1546年(天文15年)4月11日、立花軍が攻勢に転じ、立花将広の采配が光ります。
古河公方軍は早暁から退却して来た味方を収容、軍勢の再編を計りました。
立花軍は再編する余裕を与えず、早朝から永田城の古河公方軍陣地に迫りました。
1546年(天文15年)4月11日
─房総半島、本納城─
前日、本納城を四方向から攻撃した古河公方軍は激戦の末敗退、日没した闇の中を2キロ先の永田城方面に敗走しました。
立花軍の主将、立花将広は追撃を一旦引き上げ、兵士を集めて追撃部隊を編成、多数の篝火を用意して出発させました。
追撃部隊は総勢1000、本納城の兵士が加わり、道に詳しい案内人が多数参加します。
暗闇の中、永田城を目指す古河公方軍兵士を四散させて兵力結集を阻害するのが目的です。100名の部隊が10部隊に別れて古河公方軍の敗走した道筋を辿りました。
太鼓を叩き、闇の中、敵兵が隠れそうな場所に火矢を放ち、雑木林を燃やし、鬨の声を挙げて古河公方軍の兵士に恐怖を与えました。
千葉家筆頭宿老、原胤清が討ち死にした事、明日は永田城が総攻撃を受けるから逃げろと闇の中へ声を掛け続けました。
─4月11日早暁─
─永田城、古河公方軍─
本納城の戦いに敗れた古河公方軍の軍勢は暗闇の中を北へ永田城へ退却しました。
篝火の数が足りず、僅かな篝火を頼り大軍が退却するには無理がありました。
永田城の陣地から多数の篝火を灯し、迎えの軍勢を出しました。
しかし、闇夜で立花軍に追われて多数の兵士が退却する集団から脱落しました。
─午前5時過ぎ─
2キロの距離を退却して永田城の陣地に辿り着いた軍勢は夜が明けると続々と増えました。退却する集団から脱落した兵士の多数は闇夜で動けず、立花軍の追撃部隊に追われて散り散りになりました。
夜明けになり、やっとの思いで永田城の陣地に辿り着きました。
古河公方軍主将、一色直頼は佐竹義廉、結城政勝と兵士の収容と再編成に、徹夜で当たっています。負傷者の治療に、食事の手配に慌ただしく指示を出しました。
兵士達は昨日の昼以来空腹に耐えながら退却しています。立花軍が攻撃して来る前に食事を取らせて体力を回復させる必要がありました。
混乱する永田城に立花軍から軍使が到着しました。千葉家筆頭宿老、原胤清の首が届きました。
確認すると確かに見覚えのある本人に間違いありません。
軍使はこれから間も無く総攻撃すると予告して去りました。
立花家の軍使が原胤清の首を届け、総攻撃の予告をした事はたちまち古河公方軍の兵士達に広まりました。
─本納城、立花軍本陣─
永田城に原胤清の首を届けた軍使から早馬を飛ばして伝令の兵士が戻り、情報が入りました。
永田城には闇夜に迷った軍勢が明るくなり漸く帰還して混乱中、負傷者多数あり、昨日昼以来空腹の兵士多数ありと、絶好の状況にありました。
立花将広は伝令の兵士から敵方の兵力は推定8000と聞き喜びました。
永田城攻略部隊は新納勢5000を東から進撃させました。
南から里見勢3000、後詰めに立花将広の軍勢4000が進みました。
永田城の古河公方軍は城の南側に布陣しています。西から佐竹勢、真ん中に結城勢、東に一色勢が並んでいます。
─午前6時過ぎ─
東から接近する新納勢は太鼓を叩きながら進みます。
「エイ!トウ!エイ!エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!エイ!トウ!エイ!」
南から接近する里見勢も太鼓を叩き前進します。
「エイ!トウ!エイ!エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!エイ!トウ!エイ!」
