1544年(天文13年)4月29日、長尾憲長は山内上杉家の当主の入れ替えを決行します。
長尾憲長は山内上杉家当主を越後国主の弟の上杉英房に継がせる事を梁田高助に伝えました。
梁田高助が反対しない様子に黙認したと判断します。関東管領職と家督相続を認める証書を作り古河公方家の署名を求めて梁田高助に託します。
隠居させられる上杉憲政はどうなるのでしょうか?
1544年(天文13年)4月29日、午後~
─岩槻城─
─古河公方、足利晴氏、梁田高助
「公方様、関東管領、山内上杉家の当主が交代します。越後国主の弟君、上杉英房殿が家督を継承します。」
「何ぃー!?なんでだ?憲政殿はまだ21歳だぞ!隠居する年齢じゃないだろう?」
晴氏の疑問に答え、高助は長尾憲長から聞いた事を説明しました。
晴氏は血を流す抗争になる事を 心配します。
梁田高助は山内上杉家に今回の様に越後からの加勢が期待出来るから黙認すると諭します。
「そうか、憲政は隠居か?」
「はい、越後にて隠居します。」
「そうか、仕方あるまい、」
梁田高助は長尾憲長から渡された関東管領職と山内上杉家の家督相続を認める証書を見せて晴氏に署名、捺印をさせました。
間も無く上杉憲政の運命が変わります。足利晴氏も家督継承する際に父、高基と親子の抗争となり、怖い思いをした経験があります。自分の身に波乱が無い事を祈りました。
上杉憲政は岩槻城内で長尾憲長に呼ばれて部屋に入りました。
憲長はいきなり刀を抜いて首に刃を突き付けました。
今ここで死ぬか、剃髪するか2つに1つを選べと迫りました。
大柄な兵士数人が上杉憲政の身体を押さえつけました。
仕方なく剃髪を選びますが、剃髪は仏門に入る事を促し、隠居させられると悟りました。
「何故だ?!憲長!俺が邪魔なのか!?」
「そうだ!弱すぎて邪魔になった!
だから利用価値がある越後の若君に来て貰ったのだ!」
「仏門に入れてやるから大人しく剃髪して隠居しろ!」
「剃髪はしたく無いぞ!古河公方様に訴えるぞ!」
上杉憲政は長尾憲長の事が怖いのにこの時ばかりは抵抗します。
「ぶははは!古河公方、足利晴氏、宿老梁田高助の2人から承認された事だから今さら遅い!」
「死にたく無いなら剃髪しかないだろが!」
「隠居して越後で楽隠居させてやるから良いだろう。」
「抵抗するならお前の母や弟がどんな事になるかな?」
一方的に突き付けられた恐怖に上杉憲政は涙が溢れました。
剃髪して隠居するしかありませんでした。
越後国、林泉寺の僧侶が上杉憲政の頭を剃髪しました。
史実通りなら上杉謙信が帰依する曹洞宗のお寺です。
史実では上杉憲政が長尾政虎を養子にして山内上杉家の家督と関東管領職を譲ります。朝廷からも認証されて上杉謙信が誕生しますが、上杉憲政が隠居すると歴史の流れが大きく変わりそうです。
剃髪して法衣に着替えると憲政は鏡を渡され、坊主姿を見せられて涙を流します。
やがて岩槻城本丸にて古河公方、足利晴氏に隠居の挨拶に出向きました。
本丸の大広間に足利晴氏、梁田高助、小山、結城、宇都宮、那須、小田、真壁、野田、一色、多賀谷、等下野、常陸の諸大名、上杉英房と越後国の武将達が集まりました。
長尾憲長から剃髪した上杉憲政が隠居して越後国主、上杉房朝の弟、上杉英房が新たに関東管領、山内上杉家の家督を相続すると挨拶をしました。
隠居した上杉憲正は曹洞宗の僧侶から禅林の名を与えられました。
古河公方、足利晴氏から家督を相続した上杉英房に関東管領職と山内上杉家相続の証書を与えました。
隠居した憲政は越後勢に連れられて越後国に向かいました。
新当主、山内上杉英房と長尾憲長は憲長の居城、館林城に向かいました。館林城に凱旋してから山内上杉家の本拠地、前橋城に向かいます。
古河公方、足利晴氏も岩槻城から出発しました。
古河公方軍各軍勢は久々に帰国の道を進みました。
ついに上杉謙信に繋がる人物が歴史の流れから外れました。
将来、武田信玄と上杉謙信は川中島で戦うのでしょうか?
上杉謙信の関東管領就任が消えて関東遠征が無くなり、武田信玄と最終決着が着く?
もしかして早期に上洛するかも?
さて、将来どーなるんでしょうか?




