第22話 強化合成と謎の攻撃
この球体は——【ゴッドアイ】。
これは、強化合成した物に付けられる付与の個数の上限を解放することができるアイテムだ。
今回俺が泉の女神から貰ったのは、レアリティが「★2」のゴッドアイ。
このことは、ゴッドアイに描かれている目玉の数が二個であることから確認できる。
これを強化合成すれば、クラウソラスに付けられる付与の個数は2増えるのだ。
もともとクラウソラスに付けられる付与の上限は、七個。
これでも十分、化け物みたいな武器なのだが……今回ゴッドアイを使うことで、俺はこの剣に九個までの付与を施せることになってしまうのである。
付与上限が七個だと、やりたくてもできなかったことがあったのだが……今回上限が九個に引き上げられることで、それも可能になる。
これで、俺の今後の冒険者生活は更にいくらかやりやすくなるだろう。
……ちなみにゴッドアイというものは、原則として一つの物体に対して何個も合成できるものではない。
普通の物体の場合、合成できるゴッドアイの限度は1〜2個までであることがほとんどなのだ。
つまり普通の物体は、最高レアリティ「★4」のゴッドアイを注ぎ込んだとしても、付与可能上限は八個までしか増やせないということになる。
だが……クラウソラスは例外だ。
クラウソラスは、際限なくゴッドアイを合成することができる。
この点において、クラウソラスは「無限に付与を施せる武器である」ということなのである。
「合成」
左手にクラウソラス、右手にゴッドアイをもった状態で右手に魔力を集めると……ゴッドアイから煙が発生しだし、その煙がクラウソラスに吸い込まれていった。
ゴッドアイが全部煙に変わり、クラウソラスに吸い込まれると。
「……うん、できるな」
俺はクラウソラスの手触りから、付与上限が九個になったのを感じ取れた。
それを感じ取った俺は……早速、今まで施せなかったあの付与を、クラウソラスに付けることにした。
「『対全属性超ダメージ』付与」
——対全属性超ダメージ。
これは、あらゆる魔物に対するダメージが大幅に上昇する付与効果である。
この付与は強力かつ汎用性の高い付与だが……全くデメリットが無いかといえば、そんなことはない。
いろんな属性に対する超ダメージ効果を詰め合わせにしたような付与なので、一個の付与で五枠も消費してしまうのだ。
この世に存在する属性の数は、特殊なものも含めると五個以上あるので、便利な付与であることは間違いないのだが……そもそもこの付与を施せる武器は、そうそう手に入るものではないのである。
クラウソラスには、この他にも『追尾』『風刃』『電離』の三つを付与しているので……上限が七個だった時には、この『対全属性超ダメージ』を付けることができなかった。
だが今なら、それが可能である。
残りの一枠に何を付与するかは……まあまたボチボチ考えよう。
ゲリラ特殊空間は、女神召喚後しばらくすると消えるので……あとはギルドに帰ってこのことを説明し、クラーケンが出現しなくなったことを証明すればいいだろう。
そんなことを考えつつ、俺は踵を返した。
……が、その時。
バッシャァァァン!!
泉が消える直前。
間一髪のところで、物凄い水しぶきと共にクラーケンがこっち側に渡ってきてしまった。
「……来るんかい」
まあ今の超ダメージがかかったクラウソラスでなら倒せないこともないだろう、などと思いつつ、俺は剣を構えた。
そして剣を上段に振り上げ、風刃を飛ばすべく剣を振り下ろそうとした。
だが、その時。
「グゴアアァァァァァ……ア?」
突如クラーケンに切り傷ができたかと思うと……クラーケン本人すら「何に攻撃されているのか分からない」という表情のうちに、クラーケンは更に切り傷を増やし絶命してしまった。
……一体何が起こったのか。
「『トラップダウジング』付与。……何も検出されない、か」
訳が分からなかったが……針金に罠検知の付与をかけて調べても何も出てこなかったので、俺はまあ何かラッキーだなと思いクラーケンを魔法袋に入れて持ち帰ることにした。
[side:ナナ]
ロイルがクラーケンの調査依頼に勤しんでいる頃。
マリーの護衛・ナナは、付与で超絶強化された剣の性能を確かめるため、森に狩りに来ていた。
「『遠方範囲全方位攻撃』とか『死体蹴り』とか……効果は教えてもらったけど、実際どんな感じなんだろ」
自分の戦力をきっちり把握しておくことは、護衛として最適な行動を取るために重要なこと。
そう思った彼女は、マリーに外出予定が無い日を利用して、剣の使い勝手を把握しておこうと思ったのである。
「まずは……えいっ!」
森を探索すること数十分。
ナナはまず、最初に遭遇したダテメガネエイプという魔物をその剣で斬りつけた。
通常ならちょっと深めの傷が入る程度の太刀筋だったが……『対全属性ダメージ上昇』込みのその一太刀は、ダテメガネエイプ一瞬で絶命させた。
次に魔物に遭遇したら、コイツを使って『死体蹴り』の効果を調べよう。
そう考えたナナは、ダテメガネエイプも死体を持ち歩くことにした。
そしてまたしばらくすると……今度はナナの目の前に、マッドドラゴンというモグラ型の魔物が姿を現した。
「さーて、どんな感じになるのかな……」
などと言いつつ、既に死んでいるダテメガネエイプを更に斬りつける。
すると……。
「ギャアアァァァァ!」
マッドドラゴンも、それに連動するかのように血しぶきをあげだした。
ナナが念のため計八回ほどダテメガネエイプを斬りつける頃には、マッドドラゴンも完全に息絶えていた。
「……え、これで終わり? ちょっと便利過ぎない……?」
戦いの後……ナナは思わずそう呟いた。
ナナがそう思ったのには理由がある。
マッドドラゴンは本来、集団戦を得意とする魔物なのだ。
一匹が地面から顔を出して冒険者を挑発しつつ……地面に潜伏している仲間が不意打ちを仕掛ける。
それが、マッドドラゴンの戦法だ。
だが……ナナが『死体蹴り』でマッドドラゴンを処理した後は。
数十秒経っても、地面からは何も襲ってこなかった。
これは、地中に潜んで不意打ちを狙っていたマッドドラゴンたちまでも、遠方範囲全方位攻撃に巻き込まれて死んだということに他ならない。
そのことを踏まえ、ナナは「便利だ」と感じたのであった。
……尚、ロイルが対峙していたクラーケンも、ナナの『遠方範囲全方位攻撃』の効果範囲内に入っていたことは彼女は知る由もない。
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