1-7
カンミはストレートに切り出す。
シフォンは口をつけたストローにブッと空気を吐くと、ボコっと溶岩が泡を立てたような音をミックスジュースが立てる。
「なな、なんにも!」
意表を突かれ咄嗟に答えてしまうシフォンが「しまった!」と言うバツが悪そうな顔をする。
カンミはニヤっと笑う。
「そうか?じゃ、もう聞かないけど」
プイッと背を向け備え付けのタオルで手を拭く。
「え、いや、えっとぉ〜…。そんな意地悪な事言わんくても…」
と涙目になりつつ泳ぎきっている瞳がカンミの笑いを誘う。
「はは、正直すぎるだろ」
シフォンの前まで行き、先ほど入れて少し冷めたコーヒーに口をつける。顔を赤くし硬直したシフォンに見かねてため息を一つつき切り出す。
「俺に何か頼み事でもあるのか?」
長年の勘を信じ鎌を掛けてみる。更に瞳が右往左往する。
『図星だな』と答え合わせが早くて助かると鼻で笑う。
「ここまで言ったんだ。時間が経つと話難くなるぞー」
カンミが軽く茶化す様に煽ってくる。
シフォンは少し黙った後、決意を決めたのか深呼吸をしカウンター越しには見えない手をギュッと握り話し始める。
「実はですね…。学校でこんな課題が出たんです」
タブレットを取り出しHRで渡された資料をカンミに見せる。
「…ほう。実際の店舗で実習か…」
「しかも、自分で実習先を見つけなきゃいけないんです」
『なるほどな。これは言い出しにくいよな』とシフォンの今までの様子に少し同情する。