１５４４年(天文１３年)３月１８日、高月城、滝山城の攻防戦、立花将広の知謀炸裂？
立花将広が仕掛けた事が次々決まりました。
高月城、滝山城から未明、田んぼに水を流し、動揺する敵陣に夜襲を仕掛け、高月城と滝山城の南側の弱点を改修して強化しました。
３月１８日午前中から高月城、滝山城、拝島城に戦場が拡大しました。
―拝島城下、多摩川河川敷―
上杉軍成田勢１０００と拝島城の福島勢１０００が拝島城下、河川敷にて戦闘中に立花軍の援軍が到着しました。
新納勢２０００、佐伯勢２０００が参戦、立花軍が合計５０００、上杉軍、成田勢１０００を包囲して圧倒し始めました。
―滝山城本丸最上階―
―大石盛将、立花将広―
二人が眺める多摩川河川敷に、滝山城の兵士が戦場へ応援歌を叫び、太鼓の音がひびきます。
ダダダン！ニッポン！
ダダダン！ニッポン！
おぉーおーおー！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
ハイハイハイ！
ダダダン！お、お、い、し！
ダダダン！お、お、い。し！
ダダダン！上杉憲政！生け捕り賞金１０００貫！
ダダダン！上杉憲政！生け捕り賞金１０００貫！
敵の総大将、上杉憲政の生け捕りした場合の懸賞金が1000貫(１億円)になる事が戦場に響き渡りました。
「父上！派手に知らせましたね？」
大石盛将が笑いながら父に尋ねました。
「ぶははは！これなら全軍に伝わり易いだろう！」
ダダダン！拝島！
ダダダン！拝島！
おぉーおーおー！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
ハイハイハイ！
おぉーおーおー！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
ハイハイハイ！
ダダダン！拝島！
ダダダン！拝島！
おぉーおーおー！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
ハイハイハイ！
滝山城から拝島城下の立花軍へ応援の声が響きます。
「父上？！これは？拝島城の仲間と連絡する太鼓の合図ですね？上杉憲政が滝山城の近くに現れた時の合図ですか？」
「ぶははは！盛将、正解だ！
拝島城あたりから、上杉憲政の派手な軍旗が見えるだろう。味方に関東管領、敵の総大将ここに在り！
まぁ派手に示す必要があったからな、拝島城辺りから見れば、対岸に上杉憲政！生け捕り懸賞金1000貫！
派手に聞こえただろうな？
ぶはははは！拝島城の仲間と太鼓の連絡方法を考えて正解だったぞ！」
「父上！成田勢を撃破したら、新納勢、佐伯勢４０００名が多摩川を渡り、上杉憲政の軍勢を包囲するでしょう！その時、私も出撃したいと思います！」
「良し！大事な初陣だ！
戦場の雰囲気を味わって来るが良い！
但し、泥濘んだ田んぼに入ってはならんぞ！
それから最前線に出てはならぬ！
周りを、見渡せる場所から冷静に指示を下すのが総大将の役目だからな！ 」
「はい！役目を、果たします！」
「よっしゃ！其方の手勢２００に加えて成宮孝則の４００を与える！城下の内藤長春の手勢６００と合流せよ！敵の総大将、関東管領上杉憲政を生け捕りにして参れ！」
「はい！行って参ります！」
大石盛将が初陣を迎えます。
滝山城の戦いに新たな動きが始まります。
一方、その頃、滝山城の北に位置する二宮城から数キロ離れた地に立花家の軍勢が潜伏していました。
加賀美利久勢２０００
二宮和也勢５００
合計２５００
上杉憲政が僅かな留守番の兵士を残して滝山城方面に軍勢を率いて向かいました。
二宮城をほぼ空の状態にしています。
状況を把握した加賀美勢２５００は二宮城を囲みました。上杉軍留守居役２０名と、高月城包囲陣地から逃げていた２００名は降伏、無血で奪還しました。
二宮城に立花家の菊紋の軍旗２０本が高く掲げられ、
兵士達が鬨の声を上げます。
「エイ！エイ！おぉー！
エイ！エイ！おぉー！
エイ！エイ！おぉー！」
滝山城本丸最上部から二宮城の上杉家の軍旗が除かれ、立花家の軍旗が風に靡く様子が見えています。
立花将広の策がまたひとつ嵌りました。
二宮城を二宮和也勢５００に託し、加賀美利久の２０００が秋川方面に南下、秋川河川敷に到着しました。
ダダダン！ニッポン！
ダダダン！ニッポン！
オォーオー！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
ハイハイハイ！
