1544年(天文13年)4月21日、太田資正が立花家を裏切る決断をしました!生き残る為に古河公方軍に運命を賭けます!
岩槻城方面の戦いは古河公方軍が三つの城を攻略した古河公方軍が優勢です。
越後国から援軍が来ています。
岩槻太田家当主、太田資正の視点からは古河公方軍が勝つ可能性が高く見えます。
太田資正が古河公方軍に運命を賭ける決断をしました。
1544年(天文13年)4月21日~
岩槻太田家当主、太田資正22歳
正室は扇谷上杉家、重臣、難波田憲重の娘、実家が松山城主なので松姫と呼ばれ、嫡男2歳を生みました。
側室は滝山城の大石定久の娘、昨年嫁ぎました。
滝姫と呼ばれています。
東大宮城の陣地に滞陣する立花将広の次男が大石定久の養子になりました。
立花将広は滝姫と義理の叔父と姪の関係でした。
1ヶ月前に滝姫の実家の滝山城が山内上杉軍の大軍に攻撃されました。
立花将広は軍師として滝山城に籠城して大勝利に導いた最大の英雄です。
滝姫には実家を救った神様みたいな存在です。数日前、立花将広が岩槻城に挨拶に訪れて感激の対面をしています。
数日前から滝姫は夫の異変に気がつきました。
以前は大きな声で会話してる資正達が急に声を落として話し、部屋に籠り、密談してる気配がします。戦で忙しいと資正に避けられ、逢えなくなりました。
これは絶対に怪しいと考え、滝姫のお付きの女中と老臣、若侍が情報を集めました。
台所、来客係の女中等から探りを入れると古河公方家の使者や、上杉憲政からの使者が来訪した事が判明しました。
やがて太田家の重臣の子息が人質に出される事が判明しました。
山内上杉家の敏腕宿老、長尾憲長は太田資正に古河公方軍へ寝返る約束を取り付けましたが、安心出来ません。重臣の子息を人質に要求しました。
太田資正の宿老、立川明和の子息と正室、松姫の侍臣、難波田憲和の子息の二人が蓮田城に人質に決まりました。
人質の難波田憲和の子息は正室松姫の親戚の子息です。
松姫が普段から可愛がり、人質に出すのを反対して騒ぎになりました。
やがてそれは台所や来客係の使用人達の噂になり、ついに滝姫の耳に入りました。
やがて蓮田城から迎えが来ます。
午前8時頃、人質の少年二人は大人に付き添われ岩槻城を離れました。
その様子を把握した滝姫は太田資正の裏切りを確信しました。
東大宮城陣地の立花将広に知らせる為、侍女、花子を向かわせましす。
その侍女は大食いの愛嬌たっぷりのぽちゃ娘で、台所方、来客方の使用人や出入り商人と日頃から仲良くしてる人気者でした。城内の噂を集めるのに大きく貢献した侍女です。
城門を守る門番達とも仲良く、怪しまれずに外出しました。
怪しまれない様に城下で買い物を済ませ、ホカホカのお焼きを食べながら、のんびり歩いて4キロ先の東大宮城陣地に向かいました。
岩槻城下から東大宮城まで、警備する兵士達は食べながらのんびり歩いてる花子には警戒せず、無事に通過する事が出来ました。
午前10時過ぎ、立花将広に対面します。花子から滝姫の密書を受け取る将広が驚きました。
将広は花子の手を取り、感謝すると彼女の身柄を預かり、滝山城に無事に返すと保障しました。
岩槻城主、太田資正を裏切る行動をした花子は二度と岩槻城には戻れません。滝姫に逢えなくなりました。
─立花義國、立花将広─
滝姫からの密書に義國が驚きます。
叔父上!
太田資正が裏切る?
蓮田城の上杉憲政に人質を出したと?
そうだ、義國!
この窮地を切り抜けるぞ!
ここには、間もなく敵の大軍が集中して攻撃して来るだろう。
はい!
叔父上!浦和方面から新座方面に退却しましょう!
ダメだ!
