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外にはスポーティーなフレームの細い自転車に跨がり片足を地に付け、前かがみにハンドルに腕を乗せ、スマホを触っている同級生のビター・ショコラが『いつまで待たせるの?』というような、つまらなさそうな顔をこちらに向ける。
「おそーい!いつまで待たせるのよ」
「ごめん!」
頭を下げ大げさに両手を合わせ謝罪する。
「ま、いつものことじゃん」
「ひどーい!そんな事ないじゃん!」
「はいはい、早く行くよ」
玄関の横に止めてある自転車の前かごにカバンにお弁当が偏らないように入れ自転車をショコラの横まで押していく。
「おまたせー、行こっか」
ショコラがニッと笑顔を浮かべると二人で自転車を漕ぎ進み始める。
同級生で仲は良いがシフォンと違いショコラはカフェパティシエを専攻しているため、教室で中々話すタイミングがない。
その為、この通学時間は二人のコミュニケーションを取る大事な時間なのである。
そして話は自然と昨日の学園で言い渡された現場実習の話になる。
「そういや、あんた。あの実習どうすんの?」
「うん、実はね」
シフォンは切り出すと昨日のガーデンカフェでの出来事を話す。
「えーー!じゃ、あんたはもう決まったってこと!?」
「へへ、そうなんだぁ、今日からだもんね!」
得意げに顎を少し上に上げ胸を張る。
「まさか、シフォンに先を越されるなんてっ!」
「ちょっと、どういうことよ!」
左手を目隠しをするように両目に被せ歯を食いしばるような素振りを見せるショコラにバカにされたような気がしてムスッと食いかかる。
そんなやり取りはいつもの事だからシフォンは別に気にはしてないしショコラにも悪意を含んだ感情は何もない。
「あんた、バイト経験もないのにそんなコネなんて無いと思ってたのに」
「うーん、でもカンミさんの所で決まらなかったら当てなんかないし安心したよー」
シフォンは勉強のために色んなお店に顔を出すことがあるがそれは基本的に指で数えれるほどしか行かない。
その為、実務講習のお願いを出来るほどコミュニケーションをとっていない。
ただ、唯一カンミが経営するガーデンカフェには母親に連れられてから4年間、少ないお小遣いを握りしめ通い続けた。
その結果が昨日に繋がったとシフォンは感じている。