1545年(天文14年)1月、新年が開けました。
松千代が何度も危機を知らせて勝ち抜いた1年が終わり、新年を迎えました。
1545年(天文14年)1月
正月の立花家は元日から5日まで行事が続きます。立花家当主、義秀は多忙を極めます。行事以外にも対面希望の来客が絶えず、面倒なので弟の泥酔軍師、立花将広を代理に仕立て、来客を酔わせて撃退します。
5人の宿老達が揃うのも久し振りでした。筆頭宿老、鹿島政家は府中城にて、当主立花義秀の参謀役を勤めています。
次席宿老、本多広孝は松戸城で江戸太田家、船橋高城家を支えています。
佐伯勝長は府中にて近衛中将府、大使館建設と運営の責任者になっています。
奥住利政は上総国に赴任して南上総城の築城と上総公方と里見家を支える任務に就いています。
瀬沼利勝は町田の芹ヶ谷城の築城と相模川、境川から用水路を引く工事に就いています。
久々に府中城に揃い、5日間の正月行事を乗り切りました。
5人の宿老達は正月の行事が終わり、来客が途絶えると互いに近況を語りながら酒を酌み交わしました。
1月6日宿老達5名は当主義秀から朝食に招かれ正月行事を乗り切り、労いの朝粥を腹に掻き込みます。
松茸の端切れを乾燥させて粉にして塩と乾燥させて粉にしたワカメを混ぜた松茸塩を朝粥に振り掛けて食べました。
松茸は府中で人気の高級品です。領内では町田、八王子、津久井で採れますが、大石家のあきる野、桧原、三田家の青梅、奥多摩で採取された物が多く流通します。最近は武田家が信濃にて採取した松茸を大量購入しました。
義秀がニヤリとします。
「どうだ?松茸塩って旨いだろう?」
当主の声に5人が「旨い!」と声を揃えます。
「乾燥させて粉にした信濃産の松茸に横浜とで採れた塩と、小田原の乾燥ワカメを粉にして混ぜた旨さだ!これは武田家、北条家、立花家の産物を混ぜた朝粥だから旨いのだ!」
「近衛中将府では各同盟大名家と政治的な繋がり、軍事的な繋がり、商業物流の繋がりを通じて関東に静謐をもたらしたいのだ。」
宿老達が成る程と頷きます。
「近衛中将府の中の大使館で各地の産物を府中に集めたり、同盟大名同士、陸路や海路で運ぶ物流の相談をする。荒川、江戸川、多摩川も船便を利用して海と川を結ぶと物流が活発になり、関東の民の暮らしも良くなるだろう。」
宿老達に漸く近衛中将府の本当の意義が解って来ました。
そこに、松千代が現れます。
「お爺ぃー!」
スタスタ走り、義秀の胸に飛び込みます。
「それでさぁ、大使館ちかくに市場つくってお店を出すのがいいよ!同盟してるみんなの店を出して買い物してもらう!食堂とか、屋台とか、賑やかにして府中に住んでる大人も子供も買い物して食べて、遊園地みたいにおもしろい場所にするのがいいよぉー!」
5名の宿老の頭の中に大きな市場のイメージが湧きました。
義秀が脳内翻訳機能をフル回転します。
「松千代?あっ!?ショッピングモールだなぁ!!大型商業施設?遊園地みたいのを混ぜて作れば人が集まるんだよな?」
「お爺当たりだょ!」
「にぎやかにしたら、遠くから集まるよ!紙芝居で宣伝するんだよ!」
「ぶはははは!そうか!松千代!それだ、紙芝居で宣伝して大勢呼び込めば良いのだな?!」
「これなら近衛中将府の硬い印象が和らぐぞ!」
「お爺ぃー!それからね、街の中心から少し離れるから街のあちこちから無料の馬車を出してあげる!市場を開く時だけやるなら出来るでしょ?」
「そうだな、常設しなくても、月に数回など決めれば同盟大名の負担も楽だよな?松千代凄いじゃないか?ぶははは!お前は俺の軍師だな?」
こんな感じで近衛中将府の隣接地に大型商業施設が作られる事になりました。
新年の立花家は毎回大忙しでした。
立花家の宿老達の前で松千代が新たな提案を出しました。祖父の義秀は大喜びでした。
近衛中将府の開設が進みます。




