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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1546年(天文15年)11月上旬、泥酔軍師、立花将広、三好長慶に政策助言?!松千代は足利義輝と義兄弟?!

立花家、猿渡家の叙任を祝う宴は静かな外交戦になりました。

様々な思惑が錯綜します。

1546年(天文15年)11月上旬


陽光殿の宴席は上座に上級公家の20名、西側の列に立花家、猿渡家、同盟大名家の30名と東側に幕府側の招待客30名、その下座に中級公家20名、総勢100名の宴席が用意されました。

幕府の新将軍就任を祝った先日の宴席と同じ規模の宴席です。

琴の合奏が始まり和やかな雰囲気になり、女官達が酒を注ぎ、楽しく呑ませて場を盛り上げました。


立花家側と幕府側の武将達は三度目の宴席になり、宴席は各々、腹の探り合いになります。酔いながら相手の情報を引き出すべく、密かな外交の戦いになりました。

この日の幕府は将軍足利義輝、足利義晴親子は欠席、重臣の中では酒に強い者を優先に出席させました。


立花家側は幕府の乱れた内情を知りたがり、幕府側は立花家側の内政、軍備、交易の方法や古河公方家との戦いの詳細を知りたがりました。互いに探り合い、聞き出す為に相手に酒を呑ませて聞き出します。

そんな時に頼もしいのが泥酔軍師、立花将広でした。酒を呑ませたら立花家最強、将広は管領、細川氏綱、畠山政国、六角定頼、三好長慶を捕まえて呑ませて語らいました。

立花将広も泥酔しながら駆け引きを計算して発言しています。


「足利尊氏殿が作り上げた幕府から200年!幕府は建て直しが出来ますかな?」


「大丈夫!我々が結束して再建します!」


などと各々が答えますが…

立花将広はその言葉を待っていました。


「ほぉ、左様に申されても…幕府を支えた斯波家、山名家、土岐家、京極家は跡目相続争いの末に自滅、没落して幕府の要職を担う事が出来なくなりましたな?

一色家は丹後国で内乱鎮圧に追われ、、赤松家は播磨で失脚した細川晴元に組していると聞きますが、細川家は新管領、細川氏綱殿派と細川晴元派に割れて、細川家の勢力は半減、幕府が統治している範囲は近江国、山城国、摂津国、河内国、和泉国、大和国、伊賀国…指折り数えて7ヶ国の範囲の中で反乱勢力が生き残り、将軍家の領地は奪われ、収入は激減、幕府は細川家、畠山家、六角家に最近台頭した三好家だけで支えておりますな?」


手厳しい言葉に幕府側も反論の余地がありません。幕府の領地は横領され、財政は破綻しています。仕方無く細川家、畠山家、六角家、三好家が資金を供出しているだけでは当然不足しています。


「朝廷からの借り入れ金もございますな?

借り入れ金の返済のはどうなさる?」


立花将広は近衛家、九条家からの情報で幕府財政の破綻を知っています。痛い所を突きました。この問いに明確に答えたのが唯一、三好長慶だけでした。


「ご心配には及びません。横領した主犯は失脚した前の管領、細川晴元でしたから、既に幕府から追放した故、横領した領地は次々に奪還しています。反乱勢力は鎮圧しつつあります!」


「ほぉ、しかしなぁ、細川晴元の横領した土地は寺社やら地頭が拝領した土地だと主張して居座ってると聞くが、大丈夫であろうかのぉ?」


細川晴元は管領に在職した10年間に横領した土地を寺社、地頭に与えて年貢の3割を上納させる手口で管理していました。

幕府側は横領された領地の奪還に苦労しているのを知っている立花将広がさらりと話しを広げます。

三好長慶は立花将広が内情を知りながら話しを向けた事を悟りました。


「参りましたな?

そこまで知りながら心配なさるなら、知恵を貸して下さらんかな?」

三好長慶も泥酔しながら立花将広を試しました。


「ぶはははは!、酔っ払いの戯れ言だぞ!

ひとつは、細川晴元と同じく、寺社、地頭に年貢の3割を上納させる事で許す。

もうひとつは戦に動員して留守中に軍勢を差し向けて領地を奪う!、さらにもうひとつは…官位を与えて家臣に加え、任務を与えて信賞必罰、貢献有る者に領地を加増、失敗を重ねた者から領地を没収する!

まぁ三つの選択肢から参考になれば、やってみるが宜しかろう!」


「成る程!三つの選択肢から…ぶはははは!

さすが、噂に聞く立花家の泥酔軍師!

