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戦国立花家三代、新日本国戦記、大國魂神社の大神様に捧ぐ!織田信長を倒して全国統一を目指します!  作者: 近衛政宗


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1546年(天文15年)4月15日、立花将広と下総公方家の実質的指導者、梁田直助が対面します。交渉の行方は?

大掾正興を利用して撒いた種が梁田直助を交渉の席に呼び込む事になりました。

1546年(天文15年)4月15日


─市原城、午前9時頃─

─上総公方本陣─

大掾正興は立花将広との約束を守り、市原城内の財貨、武器、兵糧の在庫を調べて目録を作成しました。上総公方家の監査役が立ち会い確認を済ませました。

市原城の掃除等も済ませて上総公方、足利頼純に引き渡しの挨拶をする為に本陣を訪ねました。


今後の上総公方家と下総公方家の戦いの後始末について大まかな事を決める必要がありました。大掾正興には市原城の事以外に権限を与えられていませんから、大掾正興を通じて下総公方に対する要望を伝える役目を託す形になります。


─立花将広、大掾正興─




「大掾殿、市原城の在庫を綺麗に整理され、目録は明快で目付達も褒めておりました。城内の掃除や庭の整理まで見事になされましたな、流石、鹿島神流の剣を学ぶ方々意識の高さに敬服いたしますぞ!」


「立花様、お褒めに預かるほどではありません。これも一期一会、出会うも別れるも気持ち良く有りたいとの想いでございます。」


「では、大掾殿、今後の上総公方家と下総公方家の戦いは民の安寧の為に早期に終わらせたいと存ずる。田植えの季節で帰国したい兵士も多かろう?

上総公方家は和平を提案する!

新しい国境を取り決める為、下総公方家から交渉役を市原城まで送って頂きたい!」


「はい、立花様、和平には賛成です。

小弓城に戻りましたら伝えて参ります。」


「されど、和平に応じない時には明日にも小弓城が囲まれると伝えて頂きたい。

まぁ、こちらは20000、小弓城はおよそ6000ほどであろう?

そちらを仕切る梁田直助殿に書状を用意した故、渡して頂きたい!」



「はい、承知致しました。

立花様、負けた我々にご配慮頂き感謝致します!それではこれにて、失礼致します!」


「大掾殿、お元気であれ!

いつか、会える時を楽しみにしてるぞ!」


二人は周り目を気にして本心を語らず、将来手を組みたい気持ちを目で語り、敵と味方の陣営に別れました。


立花将広の書状を預かり、大掾勢は北に4キロ先の小弓城に戻りました。

大掾正興が報告を済ませると梁田直助は頭を抱えます。

このまま戦いを続けるなら小弓城が包囲され、勝てる見込みがありません。

茂原方面に侵攻していた一色直頼率いる軍勢は連敗を重ね、主将の一色直頼、結城政勝が戦死、残る軍勢は東金城まで後退しています。

下総公方家は永田城、土気城、大椎城、立山城、東市原城、市原城の6城を失いました。

2年前に獲得した領域の半分が奪還されていました。

この状況で、交渉出来るのは梁田直助自身しかありません。覚悟を決め、梁田直助は市原城に向かいました。


午後13時過ぎ、市原城に梁田直助が僅かな護衛20騎にて市原城の城門前に現れました。

太鼓と歓声で迎えます。

「エイ!トウ!エイ!エイ!トウ!エイ!

エイ!トウ!エイ!エイ!トウ!エイ!」


ダダダン!ニッポン!

ダダダン!ニッポン!

おぉーぉおー!

にぃーぃーぃっぽぉーぉーん!

にぃーぃーぃっぽぉーぉーん!

にぃーぃーぃっぽぉーぉーん!

にぃーぃーぃっぽぉーぉーん!

ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!

おぉーぉおー!

にぃーぃーぃっぽぉーぉーん!

にぃーぃーぃっぽぉーぉーん!

にぃーぃーぃっぽぉーぉーん!

にぃーぃーぃっぽぉーぉーん!

ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!

ダダダン!たちばな!

ダダダン!たちばな!


