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4,

 


 午後の授業が終わって、私はまっすぐ寮に戻った。 理由は早く人生最高傑作の手紙(クレーム)を妹に出す為だ。


 昔から甘やかし過ぎた私も悪いけど、友達に宿題やらせたり、恥知らずにも二股かけるだなんて……。 ここはしっかりと叱ってやらなきゃあの子の為にならない。



「まったく、よくこれで婚約者なんて出来たものね。 ああ、まだ婚約者ではないんだっけ?」



 にしても、そのレオーネって令息も見る目無いわ。 外見だけで相手を判断すると痛い目見るわよ。


 ……ちょっと待って。 それじゃ外見一緒で恋人出来てない私の中身とは?



「…………見る目が無いのね、世の男共は」



 と、いう事にしよう。 この件はあまり深追いすると怪我しそうだわ。



「――あっ、おかえりなさいレイア」


「た、ただいま」



 さて、まず書出しは―――『妹よ、私は姉として恥ずかしい』……なんか違うな。 『別に妬んで言ってるわけじゃないけど、二股なんて――』……うん、負け惜しみ感がスムーズに滲み出てるわ。



「エルマ……」



 もっとこう、最初は普通の手紙のように入った方が読まれるかも。 いきなり怒ってたらあの子読むのやめそうだもの。



「エ、エルマっ」


「――は? ……あっ、ああっ! なに? レイア」



 そうだった、私は今エルマだったんだ。 初日だからうっかり忘れちゃうわね。



「あの、お昼の時は……どうして? その、助けてくれた、の?」


「どうしてって、友達だからよ?」



 あの子達大分酷かったから、多分友達じゃなくてもやっつけてたけどね。 もしかして共学より女子校の方が虐めって多いのかな?



「友達……なんて、そんな風に思ってないかと……」


「どうして? ルームメイトだし」


「だ、だって、宿題やらせたり、お部屋の掃除させたり、買い物頼んだり……それだけの関係だと思ってたから……」



 ……本当にごめんなさい、うちの妹が。 手紙の内容がまた長くなりそうだわ。



 私は立ち上がってレイアの傍に行った。 すると彼女はオドオドした様子で俯く。



「そんなの本当の友達じゃないって気づいたの。 これからはお互いに助け合ったり、笑い合いながら付き合っていきたい」


「エルマ……」


「図々しいけど、やり直したいの。 あなたとお友達になりたいから」


「わっ、私なんかと一緒に居たら、みんなに嫌われるよ……」



 ―――もう嫌われてますから。


 じゃなくて、



「誰かを貶めて喜ぶ人間なんて相手にしない、それより自分を高めましょう? ほら、例えばこれは友達としてのアドバイスなんだけど」


「あ……」



 私は、レイアの顔を隠している前髪を優しく左右に分けた。



「こうしてちゃんと顔を見せて、堂々と……」



 ――あ、あれ? これはちょっと……予想外なクオリティが……



「エ、エルマ……? は、恥ずかしい……」


「レイア、あなたメチャクチャ可愛いかったのね」


「――そっ、そんなわけ……!」



 何故隠す、今まで何故隠していた?



「どうして顔を隠してたの?」


「それは……め、目立たないようにって……」



 そう、それはかなりの勘違いね。

 これはちゃんと教えてあげなければ。



「こんな風に顔を隠してる子なんていないんだから余計目立つわよ、寧ろ目をつけられやすいって」


「そ、そうなの?」


「それに、あのいじめっ子達が言うのも一理あるわ。 勉強も大事だけど年頃なんだから恋もしなきゃ」



 ―――私もしてないけど。 してないのに二股容疑をかけられるなんて何か損した気分。



「そうだ! 私が切ってあげる、結構上手いのよっ」


「えっ? えっ?」



 前髪だけならすぐ終わるし、レイアは髪留めとか持ってないかもしれないからね。





「………うんっ、良い感じ!」


「ほ、ほんと?」



 不安そうなレイアに手鏡で顔を見せてあげる。 我ながら良い出来だと思うわ、それに何しろ素材が良いしね。



「だ、大丈夫かな、明日」


「今日囲んできた奴らなんて目じゃないわね、レイアならすっぴんで厚化粧に圧勝よ」


「お、大袈裟だよ……」



 そうだ、確か週末はパーティーがあるのよね?



「今度の週末は一緒にパーティーに行こう! そこで可憐なレイア嬢をデビューさせるのっ!」


「で、でも、私男の子と上手く話せないし、ドレスだってあんまり……」


「ちゃんと傍に居てあげるから平気よ、ドレスは私のを貸してあげるし、きっと令息共が群がってくるわよー?」


「令息共って……」


「絶対楽しそうっ! そして私は―――………謝るわ、その、二股かけた男の子に……」



 ああ、一気にテンション下がった……。 なーんで良いとこ無しで謝るのだけしなきゃなんないのよ。



 ガックリと項垂れた時、部屋の戸を叩く音が聞こえた。



「エルマ居る? ジータよ、話があるの」



 凛とした声は、明らかに向こうが戦闘態勢だと私に教えてくる。



「エ、エルマ」

 

「……うん、パーティーの前に謝る相手居たわ」




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