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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1546年(天文15年)4月24日、上杉朝定が命懸けで立花義國の首を狙います!

上杉朝定は狙いを立花義國と定め、全てを賭けて挑みます。

城下町の大火が吹き上げた風を利用して土埃の目潰しを思い付きました。

目潰しは効果がありました。

本陣突入を果たして立花義國を討ち取る事が出来るのでしょうか?

1546年(天文15年)4月24日


─川越城の東門の東南、立花義國本陣─

─午後14時─



本陣には組立式の物見台が東西南北と中央に設置されています。高さ2メートルの台座から身長が加わり、3メートル半ほどの高さから周囲を見張ります。

川越の城下町から上がる炎と煙がみえます。風に乗り煙が微かに焦げ臭い匂いを運びます。大火に見舞われた城下町から大火が起こす旋風が巻き起こり、畑の土埃が舞い上がります。

川越の城下町が燃えて、味方の軍勢が巻き込まれていない事を心配していました。


その時、物見の兵士達が上杉家の軍旗と接近する軍勢に気付き、警戒の鐘を鳴らしました。

本陣に緊張が走ります。


「上杉朝定の軍勢です!

凡そ2000!

こちらに向かって来ます!」


500メートル先に上杉勢が見えました。

畑や農道を踏み荒らして前進する様子が見えます。周囲の森、雑木林に身を隠して接近して来た上杉勢に立花義國が驚きます。


「何だと?上杉朝定が?

なんでこちらに来るんだ?

西の梁田陣地で戦ってたはずだろうが?

兵力は同数じゃないか?

東門を攻撃中の味方に伝令だ!

上杉勢来襲!本陣へ軍勢を戻せ!

以上だ!」

義國は万が一に備え、2キロ離れた味方の兵を呼び戻します。


本陣内部では防御態勢に取り掛かります。

「弓隊!前に揃えー!

弓筒大量に用意!

長槍隊脇に備えろー!

騎馬隊出撃準備!弓筒担げー!」

立花義國の本陣は畑の中、四方が見渡せる場所に有り、敵襲を早めに察知すると防御を固めます。

馬防柵が並び、柵の隙間から軍勢の出し入れが出来ます。出入口には兵士達が急いで逆茂木を並べます。



上杉朝定の目の前に立花家の嫡男、立花義國の軍勢2000が本陣の守りを固めて待ち構えます。

上杉朝定の軍勢は左翼から河越勢800、右翼から長尾信正に700を託し、上杉朝定は正面から800を率いて畑を進みます。

「狙いは立花義國の首ひとつ!進めー!」


「うぉーぉー!!」

上杉朝定の気合いに兵士達に気合いが高まりました。

「わぁーぁー!」

左右と正面に別れた上杉朝定率いる軍勢は盾を先頭に進みます。

立花義國の軍勢は柵内から一斉に弓の連射を浴びせます。左右から騎馬隊200が弓の連射で進撃を阻みます。


上杉朝定が叫びます。

「土を手に取れー!土を投げろー!

目潰しだー!風に乗せて目潰しだー!」

上杉勢三部隊が一斉に土埃を風に乗せて目潰しを計りました。

「もっと派手に土を両手で巻き上げろー!

目潰しを続けろー!」

上杉朝定が叫びます。

兵士達が一斉に土埃を風に乗せます。

西から東に強く吹く風は土埃を上げて立花義國の軍勢に降り掛かりました。

守備の要の弓を放つ量が減り、上杉朝定の軍勢は柵内に侵入します。

目に土埃が入った兵士は暫く目が開けられずに後退します。


上杉朝定が叫びます。

「狙うは立花義國の首ひとつ!

進めー!」


「うぉーぉー!」

上杉勢の気合いが立花義國の軍勢を上回り、本陣に侵入しました。


─立花義國、側近─


「若殿、ここは危険です。

目潰しを喰らった兵士達がやられています。

馬で東門の味方の処に退避しましょう!」


「ダメだ!引けぬ!

伝令!騎馬隊は左右から敵の背後に廻れ!

伝令!目潰しにやられた兵士に水を配れ!

急げー!」


立花家の兵士達は土埃にやられて多数の兵士が目潰しを喰らって前が見えず、次々に討たれ、本陣の奥まで侵入されました。


「弓隊纏まれ!弓を放てー!

連射続けろー!」

「長槍隊、密集隊形!槍先揃えー!

突き出せー!」

「堪えろー!」

「長弓隊、指揮官を狙えー!」

立花義國が叫び、兵士達を鼓舞します。


左翼から騎馬隊100騎、右翼から騎馬隊100騎が上杉勢の中段に廻り弓の連射を浴びせます。

それでも上杉勢の前進は止められず、本陣は上杉勢に押し込まれました。



「押せー!前に進めー!