参考にさせて頂きます!」


「ぶはははは!泥酔した酔っ払いの言葉に責任は持たぬぞ!加減を間違えば反乱に繋がる事を肝に命じて為されよ!

幕府の新体制を固める事が出来なければ、丹波国に逃れた細川晴元や赤松家、その他に味方する勢力がいずれ結束するだろう。

反撃をさせてはならぬ!

細川晴元に恩義を感じている勢力を潰さない限り、幕府の安泰は無いぞ!」


「ぶはははは!さすが泥酔軍師殿!

その知恵を頂き、感謝致します!」


「三好殿、これで幕府が立ち直るなら立花家は関東の古河公方家、関東管領家と協力して関東の争乱も収めて見せましょう。

しかし、幕府が立ち直らず、不安定なままであるならば、古河公方家、管領管領家の暴走が再発、関東も再び荒れる事になりましょう。ここは必ず、細川晴元派の反撃を許さず、しっかりと足固めをなされよ!

新管領、細川氏綱殿に幕府再生が出来ぬと見たら貴方が幕府を担われるのが宜しかろう!」


立花将広は周りに聞こえよがしに大きな声で語りました。


「いやいや、私は細川殿を信じて支える事だけを考えます!さぁ呑みましょう!」


三好長慶は立花将広の巧みな話しの誘導に戸惑いました。細川晴元が将軍家から横領した土地を寺社や地頭に与えて手なずけた手法は三好長慶が細川晴元に献策して実行した手法です。


その寺社と地頭と三好長慶は今も陰ながら繋がりが有りました。

立花家に把握されているなら時限爆弾を仕掛けられたに等しい状況です。

細川晴元が軍勢を率いて反撃して来た時に三好長慶が細川晴元と繋がっていると噂になるだけで微妙な立場に立たされます。


「泥酔軍師殿!さぁさぁ、呑みましょう!」

三好長慶は立花将広がこれ以上、政治向きの話題に触れない様に祈りながら酒に付き合いました。


宴席には琴の合奏が響き、女官達が踊り、公家達も泥酔しています。

立花家から献上された清酒と焼酎の旨さに酒が進み、泥酔者が続出しています。


酒の勢いも有り、三好長慶は立花将広に相談を持ちかけます。

「泥酔軍師殿!幕府の財政を立て直すには如何にすれば宜しいと思われますか?」


「ぶはははは!堺の商人を頼れ!其方ならば堺の商人との付き合いもあるだろう。

近衛家、九条家の商務奉行にも頭を下げて頼め!三好家ならば讃岐国、阿波国、淡路国の産物を扱えるだろう。地道に基礎を作り、堺から博多に交易範囲を広げよ!

財政が再建出来る前に尼子家か?大内家のどちらかの勢力が細川晴元と繋がり、反撃して来るだろう。反撃に備えながらの財政再建は難しいだろうが、やるしか無いぞ!」


「ははっ!ご教示に感謝致します!」


「三好殿、頼った方々には仲介の手数料等を定期的に納めて仁義を忘れるなよ!」


「ははっ、肝に命じます!」


この時、三好長慶は24歳、史実通りならばやがて幕府の権力を握ります。

立花将広は史実を知らずに権力掌握への道を教えてしまいました。


しかし、立花将広の目的は新管領、細川氏綱と畠山政国、六角定頼、三好長慶の四人の協力体制に楔を入れる事にありました。


─幕府の序列─

1位、新将軍、足利義輝(15歳)

2位、後見人の足利義晴(35歳)

3位、新管領、細川氏綱(33歳)

4位、家格上位の畠山政国(39歳)

5位、六角定頼(51歳)

6位、三好長慶(24歳)


序列6位の三好長慶が台頭するなら幕府体制が乱れると考えて助言を与えていました。


その頃、立花義秀は序列3位の管領、細川氏綱、序列4位の畠山政国、六角定頼を相手に語らい、人物を見定めていました。

管領の細川氏綱は細川家の家格と先の管領、細川晴元の勢力を半減させる為に担ぎあげられた管領であり、幕府の序列5位の六角定頼が実質的に幕府の体制を主導している気配を察していました。

畠山政国は細川氏綱と六角定頼の間を取り持つ事に専念している気配がありました。

酒を酌み交わして語らう程に三名の立場が見えて悪戯心がフツフツと沸き上がりました。


「ぶはははは!幕府を新体制にするなら、将軍を補佐する管領制度を斯波家、細川家、畠山家に限っていたのを六角家、三好家、一色家、赤松家に解放すると宣言しなされ!