オォーオォー！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
ハイハイハイ！
大石！お、お、い、し！
大石！お、お、い、し！
秋川の河川敷に加賀美勢が応援歌を響かせて、自分達の存在をアピールしました。
立花家の菊紋の軍旗２０本が上がりました。
それに気が付いた高月城北側の上杉軍、安中勢１０００の兵士達に衝撃が走りました。
加賀美勢の別働隊５００が安中勢の背後に廻り、秋川河川敷から弓矢の連射を浴びせます。
安中勢１０００は高月城から出撃した城兵２５０と加賀美勢５００に挟撃されて不利になりました。
加賀美勢の本隊１５００が秋川を渡り、上杉憲政の軍勢を目指して進みました。
滝山城から加賀美勢が戦う姿が見えています。
滝山城の立花将広が兵士達に声がけを命じました。
戦場に太鼓が響き、兵士達の声が戦場に広がります。
ダダダン！懸賞金！
ダダダン！懸賞金！
上杉憲政！生け捕り懸賞金！1000貫！
上杉憲政！生け捕り懸賞金！1000貫！
ダダダン！懸賞金！
ダダダン！懸賞金！
上杉憲政！生け捕り懸賞金！１０００貫！
上杉憲政！生け捕り懸賞金！１０００貫！
滝山城から戦場に響く声が広がりました。
軈て加賀美勢の兵士達の耳に懸賞金の声が届きました。
―滝山城付近、上杉憲政、長尾勝久―
「お館様！敵は懸賞金を掲げてお館様を生け捕りにするつもりです。
全ての将兵の注目がお館様に注がれます！
最後まで正々堂々とした姿を見せねばなりません！」
「勝久！敵は俺を殺すつもりが無いのだな？正々堂々？演技でも良いのだな？」
「はい！演技でも構いません！
兵士達に堂々と威厳を見せれば良いのです！」
「解った！努力してみるぞ！」
「お館様！あれなるは…なんと！
二宮城方面から敵の軍勢が見えます！
二宮城は奪われ、退路が絶たれたと思われます！」
「何とかならんのか？」
「お館様！多摩川対岸の拝島城付近で、我々の背後を守る成田勢の１０００名が潰れそうです！
彼らが突破されたら立花勢５０００名が我々を包囲します！奴らが来る前に勝負しましょう！」
「それで、勝久、何をすればよいのだ？」
上杉憲政は不安な顔で勝久に救いを求めます。
「お館様！滝山城から敵の総大将らしき若者が軍勢を率いてこちらに向かっています！
大石家の軍旗と立花家の軍旗が混じってるあれが大石盛将でしょう！敵の総大将ひとりに狙いを定めて討ち取るしかございません！」
「敵の総大将か？」
「はい、敵に包囲される前に仕留めます！
大石盛将と内藤勢が合流した様子にございます。
恐らく敵の軍勢は１２００程度でしょう。
我々が手元に３８００！
あれなる加賀美勢が１５００名が接近中！
こちらに長尾勝政(長尾勝久嫡男)の１０００名を当てます！
残る手勢は２８００名！
２倍以上の兵力で我らが有利です！
これで大石盛将の１２００名に当たりましょう！」
「勝久に任せる！頼むぞ！」
長尾勝久は決意を固め、嫡男の勝久を呼びました。
「勝政！お館様の命令じゃ！
今から其方に兵力１０００を与える！
こちらに向かって来る加賀美勢を撃ち破って参れ！」
「はい！父上！必ず打ち破って参ります！」
憲政に目礼する勝政が軍勢を率いて去りました。
「勝政ぁー！頼んだぞぉー！！」
去りゆく勝政の背中に叫びました。
上杉憲政も彼なりに覚悟を決めました。
―滝山城本丸最上部―
―立花将広、大石定久―
「将広殿、弓矢の毒にやられた仮病に飽き飽きしてました。盛将の初陣に呼んで頂き感謝申し上げます！」
「定久殿、我が次男、貴方の養子、我らが二人の息子の初陣を絶景の中でご覧頂きたかったのでござる！
高月城、拝島城、滝山城、この広い戦場に１２０００の兵士達が戦っています。この目に焼き付けましょう！」
「はい、将広殿、見事な景色にござる！
眼下に広がる滝山城、高月城、拝島城に秋川、多摩川の河川敷に大軍同士の大合戦の様子が見えております。壮観なり！」
「用意せよ！
太鼓を叩けぇー！」
立花将広が応援歌を戦場の兵士達に届けます。
ダダダン！ニッポン！
ダダダン！ニッポン！
おぉーぉー！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
にぃーぃっぽぉーぉーん！
ハイハイハイ！
奮ぇー！奮えー！
おーぉいし！
奮え！奮え！おーぉいし！
奮え！奮え！おーぉいし！
ダダダン！もりまさ！
ダダダン！もりまさ！
戦場に太鼓が鳴り響き、応援歌が戦場に届きました。
上杉憲政勢２８００が前進を開始しました。
大石盛将勢１２００名が冷静に待ち受けます。