立花義國を討ち取れー!」

上杉朝定が叫びます。


「うぉーぉー!」

上杉朝定に応えて兵士達が声を上げます。

立花義國を討ち取るか?自分達が全滅するか?全てを賭けて前に進みました。

そして上杉朝定の目に立花義國の姿が見えました。

「居たぞー!立花義國を見つけたぞー!」

「立花義國だー!あそこに居るぞー!」

兵士達が立花義國を見つけてが次々に叫びました。


乱戦の中、上杉朝定も立花勢の兵士

達に見つけられ、狙われました。

本陣正面から800の旗本を率いて前方に姿を表して兵士を盛んに鼓舞しています。弓の連射を浴びるほどの前に出て、愛馬が弓に撃たれて下馬するほど危険に身をさらしています。側近達も馬を撃たれ下馬しています。自ら槍を構えて側近達に廻りを守られながら前進します。

「上杉朝定見つけたり!」

「弓を放てー!」

立花勢から狙う声が聞こえる中を弓の連射に怯まず前進します。


上杉朝定の護衛が危険だと諭しますが、上杉朝定は平然と応えます。

「ぶはははは!

死ぬ覚悟なんだから気にするな!

俺より先に死ぬなよ!」


今までの朝定なら怯えて逃げて当然の状況です。護衛も側近達も朝定の覚悟が本物と確信しました。



立花義國の廻りには弓隊100、長槍隊100、騎馬隊50が守りを固めています。

そこに右翼の長尾勢の一部が本陣の守りを突破しました。

長尾信正が率いる精鋭200が義國の首を狙い接近します。

長尾信正が叫びます。

「立花義國見つけたり!

この機を逃すなー!討ち取れー!」


「うぉーぉー!」

兵士達の雄叫びが更に士気を高めます。

立花義國の姿を見つけた長尾勢が義國の旗本に迫ります。

義國が叫びます。

「騎馬隊槍を持てー!

長尾勢に突撃だー!」


騎馬隊50騎が一斉に走り、馬上槍を突き出し、密集して長尾勢の兵士に体当たりを喰らわせます。

「うぉーぉー!」

「おりゃー!」

長尾勢200に50騎が体当たりすると多数の兵士が吹き飛ばされます。

崩れた長尾勢に弓の連射が進撃を止めます。


しかし、長尾勢は怯まずに立花義國の首を目指して進みました。

長尾信正自身が率いる凡そ100名が義國の廻りに残された200名の旗本に肉薄、長槍を揃えて突入します。

「槍先を揃えろー!突き崩せー!」


さらに上杉朝定の手勢が義國の旗本の正面に迫ります。義國の旗本が正面と左翼から同時に挟まれる形になりました。

「殿!もう支え切れません!

退避致しましょう!」

義國の側近達が退避を勧めます。


「まだ諦めるなー!

間も無く東門付近の味方が来るはずだ!

耐えろー!」

叫ぶ義國が馬から降りて槍を手にしました。


上杉朝定が叫びます。

「立花義國を討ち取れー!

前に進めー!」

上杉朝定と立花義國、二人の距離80メートル、互いの姿が確認出来る程接近した闘いになりました。


─1時間前、今福城─

お昼のお結びを食べた松千代は昼寝をしていました。

夢で父、義國の軍勢が上杉勢に攻撃されている夢を見ました。

百済神社の神様から父に危機が迫ると知らされる夢でした。


目が覚めた松千代が祖父、義秀に夢の事を伝えました。

「お爺!父上が危ない!

百済神社の神様がお昼寝してたら夢で教えてくれたよ!

府中から連れて来た騎馬隊を直ぐに出して!

瀬沼のにぃーにー達に助けて貰うよ!」


「何ぃー!?

義國なら川越城の東門を攻めてるじゃないか?まぁ、解った!

政家!瀬沼、藤原、日奉の騎馬隊600を義國の陣地へ派遣しろ!

主将を瀬沼信勝に任せる!急げ!」


祖父、立花義秀が鹿島政家に命じて、府中から松千代が連れて来た600騎の軍勢が救援に向かいました。


出動命令から600騎が揃い、出発するまで10分、軽い駆け足で今福城から立花義國の本陣迄6キロ、駆足かけあしで20分、合計30分で到着します。

甲冑を装備した兵士が乗ると馬に負担がかかります。急いで走る場合でも短距離で無い限り、ジョギングの様な速度で体力を温存して戦場に到着する必要があります。

体力を維持した600騎が立花義國の本陣近くに到着しました。


主将、瀬沼信勝が叫びます。

「上杉勢の背後から敵を踏み潰せー!

瀬沼、藤原、日奉、各部隊密集して突き抜けろー!、後は自由に戦えー!」



─立花義國、側近─


「若殿!正面に瀬沼勢の騎馬隊!

