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【電子書籍化】病弱だった少女は転生して強い魔力と愛する人たちを手に入れた  作者: 冬野月子


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龍の王 02

「———うっそ…マジで?」


黒い目が大きく見開かれた。

「君も…ニホンジン?」

こくこくと私は頷いた。

「ホント?!俺だけじゃなかっ…」

「うわあ、すげえ!」

少年の上げた声にハッとする。

…しまった、ベルハルトを見ていなかった。

援護する必要もなく倒せたみたいだから…良かったけど。

バレたら後で…絶対怒られる。

「なにあの人、メチャクチャ強い!」

少年は興奮していた。

私はベルハルトの側へ駆け寄ると、魔物の核を取り出した。

「それじゃあ、帰ろうか」

「あ…ええ…」

帰っちゃうの?

今大事な話を…


「おにいさん、すごい強いね!」

少年が私達へ走り寄ってきた。

「ねえ、オレに剣を教えてよ!」

「は?」

「オレ、強くならないといけないんだけど、カイの奴全然教えてくれないんだよ」

「俺は剣技なんて知らないからな」

「ほら。だからおにいさん教えて?」

無邪気な笑顔を向けてくる。

確かエミールより一つ下なんだっけ。

フリッツと同じ歳か…何だか漫画よりも幼い感じね。


「僕は…」

「ベルハルト、少しくらいいいんじゃない?」

私はこっちの人に用事があるし!

「人に教えるのもきっといい勉強になるわ」

「———少しだからな」

にっこりと笑顔でそう言うと、ベルハルトはため息をついて少年に向き合った。


「ありがとう!オレ、アーベルって言うんだ」

「…ベルハルトだ」

二人が剣を構えて向き合ったのを見て私とカイは少し離れた所へ移動した。



「俺、前世はマツダ・カイトって言うんだ」

そう言うとカイは地面に木の棒で「松田海人」と書いた。

「…私は白石咲美」

同じように名前を書いた。漢字なんて…この世界で初めて書いたわ。

「エミちゃんか。いやーびっくりするよね。自分が漫画の世界に生まれ変わるとかさ」

「そうね」

「しかもさあ、主人公ならまだ分かるけど、なんで俺ドラゴンなの?!」

「……あはは」

確かに…

「それを言ったら…私は性別が違うわ」

「そうだなあ…うーん…」

カイは首を捻った。

「確かに…ちょいちょい漫画と違う所があるんだよなあ。アーベルはバカっぽいし」

「…そうなの?」

「バカというかガキというか…。あいつ家族もいないし」

漫画だと…両親と妹がいたわよね。

「色々違うのね…」

「エミちゃんの方は?」

「私は…魔王の子供じゃなくて、孫だったの」

「孫?」

「私の母親が魔王の娘なの。…それに、魔王って漫画みたいに悪い人じゃなさそうだわ」

「そうなんだ。…そうか、だったらこの先のストーリーも漫画と違う可能性が高いな。———それならいいかな」

「え?」

「結末が分かってる未来なんてつまらないじゃん」

カイは私を見て笑みを浮かべた。

「一度読んだストーリーそのままをなぞるなんてつまらないと思ってたけど。違う可能性があるんだったら、うん、やる気出てきた」

今まで…やる気なかったんだ。

だからアーベルに対してもあんな態度だったんだ。


「ちなみに、漫画の終わり方ってどんなだったの?」

「最後まで読んでないの?」

「私、完結する前に死んだから」

「そうなんだ…。どこまで読んだ?」

「魔王の前までたどり着いた所よ」

「じゃあ最終巻を読んでないのか。苦労して魔王を倒すんだよ」

「それは想像がつくわ」

漫画なんだし!負けないわよね普通。

「で、アーベルは龍族の王に、ベルハルトは国王に、エミールは魔王になるんだ」

「え…魔王?!」

「それで三つの国が協定を結んで世界が平和になるって終わりだったよ」

「そうなんだ…」

エミールが魔王…息子なんだしあり得るのか…

でもベルハルトが国王って…ディート様は?


「しっかし…エミちゃんは超可愛いね」

カイが私の顔を覗き込んできた。

「エミールが女の子になって良かったなあ。ねえ俺とデート…」

「———おい」

いつのまにか近くにきたベルハルトがカイに剣を突きつけた。

「人の婚約者に何をしている」

「…婚約者?!」

驚いてカイが私を見たのでこくりと頷く。

「え、何もうデキてるの?それはズルくない?」

何がズルいの?!

「まだ若いんだしもっといい相手がいるかもしれないじゃん。俺とか…」

「斬られたいのか」

不快感を露わにした顔でベルハルトは更に剣を近づけた。

「———へえ、やる?」

カイの瞳が金色に輝いた。

「いいよ、俺今やる気モードだから」

ふいに強い風が吹き抜けた。


そこにいたのは、赤いドラゴンだった。

「…お前が龍族か」

ベルハルトが剣を構え直す。

「カイ?!え、ズルくない?オレとは手合わせしないのに!」

「お前は弱すぎるんだよアーベル。こっちの王子様は手応えがありそうだ」

ベルハルトと向き合ったドラゴンが私を見た。

「エミちゃん、俺が勝ったらデートしてね」

「ええ?!」

「お前…!」

ベルハルトが斬りかかった。

それを軽く躱すとドラゴンは口から火を吹いた。


「わあっ」

「危ない!」

こちらまで火が飛んできたので慌てて結界を張る。

私は大丈夫だけど…アーベルはそういう耐性はまだなさそうなのよね。

「大丈夫?」

「ありがと…ええと」

「エミーリアよ」

「エミーリアは魔法使いなの?」

「ええ」

「すごいなあ」

アーベルはパアッと笑顔になった。…うう、可愛い。

何かこう…母性本能をくすぐられる感じ?

素直でいい子なのね。


ところで…どうして仲間になるはずの二人が戦っているのかしら?

ドラゴンは…きっとベルハルトより強いだろうから魔法で援護した方がいいんだろうけど…カイは遊んでるみたいだし、そもそもベルハルトの方から仕掛けてきたんだから、助けなくてもいいかな。

———私の事になるとすぐムキになるのをやめた方がいいと思うのよね。


「二人とも…強いなあ」

アーベルがぽつりと呟いた。

「オレも…あんなに強くなれるのかなあ」

「強くなりたいの?」

「んー。強くならないといけないんだって。何かオレ、龍族の王?てのになるらしいから」

「なるらしい?」

「印があるんだって」

アーベルが見せた右手の甲には、龍に似た形の痣があった。

…うん、知ってる。王の印よね。

「王に相応しい強い剣士になれっていうんだけどさ、カイはいきなり魔物と戦わせるだけで戦い方とかほとんど教えてくれないし…」

「それは…ひどいわね」

ホントにやる気がないんだなあ。

「オレ…家族もいないし、行く場所もないからカイに付いていくしか出来ないんだけど。———何でこんな事してるんだろうな」

か、可哀想…


「エミーリア達は何で魔物を倒しているの?」

「旅をしてるの。魔物を倒すのはお金を稼ぐためと、強くなるためね」

「強くなってどうするの?」

「うーん…どうするんだろう」

そういえば…

ベルハルトは世界一強くなるっていう目標があるけど、確かにそんなに強くなってどうするんだろう?

「分からないの?」

「そうね…あまり考えてなかったわ」


漫画では魔王を倒す目的があったけど…そもそも魔王を倒す必要があるのかしら?

会った事はないけど私のお祖父様だし。

…エミールはどうして父親を倒そうとしていたんだろう。

最終巻にその理由も出てきたのかな。

後でカイに聞いてみよう。


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