雨
ざぁ、ざぁざぁ。
静まり返った家に雨の降る音が大きく響く。チラリ、とカーテンの隙間を覗くが、分厚い雲しか見えない。だんだんその雲が、なんだか自分に似ている気がしてきて、それでもソファを立つ気にはなれなくてそっと目を伏せる。
君と見るための大きなテレビはずっと黒いままで、リモコンも見つけられていない。電球が切れてしまったものだから、私は部屋の電気すらつけられずにいる。早く帰ってきてほしい。充電器のない真っ黒な画面の携帯電話は今日も黙ったままだった。
君と座るためのソファの上で膝を抱える。近い方がいいからと少し小さめのソファを買ったのに、とても広々としていた。真冬のようにキンと冷えた空気が指先を凍らせて、自分を抱えこんで必死に暖をとる。
寒い。寒い。毛布を取りに行くにも、暖房を入れにリモコンを取りに行くにも、気力がなくて、立ち上がれない。
早く帰ってきて。早く。はやく。ぼんやりとする意識でそれだけを待つ。芯から冷たくなった体の目だけが熱を発していた。ガンガンと頭が痛むのが辛くて、苦笑しながら撫でてくれる君はいなくて。
君が出かけてから何時間だったっけ?君が帰ってこないってことは、そんなに長くない。君が出る時は雨が降る予報なんてでてなかったから、きっと傘を持ってない。ずぶ濡れになって帰ってくるかも。そしたらタオルで包んであげなきゃ。タオルはどこだっけ。バラバラの思考じゃあ答えにたどり着けなくて、だんだんとウトウトしてくる。
寝たくない。寝たくないよ。だって、君がいなくなる夢ばかり見るんだもの。君を探してばかりで、そのせいか、現実でも君の影を探してばかり。君の笑顔が見たいだけなのに。
あぁ、それでも、重いまぶたが、開かない。
はやく、かえってきてね。
二度と来ない「明日」と繰り返される「今日」が作者は割と好物()