太鼓に合わせて20000の軍勢が応援歌にて梁田直助の20騎を迎えました。

いきなり機先を制する立花将広の演出に彼らは圧倒されました。


梁田高助達は交渉前に、豚汁と豚丼を食べる様に勧められました。

若い護衛達は美味しそうな匂いに堪らず手をつけると初めて食べる食感に唸りました。

彼らには肉食する習慣はありません。

豚肉を初めて食べて虜になりました。

豚汁は豚肉の出汁と長ネギ、人参、大根、じゃがいも、ごぼうの出汁の旨味が合わさり絶品の味です。豚丼の中には海苔と鰹節がのり弁の如く二段の層になり、玉ねぎと長ネギ、豚肉を甘い醤油と生姜で炒めて乗せています。衝撃の旨さに圧倒されました。

さらに食後に甘栗とさつま芋を蒸して蜂蜜を加えたモンブラン鯛焼きの旨さに驚愕しました。当時、甘い物は高額で庶民が滅多に口に出来ない物でした。


緑茶を啜りながら、日常の苦しさを忘れる極上の食事を堪能しました。

緑茶でさえ、彼らには貴重な飲み物であり、身分の高い者でさえ味わえぬ程の良質な緑茶でした。梁田直助でさえ、初めて味わう高級品の味を感じました。


梁田直助と千葉家、原家の代表の3名が交渉の席に呼ばれました。

立花家との食文化の違いに圧倒されて交渉に望む事になりました。


名目上の最上位、上総公方家を代表して上総公方家の筆頭宿老、一色正義、立花将広、立花家、駐留軍主将、奥住利政の3名が交渉の席に着きました。


交渉は立花将広が主導します。

両陣営の挨拶が交わされ、市原城、小弓城から茂原城、東金城周辺の大きな地図が示されました。


「ご覧あれ、梁田殿、上総公方家の領地は2年前、先の公方様、足利義明様が亡くなり、貴殿らに領地の大半を奪われましたが、今回ほぼ半分の地域を我らが奪還しました。

市原城、東市原城、立山城、大椎城、土気城、永田城の6つの城を攻略、我が陣営が確保致しました。


まずは下総公方家の本拠地、小弓城と上総公方家の国境、市原城の距離は1里(4キロ)、この中間、半里(2キロ)を国境の線引きにして土気城周辺まで、上総公方の領地とする!

異存があるかな?」


地図の上に赤い紐で両陣営の国境を示しました。


「立花殿、東の大網城ですが、古河公方家の重臣、千葉家の宿老、酒井一族の本拠地、東金城の先1里余り(5キロ)の支城です。

こちらは焼失したと聞いております。

確保されてないなら大網城はこちらの領地のままで、南の永田城との中間地点を国境にして頂きたい!」


「ぶはははは!、俺が直接指揮していた戦いだからなぁ、立花軍に利用されたく無いから破棄する時に焼き払ったのだ!

破棄したのだから、今は新納忠義の軍勢の陣地になっておる故、諦めてもらうぞ!

返して欲しいなら、安房国と上総南部の里見家に対する反乱軍を撤収させるなら返してやっても良いぞ?」



「安房国、上総国南部の軍勢の指揮権が私にはありません。

立花殿は和平がご希望と聞いております。

大網城を返還して頂けるなら、我が指揮下の軍勢に戦闘停止を命じます。

東金城にも戦闘停止の要請もいたします!」


「甘いなぁ、今頃、小弓城の6000の将兵は交渉が終われば戦が終わると信じているだろう?油断して緩んだ処を今から小弓城に我が軍勢20000が向かったらどうなる?

逃げる兵士が続出して押しきられて城は陥落するだろう?