敵の予測出来る場所に退却したら全滅の憂き目にさらされてしまうだろう。
指扇方面から荒川を渡り、川越城付近に出るぞ!
川越城の南方で国境の兵力と合流する!
なるほど!
叔父上!国境と補給路が繋がるからですね?!
義國正解だ!
大量の兵糧や陣地の大半の物資を破棄するしか無いから、まともに退却したら疲労と空腹に負けて壊滅するだろう?
川越南部で国境の部隊と合流すれば補給の心配が解消するからな?
はい、叔父上、大宮城陣地の佐伯勢に指扇付近から荒川を渡らせます!
良いか!義國!
太田資正が裏切る事は極秘にする!
これは無駄な衝突を避ける為だ!
今から川越城攻めを口実に移動する!武器と三日分の兵糧だけを携行して移動する!
─西へ4キロの大宮城陣地の佐伯勝長に緊急の指示が届きました。
大宮城陣地を破棄、武器と三日分の兵糧以外は破棄して移動する指示です。
大宮城の城主、小池明正に譲渡する様に指示がありました。
指扇付近から荒川を渡り、入間川を渡り、渡河地点の確保を命じられました。
混乱を避ける為に太田資正が裏切った情報は隠しています。
万が一、大宮城の太田家の兵士と衝突すれば大混乱になります。
残った物資を全て城主に譲渡する事で城主も兵士も喜び、互いの将兵は手を振り別れました。
東大宮城陣地の立花義國、将広の軍勢も武器と三日分の兵糧以外は破棄、城主河野英康に譲渡しました。
太田資正は裏切った事を秘匿する為、岩槻城内の一部の重臣だけの極秘にしていました。
東大宮城の将兵達は川越に向かう立花軍に手を振りました。
太田家の兵士達は自分達の主君が裏切るなんて全く想像出来ない事でした。
大宮城を出発した佐伯勢は指扇の少し北から荒川、さらに入間川を渡りました。
南の合流地点より、遥かに渡り易い場所です。
渡河地点を確保して立花義國の軍勢を待ちます。
夕方16時頃、立花義國の軍勢が現れました。
無事に荒川、入間川を渡り、この日は古谷一帯に布陣しました。
─古谷陣地、立花義國、立花将広
義國、無事に荒川と入間川を渡れたのは誠に良かった。
大石定久殿の娘、滝姫に感謝感謝!
危うかったな?
はい、叔父上が滝山城を救ったから滝姫から救って頂きました。
不思議な縁に助けられました。
義國、滝姫が花子を遣わした事が判明すれば危険な立場になるからな、滝姫の無事を祈るしか無いのが悔やまれる!
我々の為に滝姫と侍女や身近な近習達が身の危険を省みずに情報を集めて救ってくれたのだ。
この事を忘れてはならん!
はい、叔父上!
我々の影に支えてくれる縁の下の力持ちが存在する事を忘れません!
よっしゃ!
川越城の扇谷上杉朝定に脅しを賭けるぞ!これから炊事するついでに河川敷に野焼きするぞ!
こちらから南北1里(4キロ)に野焼きをして、川越城から見れば不気味に見えるだろう?
対岸に居るだろう山内上杉軍の偵察部隊にも不気味に見えるはずだ!
それからなぁ、北東の風流されて野焼きしたら明日の朝まで燃え続けるだろう?
明日の午後にならないと熱が冷めないぞ!だははは!
指扇付近の渡河は無理(笑)
暫し安全が確保されるはずだ!
(笑)
叔父上!流石!
見事な嫌がらせです!
(笑)
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
エイ!トウ!エイ!
掛け声を挙げながら
野焼きする姿は夕暮れから夕闇が訪れても続きます。
川越城の扇谷上杉軍には不気味な風景に見えました。
─川越城、上杉朝定、長尾信忠
信忠?
ヤバいぞ!立花軍が入間川を越えて陣地を広げてるじゃないか?
河川敷が不気味に燃えてるぞ!
殿、明日にならないと状況がつかめませんが、古河公方軍を撃破して来たかもしれません?
