第1話【ゲーム世界?現実世界?】
第零章 第1話【ゲーム世界?現実世界?】
【ウォーブレード】
様々な国、勢力が群雄割拠する中世を舞台としたMMOアクションゲーム。主人公は傭兵団を率いたり、たった一人で戦ったり、どこか国に仕えたりと自由度が高く。戦闘は3Dアクションで、魔法やスキルを駆使してPVPやPVEをオープンワールドで繰り広げられるゲームとして一躍有名となった。その知名度は、多くの企業や実況者が参入し、テレビですら連日報道されるほどだった。
そのゲームのプレイヤーの一人、須藤正人こと、トーマは日本人ランカーとして有名であった。世界ランクでいうなら9位、日本ランクでは1位の男だ。自由度の高いウォーブレードではランキングは非常に多岐にわたる。トーマはその多岐にわたるランキングの総合で日本人の頂点に立っていた。世界でも9位である。総プレイ人口20億人のトップテンである。
成人し普通のサラリーマンとして働く傍ら…まぁ、ほとんどさぼったりして頂点をとった。テレビなどの出演依頼も来るがサボっていたのがばれるのを恐れ一切メディア露出などはしたことがない。謎に包まれている男として世界に認識されていた。
さて、そんな男は今草原に倒れ伏していた……。
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「いてて……。は?」
身体の痛みを感じながら当たりを見回すと、草原と自分と同じように倒れ伏している人たちがいた。意味が分からず、頭が混乱している。体に多くの違和感を感じながらなんとか事態を飲み込もうとしてみる。
「いてぇなぁ」
「ぐっ…このくらいなんとも」
俺と同じように数名が起き上がるのを見て違和感を感じる。見たこともないような民族衣装に武器を装備しているのだ。現代社会でありえないだろうと思うもののその装備にどこか既視感を感じる。
「おぉ、団長。ここはどこなんですかい?」
起きたうちの一人である大楯と大剣を背中に背負った大柄の全身甲冑の大男が俺に対して声をかけてくる。
声を掛けられて、よく観察して既視感が何かに気づく。
「お前は……ゴライアスか?」
「あん? 当たり前だろ。頭でも打ったんかい?」
俺がやっていたウォーブレードで率いていた傭兵団【死を運ぶ軍団】の第一師団長の男。だとすると俺の身体に感じる違和感は……。
自分の身体へと目を向ける。黒と白を基調とした大きな鎧、元の身長よりも10㎝以上伸びた190近い高身長。背中にはイベントでゲットした超レアな覇王の大剣。赤に金字でロゴが書かれたマント。完全にウォーブレードのトーマである。そして、目の前に倒れ伏しているのが自分が育て上げた最強の軍団。しかも、ゲームと違い命が芽吹いた存在たち。
「神は見放さなかった…」
「おいおい、団長大丈夫か? アリスよゲールを呼んでくれ! 団長がやばそうだ」
「あいよ!」
ゴライアスに言われて2番目に起きた銀髪ショートの美女が走り去っていく。それを眺めながら俺は大声をあげながら笑うのだった。