古河公方軍は軍勢の再編成の最中です。昨日の昼から空腹を抱えた多くの兵士達は用意された食事を口にする間も無く戦いに巻き込まれました。
前日まで永田城の陣地は出撃する基地であり、防御力を考えた陣地ではありません。
東から進撃する新納勢5000に一色勢4000が立ち向かいますが、統制が取れません。弓矢の連射を浴びて崩れ、長槍部隊に叩き潰され、一気に押し込まれました。
永田城の中央に布陣している結城勢1000には里見勢3000が一気に突入しました。
里見勢の後から進む立花将広の軍勢4000は佐竹勢3000を前にして距離を保ち対峙しました。
佐竹勢の大将、佐竹義廉に軍使を派遣しました。佐竹義廉は立花将広の使者と対面します。
─佐竹義廉、使者、横山典弘─
「我が殿、立花将広は立花家当主、立花義秀様の弟であり、外交を担当しております。
我が殿が申されるに、立花家と佐竹殿は互いに源氏の血筋を繋ぐ一族であります。
過去から現在に至るまで戦う理由など皆無、
我が殿は佐竹殿と戦わぬと申され、にらみ合いを所望致します!」
「なんと!?使者殿?にらみ合い?」
「はい、我が殿は佐竹殿と戦う意思はございません。されど佐竹殿の立場を考え、裏切りを勧める事も致しませぬ。
にらみ合いをしてる間に、古河公方家の軍勢が破れても仕方無しと思います。」
「待て!使者殿、立花家はこの先、佐竹と手を結ぶ考えが有るのか?」
「はい、我が立花家は帝から綸旨を戴き、朝廷から府中に近衛中将府の開設を許され、、古河公方家、関東管領家が乱す関東を静謐に導く様に宣旨を下されました。
立花家は佐竹殿に支援を賜りたいと考えております。」
「使者殿、協議する故、暫し待たれよ!」
佐竹義廉は側近と協議しました。
議論の末、結論は裏切りの汚名を被るより、戦う事に決めました。
佐竹義廉は席に戻りました。
「使者殿、立花家の気持ちは有難いが、我らは味方を裏切り、汚名を被る事は出来ぬ。正々堂々戦う所存である。
立ち去られよ!」
「義廉様!古河公方軍の宿老、一色直頼の軍勢と臣従する下野国の大名、結城政勝の軍勢が間も無く敗走します!
永田城の城兵も逃亡致します!
そこで佐竹勢に永田城を預かって頂きます。預かって頂き、我が軍勢は本納城に撤退します。
如何でしょうか?
我が殿、立花将広は南に転進して里見家の反乱軍を討伐致します。
暫くの間、永田城を預かって頂きたく、お願い申し上げます!安全は立花家が保証致します!兵糧も融通致します!」
「なんだとぉー?本気なのか?立花家の泥酔軍師、立花将広は破天荒だと聞いていたが、大胆にも程があるぞ!
わかった!使者殿、同意致す!にらみ合いに付き合えば良いのだな!?
立花将広殿を信用する!と伝えてくれ!」
佐竹家の次席宿老、佐竹義廉が提案を受け入れました。
使者が立花将広の元に帰り、佐竹義廉が同意したと報告しました。
─立花将広、横山典弘─
「殿!佐竹義廉様がにらみ合いに同意なされました。古河公方軍を撃退した後、永田城に佐竹勢に預ける事も同意して頂きました!」
「典弘!見事に口説いてくれた!褒美は弾むぞ!鯨の食べ放題なんてどーだ?(笑)」
「殿、本気にしますぞ!房総に来たなら鯨を食べたいと思っておりました。
横山一族で食べ尽くして見せますぞ!(笑)」
「ぶはははは!里見家に鯨を注文するぞ!
さて、同意が取れたなら古河公方軍から大きな戦力を排除した事になる!
古河公方軍を粉砕するぞ!」
立花将広は佐竹勢とのにらみ合いの2000を残し、結城勢の陣地に軍勢1000、一色勢の陣地に軍勢1000を突入させました。
攻勢を続けていた古河公方軍が守勢に立たされました。
立花将広の采配で古河公方軍が翻弄されます。
立花軍が攻勢に転じました。




