1545年(天文14年)12月中旬、立花家に後継者の不安が生じました。
立花家次期当主、義國の泥酔事件は府中の街に噂になりました。
松千代は負傷した侍女をお見舞いします。
1545年(天文14年)12月中旬
─府中─
次期当主、立花義國が松千代に怪我をさせた事で府中城内は重苦しい雰囲気になりました。
事件の翌日に義國は大國魂神社のご老公様に預けられ、指導を受ける事になりました。
義國の小太刀を受けながら松千代を守った侍女の二人は傷口が塞がるまで安静を必要とされ重傷です。鎖帷子を仕込んだ装束に救われました。
松千代は首、背中、腰に痛みがあり3日も寝込みましたが快方に向かいました。
松千代はまだ痛みが残る体で負傷した侍女を見舞いました。真樹と雪、二人が安静にしてる部屋に入り、寝ている二人に声を掛けました。二人の手を握り、助けてくれた事を感謝してほっぺにご褒美のキスをしました。
まだ起きられぬ二人の傷を心配します。
「ねぇ、もしも真樹と雪が働けなくなったら松千代のお嫁さんにするからぁ、しんぱいしないでね。」
幼い松千代の心遣いに二人は泣きました。
側に付き添う二人の松千代の護衛の侍女も涙を堪えきれませんでした。
松千代は二人にゆっくり治す様に告げると祖父、義秀に逢いに行きました。
─立花義秀、松千代─
「お爺、元気になったょ。」
祖父に抱かれ、にっこり笑顔を見せました。
「おぉ、松千代、良くなってよかったなぁ。
お前の父はお仕置きに大國魂神社のご老公様に預けて鍛え直して貰ってるから二度と手を出させないぞ!」
「お爺、ありがとう。でもねぇ、あの父は前世と同じ、泥酔するとたまってる不満が爆発しちゃうから治らないとおもうょ。」
「あぁ困った奴だわなぁ、酒癖さえ良ければ後継者にはまぁ合格なんだがなぁ。」
「お爺、父上は子供過ぎるところがあるからダメなの、自分が一番じゃないとダメだから危ない考えなの。あの時は母上と松千代が甘い甘いして仲良しだから怒ったんだょ。」
「そうかぁ、松千代は良く我慢したなぁ、偉いぞ!」
「お爺、後継ぎもんだいでもめたらダメだからね、古河公方家、前橋上杉家、川越上杉家もみーんなそれで内輪揉めで血をながしたでしょ?お仕置きが終わったら松千代は父上をゆるしてあげるょ。」
「なんと、松千代、そこまで心配してくれておるのか?ぶはははは!教えられたぞ!」
しばらく祖父と孫の楽しい会話が続きました。松千代が部屋から去ると筆頭宿老、鹿島政家がやって来ました。
─立花義秀、鹿島政家─
「殿、府中の街で義國様が松千代様に怪我をさせた事が噂になっております。
義國様の廃嫡まで噂が広がっております。」
「ぶはははは!たった今なぁ、松千代に注意されてなぁ、後継者問題で揉めたら、古河公方家、前橋上杉家、川越上杉家みたいに内乱で弱体化すると嗜められたぞ!
俺も少しだけ、廃嫡して次男の義弘を教育する事を考えてしまった。松千代に言われてやっと正気になったほどだった。」
「殿、松千代様を後継ぎにしてしまったら良いかもしれませんなぁ。いや、これは半分本気で半分冗談でございます。」
「政家、それが出来るなら幸せだがな、ぶはははは!さすがにそれは無理だな、しかし、任せてみたい気持ちもあるのは確かだなぁ。
義國は再教育するにして、後5年先には家督を継がせ、松千代の成長を見守りたいと考えておるぞ。」
「はい、悪い噂が蔓延りそうですから、紙芝居で情報を伝えては如何でしょうか?」
「そうだな、隠すよりも公開してしまうとするか?それが一番スッキリするだろう。」
鹿島政家の提案から紙芝居での事件公開が決まりました。鹿島政家が中心になり制作され、義秀が承認して翌日には公開されました。
泥酔した義國が松千代を怪我をさせ、侍女二人に怪我をさせた事実を発表、義國は大國魂神社で反省する為、修行中とありのまま公表しました。
松千代が冷静に祖父にアドバイスします。
後継者の不安から揉めたらダメだと諭します。
立花家は後始末に紙芝居を利用して情報公開する事を決めました。




