1546年(天文15年)5月2日、鉢形城陥落!秩父藤田家、鉢形藤田家の抗争終結!
鉢形藤田家当主、藤田友綱、筆頭宿老、児玉勝長を討ち取りました。
鉢形城攻防戦は終息に向かいます。
1546年(天文15年)5月2日
─外曲輪、御殿下橋周辺─
「うぉーぉー!」
鉢形藤田家当主を討ち取り、立花義弘の兵士達から歓声があがります。
さらに筆頭宿老も討ち取り、歓声があがりました。
「エイ!エイ!おぉー!
エイ!エイ!おぉー!
エイ!エイ!おぉー!
エイ!エイ!おぉー!」
兵士達が勝鬨を挙げます。
「鉢形藤田家当主、藤田友綱殿は討ち取った!降れー!命は助ける!
武器を捨てて降れー!」
立花義弘の兵士達が呼び掛けます。
鉢形藤田家の兵士達は当主、筆頭宿老を討たれて戦意喪失、多数の兵士達がその場に腰を落としました。
─立花義弘、松千代─
「松千代!危ない処に駆けつけてくれた!
助かったぞ!ありがとう!
いやー、目の前の御殿下曲輪の戦いに集中する余り、背後に迫る敵に気が付かなかったからなぁ……松千代?神様のお導きなのか?」
「それはね、義弘おじさんから投石機を借りたいと使者さんから聞いた時に、敵が奇襲して来る姿が頭の中に浮かんだからね、投石機と一緒に来たんだよ。」
「そうかぁ!松千代は凄いなぁ!
松千代に助けられたぞ!
ご褒美は、何が欲しいのだ?
なんでも良いぞ!」
「えー、ご褒美はねぇ、抱っこして!
それで充分だよ!」
「ぶはははは!抱っこだけで良いのか?
ほれ!」
松千代を抱っこする義弘…それを見守る兵士達も癒される瞬間でありました。
「義弘おじさん、敵方に藤田友綱と児玉勝長の首を確かめて貰えば直ぐに戦いは終わるよ!」
「おぉー!そうだな!
目の前の御殿下曲輪に使者を出すぞ!
伝令!御殿下曲輪の軍勢に停戦命令だ!
伝令!御殿下曲輪の敵に一時停戦と藤田友綱、児玉勝長の首の確認を申し入れろ!
それから、もう一つ!
伝令!全軍に敵将、藤田友綱を討ち取った事、全軍停戦を伝えよ!」
総大将が松千代の言いなりに動きました。
多数の伝令が派遣されました。
「ぶはははは!松千代は俺の救世主であり、まるで軍師みたいだな?」
周りの兵士達からクスクス笑いが漏れました。
御殿下曲輪を攻める軍勢に停戦命令が出されて攻撃が停止しました。
御殿下曲輪に使者が入り、一時停戦と藤田友綱、児玉勝長の首の確認を申し入れしました。
すると城方は阿佐美信隆が自ら立花義弘の陣中を訪ね、主君、藤田友綱と児玉勝長の首を確認しました。
主君の首の前に頭を下げ、涙が溢れました。
「殿…私が先に逝くはずが、申し訳ございません…」
主君、筆頭宿老の首が本人と確認されました。鉢形藤田家の権力者2人が消えた為、必然的に重臣の阿佐美信隆が最高位になりました。今後の後始末を相談するには絶好の人物でした。
─立花義弘、阿佐美信隆─
「阿佐美殿、我々はこれ以上の血を流したくありません。既に我が軍勢は停戦を命じました。
貴方から鉢形城の兵士達に停戦を命じていただけませんか?」
阿佐美信隆は敵の総大将から穏やかな申し入れに驚きました。
「承知致しました。全軍に停戦を命じます。
私が切腹する故、城兵の命を助けていただけませんか?」
「阿佐美殿、貴方の武将としての振る舞いは立派でございました。
切腹する必要はありません。
秩父藤田に仕えてくだされ。
私から秩父藤田家当主、藤田康邦殿に推挙致します。
貴方が秩父藤田に仕えて下されば、鉢形藤田家に仕えていた将兵も秩父藤田家に素直に従いましょう。」
阿佐美信隆は降伏を強要せず、穏やかな交渉を進める立花義弘の人柄に好感を持ちました。切腹は撤回して秩父藤田家に仕える意志を伝えました。
信隆は同席していた側近に命じて鉢形城全体に伝令を出して藤田友綱、児玉勝長の死を公表する事、全ての兵士達に停戦して待機する事を指示しました。
やがて鉢形城全体が停戦となりました。
日没迫る夕刻から、連雀曲輪にて秩父藤田家、鉢形藤田家の交渉が始まりました。
立花義弘が取り仕切り、出席者は秩父藤田家当主、藤田康邦、青龍寺住職、藤田浄心、
鉢形藤田家から阿佐美信隆が代表になり、見届け人として三ノ丸周辺の守備を任されてい前橋上杉家、上野勝家が同席しました。
─秩父藤田家─
藤田康邦
藤田浄心(康邦の叔父)
─鉢形藤田家─
阿佐美信隆
上野勝家(主家、前橋上杉家家臣)
双方の挨拶から始まり、立花義弘が交渉の進行役を勤めました。
立花義弘は立花家当主、立花義秀の次男でありながら穏やかな性格です。
交渉には降伏の言葉を用いず、和解と表現します。負けた側の気持ちを考慮した進め方は幸を奏し、交渉はすんなり決まりました。
①秩父藤田家は鉢形藤田家の全てを引き受ける。鉢形藤田家の将兵や家族は全て秩父藤田家の家臣とその家族として身分と安全を保証する。
②亡き藤田友綱の跡継ぎに弟、藤田長綱に秩父藤田家の親族の地位と相応の所領を与える。
③鉢形城の将兵は帰宅して暫く休養する事。
後日召集して任務を与える。
④鉢形城内の文官は施政準備の為、城内に残る事。
立花義弘は大きな事項だけ決めて同意を取り付けると書状を作成、各々の出席者に署名させて交渉が成立しました。
ついに鉢形城を取り戻し、秩父藤田家が本来の所領全てを奪還する事になりました。
鉢形城が陥落しました。
鉢形城周辺は秩父藤田家の元々の領地なので立花家は全てを秩父藤田に与えます。
秩父藤田家は鉢形城周辺を合わせて5万石程の
領地ですが、立花家は犠牲を厭わず支援しました。秩父藤田家の当主、将兵、領民達から立花家に対する感謝の気持ちはとても深いものになりました。




