1544年(天文13年)5月下旬、宿老長尾憲長、権力強化に成功、前橋上杉家の最高権力者になりました。
長尾憲長は権力を固める為に養女を上杉英房に嫁がせてました。
次に当主を巧みに丸め込む策を用意していました。
1544年(天文13年)5月下旬
─前橋城─
─前橋上杉英房、長尾憲長─
「義父上、婚礼も終わりました。盛大に祝って貰い、有り難うございます。」
「英房殿、長尾一族で最高の美女を選び、正室に致しました。貴方を越後から呼び寄せたのは関東管領家を有るべき姿にする為であります。」
「実は、朝廷から勅命を頂き、古河公方家に関東一帯を統率出来なければ、関東管領家が代行する様にお言葉を頂いております。」
「その為には越後国の財力と軍事力を借りるしかありません。」
「越後国主の力添えを頂く為に英房殿を預かりました。ご無礼ながら関東管領家、前橋上杉家当主を演じて頂きます!」
「義父上?当主を演じる?」
「はい、私共長尾一族は勅命を頂き、動いております。その為に、長尾憲長は悪党を演じております。勅命を遂行する為に鬼となり、家中で従わぬ者を容赦無く粛清して参りました。」
「英房殿は聖人君子であって頂きます!私は鬼であり、悪党を演じて関東管領家を立て直します!」
「義父上、預かると申されましたが、5年演じたら?それとも10年当主を演じたら越後に返して貰えますか?」
長尾憲長の悪評を知っているので悪党なのか、悪党を演じているのか英房は探りを入れました。
「英房殿、5年演じて、飽きたら越後にお返しいたします。しかし、残りたくなったら何時までも前橋に居てくだされ!」
長尾憲長は悪党を演じてると言ってますが、英房から見てもやっぱり悪党に見えました。
「義父上を信じてまず、5年演じてみましょう。」
「英房殿、有り難うございます。それでは、長尾憲長はさらに悪辣な悪党にるなる故、貴方に対して傲慢な態度や発言を致す時がありますが、これは演技と理解して頂きます。」
「解りました。義父上の演技に文句は言いません。」
「英房殿、他人に見せる為でもある故、腹が立つ事もありましょうが耐えてくだされ。」
「はい、義父上、心配いりません。」
英房は巧みに追い込まれた事を理解しました。抵抗すれば粛清されるかもしれません。
勅命の話も疑わしいと感じています。素直な世間知らずの姿を演じれば生きて越後に帰れると思いました。
長尾憲長は勅命だからと嘘を並べて丸め込みました。
思い通りになる当主なら良いのです。
長尾憲長の養女が当主に嫁ぎ、娘婿を丸め込む罠に嵌めました。
悪辣非道の宿老が前橋上杉家を操ります。




