表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍化】病弱だった少女は転生して強い魔力と愛する人たちを手に入れた  作者: 冬野月子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/57

思惑 03

「何だ、その不機嫌そうな顔は」

父上は僕の顔を見ると笑みを漏らした。

「いえ…別に」

せっかくエミーリアが来ているのに呼び出されたのだ。

不機嫌にもなる。

「それで何の御用ですか」

「騎士団長から報告があってな」

団長から?

「この頃、急にお前の剣の腕が上がったそうだな。———不自然なくらいに」


「不自然、とは」

「まず腕の上がり方が急すぎる。それに戦い方も変わったと聞く。あれは騎士の戦い方ではないとも言っていた」

そのうちバレるだろうとは思っていた。

戦い方が変わったのは自分でも分かっている。

僕が対峙しているのは人間相手ではなく魔法———しかもエミーリアは剣技や戦法といったものは全く知らない。

彼女独自の感覚と判断で魔法を操っているのだ。

それは意外にも野生的というか大胆で…こちらの戦い方も、どちらかというと型や様式を優先する騎士の剣技ではなく、もっと泥臭い、実践的なものになる。

「つまり、僕は騎士の道から外れていると?」

「そこまでは言っていないが、まあそれはどちらでも良い」

表情を探るように、父上はじっと僕を見つめている。

「問題は、お前はどこでその技を身につけているかだ」


誤魔化すべきか、正直に話すべきか。

いつまでも隠しきれるとは思っていないけれど…僕たちの訓練の事が知られれば、エミーリアの力も知られてしまう。

彼女の力はまだ本人も分かっていない部分が多くて…それを明かす事が彼女にとって良い事なのか分からない。

せめて父上には話しておいた方がいいのだろうか。

けれど…

「それを知ってどうするんです」

エミーリアとの二人きりの時間を邪魔されたくない。

それが正直な気持ちだ。


「言いたくないのか」

一度視線を外すと、父上は再び僕を見た。

「———ところで。話は変わるが、エミーリアが来る度に二人でどこかへ消えているようだが、どこで何をしているんだ?」

「…何か問題でも」

「婚約したとはいえ結婚前の、しかも未成年の男女が二人きりで隠れて過ごすのだ。問題ありすぎだ」

「やましい事は何もしていません」

「ならばどこで何をしているか言えるだろう。…ああ、前にお前は言っていたな、彼女に訓練に付き合ってもらうと」

分かっているのか、カマをかけられているのか。

———会うなと言われてしまったら元も子もなくなるか。

仕方ない。

僕は覚悟を決めて息を一つ吐いた。

「それは…」

その時、地響きのような音が鳴り響いた。


「何だ?」

父上と顔を見合わせ…ふいに胸騒ぎを覚えた。

脳裏に数日前に起きた、兄上へ落ちてきた粉々になった花瓶の姿がよぎる。

まさか…!

慌てて僕は外へと飛び出した。




音のした方へ走ると、廊下に男が倒れているのが見えた。

その向こうから走って来るのは…

「エミーリア?!」

「ベルハルト様!その男が殿下を…!」

エミーリアの言葉に、咄嗟に倒れた男の背中に乗りかかるとその身体を拘束する。

男は呻きながら身体を震わせていた。

まるで動かそうとしているのに動けないような…これはエミーリアの魔法か?


「ベルハルト?これは何事だ」

後ろから父上の声が聞こえた。

何事と言われても…僕はエミーリアを見た。

「…図書室で…ディート殿下と話をしていたら…この男が本棚を私達に向けて倒してきました」

「何だと」

エミーリアの言葉に父上の顔がさっと青くなった。

「それでディートは…」


「———私なら…無事です」

兄上の声が聞こえた。

運動などしない兄上が…苦しそうに息を切らしながら走ってくる。

「エミーリアが…私の身体を引いてくれたので…」

「そうか」

ほっとした顔を見せると、父上は僕の下の男に視線を落とした。

「……近衛兵のお前がなぜこんな事をする」

この男は僕も知っている。

騎士団の中でも特に真面目で忠誠心も厚い男だ。


父上の声に男は目線だけを上げた。

「…国の…未来のため…」

ぎり、と歯ぎしりをした男の顔がふいに歪むと…ごぼ、とその口から真っ赤な血がこぼれた。

これはまさか…

「毒か!」

しまった、服毒したか!

見る間に男の顔が青黒くなっていく。

手遅れか…そう思った時、エミーリアが男の側にしゃがみこんだ。

「逃げるなんて許さない」

小さく呟いてエミーリアは僕を見た。

「ベルハルト様、離れて下さい」

男から離れるとエミーリアの手が男の身体に触れた。

小さな手が光ると…男の身体が光に包まれる。

光が消えると、男の顔色が戻ったように見えた。

男から呻き声が上がるとその目が開かれた。


「毒は消しました」

エミーリアの言葉に男は頭を上げた。

「な…んだと…」

「誰かに命じられたのか」

僕は再び男の身体を押さえつけた。

「この間兄上に花瓶を落としたのもお前か?」

「———」

唇を噛み締めて男は黙り込んだ。

まあ、毒を飲むくらいだから聞いた所で話すはずもないか。

「エミーリア。吐かせられるか?」

「…はい」

彼女の手が男の頭に触れると、再びその手が光る。

「これで…黙秘もできませんし、嘘もつけません」


「誰に命じられた?」

「…そ……れは…」

苦しげに男は口を開いた。

「…オストヴァルト伯爵の……」

僕の背後で父上が大きく息を吐くのが聞こえた。

「———花瓶の件もお前か」

「それ…は…別の……使用人が…」

「その者の名前は分かるか」

「知らない…」


「オストヴァルト伯爵以外に今回の件に加担している者は?」

父上の言葉に、男が上げた二人の男は…共に僕を王位に推そうとする一派の人間だった。

「何故お前は今回の件に加担した」

「…それは…ベルハルト殿下の方が…王にふさわしいから…」

「———」

思わずため息が出る。

「つまり僕がいるから兄上は殺されそうになったという事か」

ああ、気分が悪い。

立ち上がると、不安そうに僕を見上げるエミーリアと目が合った。

「…ありがとうエミーリア」

「いえ…」

弱く微笑んだ彼女を…思わず抱きしめた。

柔らかくていい匂いがして…ああ、癒される。

———いっそ王子なんかやめてしまいたい。

そうだ…エミーリアと二人で旅に出るのはどうだろう。

色々な場所を巡りながら二人で世界一を目指して…いいな、それ。



「陛下!これは…」

騒ぎを聞きつけて、ようやく数人の騎士達が姿を見せた。

「この者を拘束して牢へ入れておけ。あと三人捕らえろ。ディートを殺害しようとした罪だ」

「…はっ!」

父上は名前の上がった三人の貴族の名前を告げた。

指示を受けた騎士が下がると、僕達へと向く。

「さて。謀反者を捕まえている間に先刻の話の続きをしようかベルハルト。エミーリアも一緒にね」

———そういえば今、父上達の前で思いっきり魔法を使ったんだっけ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