みがあり、家臣達に与え過ぎた権限が揉める原因になるんだよ。
だからね、天文の乱の間に与えた双方の領地を一旦返上させて信賞必罰、功ある家臣達に領地を与えるのだけど、それが長く揉める原因になり、晴宗の嫡男、伊達輝宗の時代まで揉め続け、さらには伊達晴宗、輝宗親子の権力争い、有力家臣の権力争いに発展、収拾出来ずに輝宗が僅か17歳の伊達政宗に家督を譲り、家中の争いを一掃する為に伊達政宗が奥州統一をめざして領地を拡大し続ける事で解決を目指す事になるんだよ!」
「ほぉ、相変わらず松千代は戦国時代に詳しいな?」
「気に入った武将の関連した本を読みまくったから自然に覚えてるんだよ!」
「それにしても、伊達政宗が奥州統一を目指した理由が天文の乱の後始末と繋がっていたとは…」
「驚いたでしょ?」
「参ったぞ!…」
二人の和やかな会話が周りに居る立花家の護衛の兵士達に遮られ、伊達家の関係者に聞こえる事はありませんでした。
立花家の護衛の兵士達には二人の会話が未来に繋がる話らしいと感じる程度で理解が追いつきません。
松千代が神様のお告げを伝える神童として崇め、祖父と孫の和やかな会話と理解して聞き流していました。
松千代を常に護衛している美人侍女5名と、筆頭宿老、鹿島政家だけが秘密を知っていました。
「ねぇ、お爺、桑折西山城に来てない大名家の事だけど、蘆名家、相馬家、最上家、大崎家、葛西家の扱いを考えてあるの?」
「おっ、厳しいな…蘆名家は既に脅してやったぞ!
本領安堵を願うなら、蘆名家当主が桑折西山城の勅使に頭を下げに来いとな、来なければ朝敵として討伐すると脅してやったぞ!」
「ぎゃははは!お爺すごーい!」
更に、蘆名家が降伏したから相馬家、最上家、大崎家、葛西家も本領安堵を願うなら桑折西山城の勅使に頭を下げに来いと知らせてやったぞ!
蘆名家が降伏したとハッタリを含めたが、返事は未だだがな…」
「ぎゃははは!それで丸森城の伊達稙宗殿に使者は出したの?」
「日奉宗政を使者に遣わしたがな、稙宗殿を連れて来るのかわからん。桑折西山城に来るとなれば、嫡男、伊達晴宗殿に頭を下げる事になり、父が息子に頭を下げるとは思えぬ、来ないならば軍勢を率いて行かねばならぬぞ!」
「まさか、戦にはならないよね?」
「ぶははは!それでな、万が一に伊達稙宗殿が桑折西山城へ来るのを拒否した場合に備えて、勅使、烏丸義光様が丸森城に向かう手筈を整えた。
日奉宗政が失敗しても、烏丸義光様が丸森城に入り、稙宗殿が正式に停戦と勅使の調停を受け入れるなら、丸森城にて隠居を許して罪を問わぬ事になる。
その後始末に軍勢を向かわせれば戦にはならぬぞ」
「お爺、よく出来ました!二重丸の合格だよ!」
「ぶははは!二重丸の合格!嬉しいぞ!」
立花家の護衛の兵士達と松千代の美人侍女達がクスクス笑いを堪えていました。
彼らにはいつも見慣れた祖父と孫の会話の風景でした。
立花家の奥州遠征軍が漸く伊達晴宗の本拠地、桑折西山城に到着しました。
勅使、万里小路頼房と立花義秀、松千代の活躍が期待されます。
1547年当時、南奥州の戦国大名家の当主の名前には諸説ありますが、AI検索を参考にしました。