だとしたら我々は孤立しています!
信忠?明日が怖くなったぞ?
─河川敷が燃えて、川越城の将兵には不気味で恐ろしい想像をしてしまう状況でした。
─岩槻城の滝姫から侍女、花子の通報で立花義國、将広は素早く対応しました。立花軍は川越城付近に移動しました。
一方、蓮田城で人質の到着を待っていた山内上杉家、宿老、長尾憲長に誤算が発生しました。
午前8時頃に岩槻城を出た長尾憲長の部下達は隠密行動をしていましたが、岩槻城周辺を警備する太田家の兵士に発見されて迎えの5名の内2名死亡、3名が捕縛されてしまいました。人質の少年も保護され、岩槻城に戻りました。
太田資正が裏切りを秘匿していた事が裏目に出ました。
岩槻城内が騒ぎになり、太田資正、宿老の立川明和が収拾しました。
改めて人質を蓮田城に送り、到着したのは昼12時過ぎでした。
蓮田城から山内上杉勢、野田勢、一色勢、が東大宮城へ向かいました。
上尾城から越後勢が東大宮城に向かいました。
総勢26500が東大宮城を目指しました。
立花勢は午前11時には出発しています。
先鋒部隊が東大宮城に近づく頃には立花軍が指扇付近に移動していました。
東大宮城の城主、河野英康は太田資正の使番から立花家を裏切り、古河公方家に帰服すると通達を知らされ、驚きました。
もし、立花軍がここに在陣していれば血みどろの戦いになるはずでした。数時間前まで親しく接した仲間が敵になりました。
使番は岩槻城の太田資正に立花勢が退去、川越城に向かったと知らせました。
─岩槻城、太田資正、立川明和
殿!大変です!
立花勢は川越城に向かい、古河公方軍の攻撃が空振りになりました!
なんだと?
なんでバレたんだ?
立花は何故事前に察知したんだ?
殿!立花勢に知らせる者が居たに違いありません!
人質の一行が警備兵に連れ戻された時に騒ぎになりました。
あの時かもしれません!
明和?その後、城の出入りの記録はあるのか?
出入りの記録をしておりません。
門番も頻繁に交代してるので調べるには時間が掛かります!
明和?
それでは我々が立花勢を逃がしたと疑われるんじゃないか?
殿!犯人探しより、古河公方軍が東大宮城に接近中です!
立花勢の退去を知れば東大宮城が危うくなります!
東大宮城は接収される可能性があるんだな?
はい、守備兵力は500しかおりません。
それなら大宮城も、危ないじゃないか?
はい、大宮城も接収される恐れがあります。
明和?このままだと古河公方家に従う意味が無いぞ!
殿、抵抗すれば古河公方軍はこちらの岩槻城を攻撃するでしょう。
立花家の助けはありません。
抵抗したら滅亡します!
なんて事だ!
古河公方軍に従うと領地の半分近くが没収されてしまうじゃないか?
──太田資正の情勢判断は裏目になった気配がします。──
蓮田城から出発した古河公方軍に残念な知らせが入りました。
立花勢が川越城へ移動中との知らせです。
─山内上杉憲政、長尾憲長─
なんだとぉー!?
立花勢が退去?
川越城に向かっただとぉー!
なんでだぁー!
まぁ憲長、落ち着け!
空振りでも代わりに東大宮城を接収すれば良いじゃないか?
大宮城の佐伯勢も川越に向かっただろうから、大宮城も接収すれば良いじゃないか?
うるせぇー!!
それぐらいわかってる!
使番!
越後勢に大宮城を接収を命じる!
抵抗したら皆殺しにしろ!
以上だぁー!
使番!先鋒部隊に命じる!
東大宮城を接収しろ!
抵抗したら皆殺しにしろ!
以上だぁー!
岩槻城周辺に大きな動きがありました。
太田資正の決断は裏目に出た気配が濃厚になりました。
岩槻方面を勝手に仕切る長尾憲長の策謀も少しのズレから思い通りにならず、イライラする状況です。
さて、この先の展開は?




