1546年(天文15年)1月上旬、忙しい正月を過ぎて府中の街は活気に溢れます。
正月から初詣の庶民が集まる府中は更なる発展を遂げました。例年よりも立花領の外から多数の民が集まりました。救済を求めて難民が救済府にやって来ました。
1546年(天文15年)1月上旬
─府中─
例年に増して賑やかな正月の5日間は立花家の行事が立て込みました。
立花家当主、立花義秀は大國魂神社に反省修行に出していた嫡男、次期当主、義國を年末に呼び戻し、酒乱で騒動を起こした事を許し、年末から年始の行事に参加させました。
怪我をさせた松千代に対面して謝罪させて親子の和解をさせました。
松千代は父、義國の手を取り、にっこりして笑い、「父上、仲良しになりましょう。」
松千代から救いの手を差し延べました。
不器用な義國はまともな対応が出来ぬと察した松千代から歩み寄りました。
事情を知る者達はホッと胸を撫で下ろしました。
例年より新年の来客が増えて同盟大名家、神社、寺院関係者に大商人が府中城に多数来訪して街の宿、飲食店が賑わいました。
大國魂神社周辺には賑やかな屋台が並び、たこ焼き、焼そば、焼きうどんの香ばしい匂いに誘われ多数の家族連れが集まります。お焼き、焼き団子、ホカホカの肉まん等安くて美味しい食べ物が初詣の庶民達に振る舞われました。正月三が日に初詣が集中し過ぎない為に4日から10日の屋台は豚汁、ラーメン、ちゃんこ鍋が無料で振る舞われ、生活が苦しい庶民には冬着等の防寒着や防寒具、米や味噌が無料で与えられました。
立花領内や同盟大名家の貧しい庶民はこの期間中に府中を目指しました。
立花領内では人身売買、奴婢を禁じています。同盟大名家にも禁止する様に推奨しますが、徹底は出来ません。
正月の4日から10日の間に人身売買、奴婢等の身分の人々が府中に救いを求めてやって来ます。大國魂神社に救護申請すれば、大國魂神社と立花家が救います。立花家の領内にも人身売買、奴婢の存在は隠れて残り、彼らが救いを求めてやって来ます。
3年前、松千代の提案で年末年始の紙芝居で立花領から同盟大名家の領地にて人身売買、奴婢の境遇から抜け出したい庶民に向けて大國魂神社にお参りすれば救済すると宣伝しました。今では敵対地域の庶民、武士までもが救済を求めて家族連れで府中に集まる様になり、大國魂神社に救済府を設置して受け入れています。
救済府で受け入れた人々は個人や家族ごと保護され、農民、町人、商人、武士など各々に見合う施設に入り、立花領内で暮らす為の予備教育を受けます。衣食住無料で無学であれば最低限の文字や足し算引き算を学び、立花領内の基本的な法律を学び、適正に合わせた環境を提供します。
立花領内は移住者用に農地、商家、工芸、学問、大工仕事、工事関連、常備軍兵士など生計が成り立つ環境を与えます。
─立花義秀、鹿島政家─
「殿、今年の救済府に多数の人々がやって参りました。敵方の間者も入っておりましょうな?」
「まぁ内情など知られて困る事は無い、立花家の真似をしたいならすれば良い、結果として庶民が幸せになればそれが一番良い。」
「真似は難しいでしょうな?人身売買、奴婢等の制度の撤廃は難しいでしょう。財力と背後に朝廷を味方に持ち、帝から綸旨を戴く信頼を戴きましたからなぁ?古河公方家と関東管領家は面目を失いました。」
「政家、松千代が紙芝居を考え、立花領内から敵にも宣伝するやり方を作った。
虎護符、人生ゲームを考えて海上交易の販路を爆発的に拡大、立花家の財力が数倍に拡大した。ラーメン、焼そば、たこ焼き、お好み焼き、餃子、麻婆豆腐など新しい食事を提案して多数の飲食店を育成した。
紙芝居のついでに大國魂神社の護符、御札、お守りを購入させて、これを持ち込み、府中にお参りに来れば救済すると宣伝させた。
これで府中に多数の人々が集まり、立花家の充実に繋がった。
大國魂神社の大神様だけで無く、秩父の神様にも愛されておる。
松千代の成長がさらに楽しみだなぁ」
「殿、松千代様が居らねば3年前の1月に品川城を奪われ、3月には滝山城も奪われて4月には府中が落とされて滅んでいたでしょう。全て松千代様が大國魂神社の大神様の夢のお告げを知らせて戴いたお陰でございます。」
「そうだな、政家、松千代頼りだな?
俺は3歳まで神様を逢えたが、松千代はずっとこのまま成長しても神様に逢えるのだろうか?」
「殿、松千代様があと10年神様に逢える様なら、立花家は関東の静謐を完了出来るかもしれませんな?」
「ぶはははは!関東制圧か?あるかもな?」
「殿、今年は北武蔵の鉢形城を攻略して西を堅め、川越城を攻めれば古河公方家に組する三大勢力の一つ川越上杉家を壊滅出来ましょう。」
「そうだな、こちらが考えてるなら、古河公方家も想定して対策を取るだろう。こちらはそれを上回る策で挑むとしようぞ!
さて、上総公方家の支援はどうなっておるか?」
「はい、上総公方家の支配地の城の修築や本拠地、上総城の拡張工事が順調に進んでおります。立花家の駐留軍の為の本拠地、南上総城の新築、高坂城、南岩崎城の拡張工事が順調です。4月には第一段階の工事は完了、駐留軍は6000が常駐出来ます。
第二段階の工事に入り10月には完了します。完了すると10000の軍勢が駐留可能になります。上総公方家の椎津湊は第一期工事が4月には完了、使えるようになります。二期工事が10月には終わり漁船や商船の出入りが増えます。里見家の木更津湊の拡張工事も4月には完了する予定でございます。」
「そうか、政家、4月には上総公方家が立ち直り、守りを固める事が出来るみたいだな?
今年は地固めに専念、来年辺りに上総公方家の失った旧領回復の戦いを始めても良かろう。」
「はい、殿は慎重でございますな?今年はまず、鉢形城と川越城の攻略が優先ですな?」
「まぁな、秩父藤田家の救済の為に鉢形城を攻略するつもりだ。川越城は川越上杉家が和議の約定に背き、敵対して戦いを仕掛けた事で大義名分が成立する。」
「それで、殿は鉢形城を攻略したら立花家の物に致しますか?それとも、秩父藤田家に与えますか?」
「鉢形城は秩父藤田家に与える。秩父の様に鉢形の街を賑やかにしようじゃないか。先月、鉢形城を脅しに参った時に思いの外平地に恵まれ、田畑に街作りに向いてるのがわかったからなぁ。これを秩父藤田家に与えて開拓すれば楽しみになるぞ!」
「はい、殿がお楽しみなるなら、それで宜しいかと思いますが、無欲でございますなぁ?」
「ぶはははは!俺はなぁ、大國魂神社の大神様に卑怯な振る舞いをしないと誓っておる!
立花家は正々堂々、大國魂の大神様に魂を捧げて生きるのだ!」
「はい、それでこそ我が殿!我が立花家にございます!」
宿老、鹿島政家は頭を下げて義秀に仕えて良かったと思いました。
立花義秀と筆頭宿老、鹿島政家は二人だけの会話で今年の目標を語りました。
急がず欲張らず、堅実に方針を考えていました。




