表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/7

謁見

 王城からやってきた迎えの馬車は流石に豪華なものだった。客室のベンチは柔らかく、壁や天井には美しい彫刻が施されている。


「凄いですね。行商人の馬車とは全然違いますよ」


「私、馬車に乗るの初めてです! ちょっとテンション上がっちゃってます!」


 三田さんは瞳を輝かせる。


「しかし、どんなグッズが国王に献上されたんでしょうね?」


「……かなりの数が献上されたらしいんです。一通り説明することになるかも。森宮さん……! 頼みますよ!!」


「えっ、だって三田さんは店員でしょ? 僕より詳しいのでは……!?」


「私はお父さんがインフルエンザになったから、たまたま手伝いでレジ打ちしてただけなんです! だからアダルトグッズのことは全然分かりません!」


 三田さん。あのヒゲのオッサン店員の娘なのか……。きっと奥さんが美人なんだろうなぁ。


「まぁ、大体のものは説明出来ると思いますけど」


「よろしくお願いしますね!」


 三田さんと会話していると時間の経過はあっという間で、馬車はすぐに王城に到着した。そして、いよいよ国王との謁見である。



#



 煌びやかな調度品に囲まれた貴賓室に僕達は通された。重厚な長テーブルの上には神の品──アダルトグッズが所狭しと並べられている。


 これを説明するのかぁ……。ちょっと気が重くなって来たぞ。


 二人で緊張しながら立っていると、通訳らしい男性が「どうぞお座りください」と綺麗な日本語を発した。とても真面目そうな人で、性玩具に対する理解は無さそうだ。


 しばし無言の時間。静謐な空気が流れた。そろそろ国王が来る。緊張を抑えるために深く息を吸った。


 カツン。カツン。カツン。


 重厚な足音が響く。二人して立ち上がった。そして、いよいよ扉が開かれ、国王が入って──。


「「スクール水着!?」」


 そんな馬鹿な……。王冠をかぶった偉丈夫がスクール水着で現れるなんて。確かに、アダルトショップには衣装も売ってるけど! まさか着用して現れるとは思わなかったよ!!


「ウンダベエラ、ダドビブロ、マンマン」

「本日はよくぞお越し下さいました」


 二人揃ってお辞儀をする。やはり我々は日本人だ。なんとか吹き出しそうになるのを耐える。


「ノンシリコン、バブルパーマハゲ」

「どうぞ、お座りください」


 長テーブルの長辺に二人して腰を下ろした。


 国王は椅子に付かず、アダルトグッズを物色するように眺めている。そしてテーブルに近づき、その内の一つを手に取った。


「ペロペロペ、クンクン?」

「これは何に使うモノですか?」


 国王が手にしているのはケモノの尻尾が付いたアナルプラグだ。しかし、なんと説明したらいいのか……? チラリと三田さんを見ると、「私は無理!」と顔を振っている。


「それは神々が狩を行う時に使う道具です。自らのお尻に尻尾を生やすことにより獣に成り切り、獣の行動を予測出来るようになるのです」


 通訳が説明すると、国王はなるほどと頷く。


「ペロペロペ、クンクン?」

「これは何に使うモノですか?」


 次に国王が手にしたのはリスの形を模した、吸引するタイプのローターだった。クリ吸引を行いながら震える優れものである。念の為に三田さんを見ると、すっと顔を逸らされた。


「それは傷口から毒を吸い出す神器です。神々の世界では常に争いがあるのです」


 通訳が説明すると、国王はなるほどなるほどと深く頷く。


「ペロペロペ、クンクン?」

「これは何に使うモノですか?」


 三つ目。国王が手にしたのはリモート操作出来るローターだった。そろそろ答えてくれるのでは? と三田さんを見ると、足を踏まれた。


「それは遠隔地に合図を送る道具です。このコントローラーを使って操作します」


 通訳が説明すると、国王の目の色が変わった。


「マズヌレヌ、ゴンブブト、ペログリリナ?」

「それを使って戦争中に指示を送れますか?」


「まぁ、大丈夫だと思いますが」


 通訳が説明すると、国王は立ち上がってスク水姿でこちらに来た。そして僕達の前に膝を折る。


「ダチワワフ。ドルナラ、バリバリバチナナヲガジテバラモン」

「神の使いよ。どうか、私達に力を貸してください」


 国王は顔を伏したまま動かない。


 三田さんと顔を見合わせる。ここで断るのは気まずい。三田さんも同じ意見のようだ。コクコクと頷いている。


「いいですけど……」


 国王はパッと顔を上げ、嬉しそうにするのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