俺が最初からその油断を狙っていたら梁田殿、どの様に対処する?」


梁田直助の顔から血の気が引きました。

昨日引き上げて来た千葉勢、原勢も、本日帰還した大掾勢から立花将広が戦闘停止、和平を望んでいると聞いており、迂闊にも信じて交渉に来ていました。


立花将広が従者に目配せすると清酒と漬物が運ばれて来ました。


「梁田殿、この酒は青梅の大吟醸酒、奥多摩の雫でござる。漬物を摘まみながら呑むと最高に旨いぞ!」


酒が好きな梁田直助は立花家の酒の旨さを知っており、我慢出来ず、やけくその気持ちもあり呑んで見ました。


「旨い!大吟醸酒?立花殿、初めて呑む旨さに驚きました!」

立花将広は梁田直助が酒好きと聞いて呑ませて本音を引き出す事を企みました。

暫く呑み進むと次なる手を打ちます。


「そうだ、梁田殿、立花家が帝から戴いた綸旨、朝廷から戴いた宣旨の写しをご覧にいれよう!」


近習から書状を受け取り、梁田直助に渡しました。


綸旨、宣旨の書状を手に取り、一礼して読み始めました。

立花家は数百年間、帝領、近衛家、九条家の荘園を守り、年貢を都に届け、貢ぎ物を贈り続けた功績を称える内容と、立花家に民の安寧と関東静謐を託す事が書かれていました。


足利幕府は崩壊、細川家、山名家が管領職や最高権力を巡る戦いを続け、将軍は都から追放され、近江国、伊賀国を彷徨い、頼れる者がおらず、古河公方家、関東管領家が家督相続の度に関東争乱の元凶となり、信頼するに能わず、帝と朝廷は立花家に近衛中将府の開設を許可を与え、民の安寧と関東争乱の静謐を託すと書かれてあり、古河公方家、関東管領家を成敗して構わぬと書かれていました。


「立花家に帝、朝廷から……近衛中将府…

数百年の間、帝領、近衛家、九条家の荘園を守り続けた?

立花殿?噂に過ぎぬと軽んじていましたが、先祖代々、数百年も年貢と貢ぎ物を届けておられたとは!

帝からも朝廷からも、古河公方家、関東管領家は信頼を無くしていたとは!……

成敗して構わぬと……

賊軍の扱い?」


「梁田殿、この書状の内容は立花領、同盟大名家の領内で紙芝居を通じて公開しています。

帝、朝廷から民の安寧と関東静謐を命じられ、近衛中将府の開設を許された官軍です。

下総公方家も正義の官軍に入りませんか?


貴殿の兄上は古河公方家の実質的指導者、最高権力者、筆頭宿老、梁田高助殿!

協力して頂けるなら貴方が古河公方家の筆頭宿老になれる様に尽力致しましょう。

ぶはははは!、酔っぱらいの戯言と聞き流して頂いてくだされ!」


「立花殿、私は高望みは致しませぬ、酒の席の戯言として聞き流しますぞ!」


既に2人はかなり酔っぱらっていました。


「ぶはははは!戯言でござる。

さて、酒に付き合って頂いたお礼に先程の酒井一族の大網城はお返し致しましょう。

但し、地域的に国境が入り組む場所になります。上総公方家、下総公方家、千葉家配下、酒井一族の領地の確定が定まるまで、互いに停戦する事にしましょう。

細かい国境の確定は互いに事務方の家臣に任せ、穏便に決めては如何かな?」


「立花殿!感謝いたします。大網城が戻るなら酒井一族、千葉家にも顔向け出来ます!」


諦めてていた大網城が返還が決まり、梁田直助の面子めんつが保たれる事になりました。泥酔軍師、立花将広の魔術が掛けられた事に本人はまだ気が付いていませんでした。

米20俵、酒樽5つを手土産に提供され、さらにご満悦、満面の笑みで対面を終了しました。交渉内容は書状にして確認、署名されて大筋で合意が成立ました。

梁田直助は泥酔しながら交渉が上手く成立したとご機嫌で小弓城に戻りました。

市原城に残した莫大な兵糧から米20俵が届きました。1俵で300名の兵士の1日分の食事が賄えます。

20俵で6000の軍勢の1日分の食事が賄えます。空腹だった兵士達は腹を満たし、清酒が配られました。

濁り酒しか知らぬ兵士達は立花家が提供した清酒の旨さに驚愕しました。


心の隙間に上総公方家、立花家の陣営に仕えたら旨い酒が呑めると、邪念がちらついた者が少なからず増えました。


─立花将広、奥住利政─


「将広様、見事に罠を仕掛けましたな?

指示された通り、先日、千葉勢と原勢から預かった正木一族と酒井一族から選ばれた4名に交渉の様子を見せておきました。」


「ぶはははは!、あの様子を見たら、梁田直助が立花将広に取り込まれたと感じるかもな?

彼らには好きなだけ旨い飯と酒を呑ませてやれ!半分本気で味方に誘い、ダメ元でも梁田直助に悪い噂が立てば下総公方家、千葉家、古河公方家の関係に亀裂が入る隙が出来るだろう。

花が咲くか否か不明だが、種を撒いてどーなるかな?」

立花将広、泥酔軍師の撒いた種は花が咲くのか咲かぬのか?

敵方の疑惑、内紛の種を撒きましたが、成果は如何に?



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