1544年(天文13年)12月中旬、敵対勢力の様子
立花家に帝の綸旨が与えられ、朝廷から近衛中将府開設許可が降りて、敵対する大名家が各々の反応をしめします。
天文(13年)12月中旬
─古河城、古河公方家─
─足利晴氏、梁田高助─
「高助、立花家が帝から綸旨を戴いたらしいな?なぜだ?足利将軍家から、幕府から関東の事は古河公方家が仕切る事を任されているんだぞ!立花家に関東を任せるなんて噂を聞いたぞ!」
「公方様、立花家は長年に渡り領内の皇室や、公家の荘園を守り、年貢を上方に送っていると聞いております。その縁を上手く使ったのでしょう。」
「ならば、本当に関東を任せる綸旨なのか?」
「公方様、上方は将軍家が都を追われ、近江の坂本や朽木に匿われてるご様子です。誇大な報告で関東の情勢を語り、上手く立ち回り手に入れたかもしれません。朝廷は幕府や将軍家を見下しております。」
「高助、立花家は近衛中将府を開くとか。近衛中将府とはなんだ?」
「公方様、おそらく、源の義家公が奥州征伐の時に開いた鎮守府将軍府の故事に習い、臨時の行政を仕切る役所みたいな組織の事かと思われます。立花家は代々、家督を相続すると近衛中将の叙任を受けております。その立場を利用したのでしょう。」
「反則だろうが?」
「公方様、反則が銭の力で正義に化けたかもしれません。」
─関東管領、前橋上杉家─
─上杉英房、長尾憲長─
「義父上、立花家が帝から綸旨を戴いたとか?」
「英房殿、立花家は銭で買ったに違いない。気になさるな。」
「朝廷からも関東の争乱を押さえる命令を受けたとか?噂をききましたが?」
「婿殿、銭の力で正義だの朝廷の貧乏公家を誤魔化したに違いない。」
「義父上、将軍が都から追い出されたと聞きましたが?」
「それは立花家が流した情報だろうから信じる必要は無し、婿殿、立花家に騙されてはならんぞ!」
「あぁ、偽情報ですか?」
「そうだ、足利将軍家の権威を蔑ろにしやがる、敵の罠に落ちてはならんぞ!」
否定する憲長の言葉に疑念を持ちながら、英房は反論せずに大人しく黙りました。
─川越上杉家─
─上杉朝定、長尾信忠─
「信忠、立花家に帝から綸旨が下されたらしいが?帝からも朝廷からも関東を任せるとのお墨付きを戴いた噂があるのだが?どーなんだ?」
「殿、立花家が帝から綸旨が下りました。関東静謐の為に尽くす事、朝廷からは近衛中将府などと、朝廷公認の行政府です。立花家と同盟してる大名家が結束すれば大きな力になります。」
「信忠、立花家は最近、武田家と北条家まで同盟したじゃないか、立花家が次に狙うのは川越じゃないか?」
「殿、北条は今川と戦う為に背後の立花家と結びましたが、武田家と同盟せず、協力を拒否しました。
武田家は今川と同盟しています。立花家と結んだのは背後を安全にして信濃国を奪う為です。」
「武田も北条も立花家から要請されても援軍を出す余裕は無し、援軍を貰いたいと考えているでしょう。」
「それなら余り影響は無いのか?」
「殿、武田、北条は気にしなくて平気ですが、立花家と敵対してる最前線は川越城の我々です。古河公方家、前橋上杉家の援軍が無ければ川越を狙われたら勝てません。」
「それなら立花家に同盟に入れて貰うのは無理か?」
「殿、我が関東管領、川越上杉家は足利将軍家の重臣です。幕府の重臣が裏切るなんていけません!」
「わかった、諦める。」
川越上杉家の上杉朝定の本心は立花家の同盟に入りたい様ですが、譜代の重臣が当然許しません。
立花家は秋口から軍事行動を控えて内政に集中しました。
間も無く新年を迎えます。