右手に藤原勢の騎馬隊!左手に日奉勢の騎馬隊!援軍が来ましたー!」


「そうか!間に合ったぞ!

父上(立花義秀)が寄越したのか?

助かったぞ!」


「若殿!上杉朝定が突入して来ます!」


「弓隊!密集隊形!連射続けろー!

長槍隊密集隊形!槍先前に揃えろー!」

義國が叫びます。



上杉朝定は背後から迫る援軍に構わず、先に立花義國を討ち取る事に集中しました。

「前に進めー!

義國の首を狙えるぞ!

進めー!怯むなー!」


遂に上杉朝定の身の回りの旗本200と立花義國を囲む旗本200の白兵戦になりました。立花勢の長槍と上杉勢の長槍が突き合い、叩き合い、立花勢の弓の連射が雨の如く降り注ぎます。上杉勢の前列が弓矢を浴びて崩れ、上杉朝定の近くに弓矢が集中します。


上杉朝定は盾を抱えた兵士達と前進します。盾の隙間から護衛の兵士に次々矢が当たります。構わず前にに進み、上杉朝定が立花義國へ弓を放ちます。

両者の距離は40メートル、命中すれば致命傷を与えるのも可能な距離です。矢は義國を守る盾が弾きました。

「矢を放てー!狙うは立花義國だー!」


義國の近くに弓矢が集中します。40メートルの距離なら誤差1メートル以内に矢が集まります。20本以上の矢が義國の1メートル以内に刺さりました。

護衛の数名が倒れ、義國の胸部には2本の矢が刺さりました。

「若君ぃー!」

側近が盾を集め、義國を座らせ、周囲を固めました。

「若殿ぉー!」

側近が声を上げます。


上杉朝定は叫びます。

「やったぞー!当たったぞ!

今だ!義國を討ち取れー!」


「おぉーぉー!」


上杉朝定が義國を討ち取れると確信、前進した時でした。

背後から多数の弓矢の連射と、馬の蹄が土埃を上げて怒涛の如く走り寄り、朝定の兵士達を踏み潰し、突飛ばします。

朝定も背後を振り向いた瞬間に矢を浴び、馬の胸に体当たりを喰らって地面に叩き付けられました。

松千代が派遣した瀬沼勢の騎馬隊が緊迫した場面に間に合いました。


後頭部を打ち付け、体に力が入らない朝定に馬上槍が胸を突きました。

護衛の兵士、側近の兵士も薙ぎ倒されています。

「殿ぉー!」

「お殿様ぁー!」

「殿ぉー!!」

朝定を呼ぶ声が悲しく響きます。

朝定の意識は遠退きながら既に痛みも感じられず、幼い頃から長尾信忠に守られていた記憶が甦りました。

12歳で家督相続して以来ずっと筆頭宿老の長尾信忠に守られていました。

走馬灯の様に生涯の記憶が頭の中で一瞬の如く甦りました。

「信忠…もうすぐ、会えるのだな…」

体の感覚が薄れ、浮く様な軽さを感じて意識が消えました。

馬から降りた兵士が上杉朝定の首を挙げました。

「上杉朝定殿討ち取ったりー!」


「長尾信正殿討ち取ったりー!」

ほぼ同時に二人が討たれ、立花家の兵士達が雄叫びを挙げました。

「やったぞー!」

「うぉーぉー!」

歓声が戦場に響きました。



上杉朝定を失った兵士達は最後まで戦いました。朝から梁田陣地で闘い、大火の中を移動して立花義國の本陣に迫り、後一息で勝利する寸前まで闘いました。

既に体力と気力を使い果たしています。

次々に地面に腰を落とし、涙を流しました。


立花義國は胸に矢を2本受けましたが、胸部の鉄板の前飾りに刺さり、胸に衝撃を受けたに過ぎず、鎧の防御力に救われました。

義國は立ち上がり、叫びます。

「上杉朝定殿は天に召されたー!

これ以上の闘いは無用である!

上杉勢は降れ!

降れば命を取らぬ!

降れー!」


立花家の将兵が降伏を呼び掛けました。

「降れー!命は取らぬ!降れー!」


次々に力尽きた上杉朝定の兵士達は降伏しました。皆、上杉朝定の死を悼み、涙を流しました。











川越上杉家当主、上杉朝定が21年の生涯を閉じました。

史実では川越城に籠城する北条綱成の軍勢を古河公方軍80000の大軍で包囲していましたが、北条氏康の夜襲を受けて古河公方軍は多数の死傷者を出して大敗、上杉朝定は戦死しています。


史実とは展開が異なりますが、史実から4日遅れて亡くなりました。

川越上杉家は筆頭宿老を失い、さらに当主まで失いました。

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