小幡景定の２３００名が田んぼの泥を避けて前進します。上杉憲政の手元には長尾勝久とわずか５００の兵士が守りを固めています。
上杉軍が勝利するには、拝島城方面から立花軍が背後を攻撃に来る前に決着をつける必要があります。
残された時間は余り残っていません。
小幡景定の目の前に大石勢１２００、その中に敵の総大将らしき若者、大石盛将が見えています。
「狙うはただ1人！
敵の総大将大石盛将の首に1000貫の懸賞金だー！
大石盛将の首に懸賞金1000貫だー！」
小幡景定は討ち取れたら何でも手に入ると見越して独断で懸賞金１０００貫と叫びました。
その背後から懸賞金の叫びが上杉憲政の耳にはいりました。
「ぐははは！破れかぶれだ！
狙うはただ1人！
大石盛将の首に懸賞金1000貫！
大石盛将の首に懸賞金1000貫！」
上杉憲政が大きな声で叫びました。
周りの将兵も懸賞金1000貫と聞いて沸き立ちます。
「狙うはただ1人！
大石盛将の首に1000貫！
大石盛将の首に1000貫！
大石盛将の首に1000貫！」
兵士達が次々に叫び、上杉勢の士気が爆上がりました。
小幡勢が勇気を振り絞り、大石勢を目指して前進します。
大石盛将は自分に掛けられた懸賞金の金額を聞いて笑みを浮かべて落ち着いています。
「弓隊前進！連射で的を倒せ！
長槍隊は弓隊を援護、前に出るな！
敵は打ち捨てにせよ！
首を取る暇は無いぞ！」
小幡勢が捨て身の前進を始め、大石盛将の配下の指揮官達が冷静に対応します。
弓矢の雨と厳しい連射を受けて小幡勢に多数の負傷者が出ますが怯まず前進を続けました。
田んぼから少し離れた小高い丘に盛将勢６００名が布陣しています。
その先３０メートルに内藤長春勢の６００名が守りを固めています。
左右に１２０メートルの幅で、4本の畦道から迫り来る上杉軍小幡勢を食い止めます。
必死の小幡勢は畦道から密集隊形で殺到します。
「1000貫！1000貫！」
「大石盛将！1000貫！」
「1000貫！1000貫！」
「大石盛将1000貫！」
小幡勢が声を出して勇気を絞ります。
５人、１０人、２０人と盾を前にして突撃を続けます。前列が倒されても、盾を前に出して密集して攻撃を続けました。
やがて弓矢の連射が突破されました。
槍隊が弓隊を守り、接近戦になりました。
「今だぁー！突撃だぁー！」
小幡景定が叫びました。
「大石盛将1000貫！」
「大石盛将1000貫！」
懸賞金の声を上げて兵士達は勇気を振り絞り、突撃を開始しました。
「大石盛将1000貫！」
「大石盛将1000貫！」
小幡勢２３００が必死の前進で内藤長春の６００を包むように攻め立てました。
このままでは、内藤勢が突破される可能性がありました。大石盛将は休息を終えて待機していた綾瀬直政勢６００名に命令を下します。
「今だぁー！綾瀬直政！
後方に離れた上杉憲政勢を叩け！」
「上杉憲政！1000貫！」
「上杉憲政！1000貫！」
「生け捕り賞金1000貫！」
「生け捕り賞金1000貫！」
小幡勢の懸賞金の声に対抗して、綾瀬勢が懸賞金の声を上げました。
綾瀬勢６００名が動きました。
小幡勢２３００名が突撃した隙間から綾瀬勢が上杉憲政の生け捕りを狙っていました。
小幡勢が内藤勢を突破して大石盛政の首を取るのが早いか？
綾瀬勢が上杉憲政を生け捕りするのが早いか？
どちらが優勢なのか、わからなくなりました。
関東管領、山内上杉家、宿老長尾勝久
つい、先日の優勢が崩れました。
大石軍の夜襲に動揺する主を励まし、時に騙して煽てて操りました。
優勢だった筈が何処で間違ったのか？
あそこで、違う判断をしてたら？
焦って急ぎ過ぎた？
罠？罠？罠か？
誰の罠？
滝山城主は大石定久
養子縁組みで八王子城主の立花将広の次男が養女百合姫と婚儀を挙げた。
婚儀の３日目に暗殺未遂騒ぎ
立花家次期当主、立花義國、大石定久が毒矢を受けて滝山城にて治療中、その先、病状は不明……
長尾勝久は答えが見えないまま、二宮城で夜襲の知らせを聞いた時、上杉憲政が逃げる気だったのを無理やり救援に向かわせた事を後悔していなかった。
あのまま、前橋まで逃げるのは不可能なほど、敵地に深入りし過ぎていた？
引き込まれた？
罠を仕掛けた相手は前橋へ逃げる予想で配置を考えてるかも？
二宮城で逃げずに逆の手を考えた。
罠だ！罠の網が退路に有るなら！
逆に滝山城が手薄じゃないか？
半分博打でした。
今、その博打に僅かに希望が見えました。
僅かですが、時間が間に合えば！
大逆転有りです！大石盛将を討ち取れば？
戦いは微妙かもしれません。
