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【電子書籍化】病弱だった少女は転生して強い魔力と愛する人たちを手に入れた  作者: 冬野月子


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兄妹 02

「———ああもう。一番接触させたくない奴に見つかるとはな」

「…ルプス?」

背後のルプスと私を交互に見た男の顔がふいに険しくなった。

「何故お前がエミーナ様といる」

「エミーナ様じゃねえよ。よく見ろよ歳が違うだろ」

男は改めて私を見た。

「———エミーナ様じゃなかったらこの方は…」

「エミーナ様の娘のエミーリア様だ」


「娘?」

男の目が見開かれた。

「ああ、何と…」

「姫様に近づくなトロワ。お前が触れると姫様が穢れる」

トロワと呼んだ男の襟元をつかんでその身体を押しやると、ルプスは男と私達の間に立った。


「ルプス…これはどういう事だ」

「この子はエミーナ様とあの人間の間の子供だよ」

「———あの男のだと…」

赤い目が怪しく光ると、ゆらりとトロワから黒い気が立ち上った。

思わずベルハルトにしがみつくと…今度はその顔が悲しげな表情になった。

…何なんだろう、このひと。

なんか変というか…

「これ以上姫様を見るな。穢すな」

「…お前は私を何だと思っているんだ」


「変態でしょ」

綺麗な声が響いた。

「兄さんはエミーナ様の事になるとおかしくなるから」

現れたのは…わあ、綺麗な女のひと!

兄さん?顔が似てる…美形兄妹なのね!

「フィーア…お前もいたのか」

「久しぶりねルプス。姿を見せないと思っていたら…まさかこんな宝物を手に入れていたなんてね」

フィーアと呼ばれた女性は私達に近づくと、にっこりと微笑んだ。

「初めましてエミーリア様。私達はエミーナ様が子供の時から仕えていたのよ」

「お母様に?」

子供の時からって…このひとまだ二十代くらいに見えるけど…

「まあ…本当にエミーナ様そっくりね。———ところで」

急にその視線が冷たくなる。

「その人間は何なのかしら」

…美人の冷たい顔、怖い!


「僕はベルハルト。エミーリアの婚約者だ」

「婚約者?!」

兄妹が揃って声を上げた。

「ちょっとルプス!どういう事?!」

「姫様はずっと人間として生きていたんだ。で、そこの王子と婚約したんだと」

「王子?」

フィーアの冷たい瞳が値踏みするようにベルハルトを見回す。

「ふーん。確かに品はあるし見た目もいいけど。中身はどうかしらね」

「中身は俺が保証するぜ」

「あんたの保証なんて当てにならないわよ。大体何で人間が側にいるのを許している訳?」

「そこの王子はな、姫様の暴走を抑えられるんだ」

「暴走を?」

「光魔力が異常に高いんだよ。姫様は半分人間の身体だからな、魔力が特に不安定になりやすいんだ。何度か助けられているぜ」

「…ルプス。あんたいつからエミーリア様といるの」

「んー半年以上?」

「半年?そんな前から?!」

「エミーナ様に娘がいたなんて報告受けていないぞ」

「報告なんてしてないし」

「あんた…どれだけ魔王様がエミーナ様の事を心配して…」

何かに気づいたようにトロワが目を見開いた。

「おい、それでエミーナ様はどこだ?」

「亡くなられたよ」

「…何———」

「もう…十五年以上前か?姫様」

「多分…」

私は頷くと、胸元からペンダントを取り出した。

「お母様はここに…」


「そんな…エミーナ様……」

がっくりとトロワは崩れ落ちるように膝をついた。

「———それで…テオだったかしら?あの人間は?」

「それは消息不明だ」

「まあ…それじゃあエミーリア様は一人だったの?お可哀想に…」

「私は伯父家族に、本当の家族のように育ててもらったの。だから寂しくなかったわ。それに…今はベルハルトもいるし」

ベルハルトと視線を合わせると、笑みを浮かべてベルハルトは私を抱きしめた。

「そう…それは良かったわ…ほんとうに…」

言葉とは裏腹にベルハルトを見据えるフィーアの表情はとっても冷たくて……この兄妹怖い…


「フィーア、姫様を怯えさせるな」

ルプスがため息をついた。

「ったく、よりによってお前らに見つかるとは」

「そもそもあんたがエミーリア様を見つけた時点で魔王様に報告しないのがおかしいのよ」

「そんな義務ないし」

「は?何を言って…」

「俺の〝主人〟は姫様だからな」

ルプスの言葉に二人の表情が変わった。


「主人って…」

「お前まさか———」

「俺と姫様は血の契約済みだ。姫様を護るのが俺の仕事だ。魔王に報告する必要はない」

「このバカ狼!信じられない!」

「ふん、俺が誰と契約しようと勝手だろう」

「血の契約は禁じられているでしょう!」

え…?

「禁じられているって…どういう事?」

ルプスがはっとした顔で私を見た。

「あー姫様は気にしなくていいから」

でも…

「重すぎるんじゃないのか」

ベルハルトが口を開いた。

「一度交わしたら死ぬまで解約できないとか。強制的な主従関係は時に不幸をもたらす事もあるだろう」


「ふーん、さすが王子ね」

フィーアがベルハルトを見た。

「そうよ、血の契約は何よりも優先される絶対のもの。だから魔王様が禁じたのよ。それなのにこのバカ狼は…」

「———俺はこの二十年間、エミーナ様と契約しなかった事をずっと後悔していた」

宙を…どこか遠くを見つめてルプスは言った。

「一度見失ったら二度と会えない。死ぬほどの事が起きても助ける事も…それを知る事すらできない。そんなのもうごめんだ。姫様は絶対に見失わない。エミーナ様のような事にはさせないんだ」

「ルプス…」

ああ、このひとは…本当にお母様の事が大切だったんだ。


「…あんたも兄さんと同じね。エミーナ様の事になると周りが見えなくなる」

「トロワと一緒にするな。お前だって…」


「エミーリア様」

「ひゃあ!」

突然目の前にトロワの顔が…何でこのひといきなり近づくの?!

「私も…貴女と契約をさせてもらえませんか」

「トロワ!お前は絶対にダメだ」

「兄さんが契約なんかしたらエミーリア様が不幸になるわ!」

……トロワって一体…

「姫様、そいつにだけは心を許すな。エミーナ様につきまとい過ぎて魔王から接触禁止を命じられた男だぞ」

「エミーナ様が捨てたものを集めていたのを見つけた時は我が兄ながら気持ち悪くて仕方なかったわ…」

———それってストーカーだよね?!

「それは…無理……」

「エミーリア様…!」

そんな悲しそうな顔されても無理だから!

トロワの視線から逃れるように私はベルハルトの背中に隠れた。


「ところでお前らはここで何をしているんだ」

「核の採集よ。この森に棲むバジリスクの核はいい薬の材料になるから獲りにきたの」

「バジリスクか。———なあ、核はやるから倒すのこっちにやらせてくれない?」

「あんたに?」


「俺じゃなくてベルハルトに。今特訓中なんだよね」

ベルハルトを指してルプスはにっと笑みを浮かべた。

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