魅力を感じて一色家、赤松家が幕府側に属したならば、失脚した細川晴元の勢力は瓦解して反撃する能力を失うだろう?」


極論ですが、的を得た指摘に細川氏綱、畠山政国は驚きの様子を見せました。

六角定頼は一瞬笑顔になり、キラリと目が輝きました。

「お待ちあれ、六角家は代々、幕府を支える家柄、管領など望みませぬ!」

六角定頼が否定しました。


「ぶはははは!戯れ言と流してくだされ!

さぁ呑みましょうぞ!」

立花義秀は冗談を交えて語りましたが、六角定頼に微かな野望の気持ちが有ると判断しました。


その頃、松千代は陽光殿の近くの庭園に抜け出しています。

宴席を欠席した足利義輝の側近から庭園で話しをしたいと誘われていました。

松千代は美人侍女2名を護衛に庭園に到着しました。


足利義輝は10歳、周りには18歳程の側近二人に壮年の護衛五名が控えていました。

松千代がニコリとすると足利義輝も少年らしい笑顔を見せました。


松千代は片膝を付いて挨拶します。

「上様、お元気でしたか?

お役目が忙しい中にお招きに預かり、光栄にございます」


「松千代、習い事がたくさん有り過ぎて疲れた!漢詩に和歌に短歌、弓に剣術、孫子の兵法に習字に茶の湯、故事成語につづみに笛に演舞だぞ!やってられん!

一緒にやらぬか?」


「きゃははは!上様無理でございます。

松千代が出来るのは習字ぐらいしか出来ません!」


「松千代は習い事は余りしないのか?」


「はい、読み書きの為に習字に故事成語、俳句を少しと兵法の講義を少しばかり、茶の湯の和菓子なら大好きです!」


「お気楽で羨ましいぞ!

お主の爺様(立花義秀)に頼んで一緒に学びたいのだが?付き合え!」


「きゃははは!上様、松千代は間も無く帰国致します。時間がございません!」


「えーっ?いつ帰るの?つまらんなぁ?」


「明日までは東福寺に居ますけど、数日中に帰国と聞いてますから…

あっ?上様は剣術は好きですか?」


「あぁ、習い事で一番好きなのが剣術だ!

俺は筋が良いらしいのだ!

身を守る為に必要だし、戦に出たら敵を切りまくるぞ!

松千代、立花家は剣術が盛んなのか?」


「いいえ、立花家は弓と騎兵が主体の家柄です。剣術は護身の為に学びます。

立花家では鹿島流と薩摩流の武術が学ばれていますが、最近は同盟大名家の流派も取り入れて学んでいます」


「そうか、多数の流派から学べば強くなれるだろうな?

立花家は戦に強いらしいな…足利家は将軍家でありながら、軍勢は少ないし、父上は負け戦ばかり…だから俺は強い足利家を作るぞ!」


「はい、上様なら強い足利家を作れます!

立花家は上様に従います!」


足利義輝は史実では三好政権と対立して戦死する運命です。松千代はそれを知りながら持ち上げて義輝の未来を否定しませんでした。


「松千代、俺の祖父は近衛尚道、その息子が今の近衛家当主、近衛稙家、お前は近衛稙家叔父様の娘を嫁に貰う約束してるだろ?

俺達は近衛家を通じた義兄弟だろ?」


「はい、近衛稙家様の娘を嫁に貰います!」


「なら、決まりだ!正式な俺たち二人の親戚関係は義理の叔父と義理の甥の関係らしが、?なんだかわからん!しかし、決めた!今から二人は義理の兄と弟だ!松千代は俺の義弟だぞ!良いな?」


「はい!

上様は義兄上!宜しくお願い致します!」


その時でした。義輝の指導係がやって来ました。本日は御所内の近衛家で習い事をしていて、松千代が来ている事を知り、抜け出していたのでした。


「松千代!義弟よ!

俺は習い事に戻らねばならぬ、又会えたら良いな?一緒に遊ぼうな!」


「はい!上様!義兄様!又逢いましょう!」


松千代は片膝を付けて挨拶しました。

義輝は松千代に笑顔と悲しみが混じった笑みを返して去りました。


足利家と立花家、源氏の棟梁の家柄を誇る故に対立した両家に生まれた二人…

又逢う時があるのか?…


「義兄上様ぁー!又逢いましょうー!」

松千代の声に義輝が手を振りました。

松千代は複雑な気持ちを抱えて手を振りました。









祝いの宴席は密かな外交戦になりました。

大人達と違い、松千代は足利義輝を敵視出来ず、複雑な気持ちになりました。

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