2-2
「シフォンー。ショコちゃん来たわよー」
「え?もうそんな時間!?っはーい!すぐ行くー!」
「早くしなさいよー」
「わかったってば!」
階段下から母親の優しく、角の無いふわっとした声色がシフォンを急かす。慌てて階段を駆け下り玄関へ向かう。
玄関には母親が薄いピンク色のうさぎのかわいいイラストが描かれた包に入ったお弁当を両手で抱えるように持ちシフォンが降りてくるのを待っている。
「はい、お弁当」
「ママありがとう。今日から帰り遅くなるから」
「ええ、ガーデンカフェで働くことになったのよね」
「うん、ママの晩ご飯食べれなくなるの、ちょっと寂しい…」
シフォンは母が持つお弁当を受け取り、少し寂しそうな表情を浮かべた。
そんなシフォンを見て、母親とはこういう物と思えるような優しい笑顔を見せ、そっとシフォンを抱き寄せ胸に沈め頭をゆっくりと包むように優しく撫でる。
家の匂い、優しい母のぬくもりを感じ安心感からか眠気に似た心地よさを感じる。
「まったく、何を言ってるのよ。あなたが望んだことでしょう?」
「うん…」
「じゃ、精一杯頑張ってきなさい」
「うん!」
「じゃ、気をつけてね。新人店長さん」
「もう、茶化さないでよ。じゃね、いってきまーす!」
フフっと笑う母を背中に感じ、いつもの赤いスニーカーを履き、玄関を開け母親に手をふる。