表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【電子書籍化】病弱だった少女は転生して強い魔力と愛する人たちを手に入れた  作者: 冬野月子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/57

旅立ち 03

「何…だと」


陛下の声は震えていた。

「…それはどういう…」

戸惑った視線がディート様を見る。

「———妃をここへ連れてこい」

数人の兵士が廊下を走っていった。


「母上…が…?」

頭の上で声が聞こえた。

「どうして…母上が…」

「…何かの間違いという事もある」

陛下の手がベルハルト様の肩に触れた。

「ともかく…あれに聞いてみないと———」


「あんな子いらないのよ!」

悲鳴のような女性の声が響いた。

兵士に両腕を抱えられた王妃様は…いつもの優しい姿と違って、髪は乱れ、充血した瞳が異様な光を帯びていた。

「レオノーラ…まさか本当にお前がディートを……」

「出来損ないの息子なんていらないのよ!熱ばかり出して…すぐに寝込んで…」

「自分が何をしようとしたのか分かっているのか!」

「母親の私が責任を取るのよ。出来損ないなんて産まなかった事にするの」

虚ろな王妃様の瞳がベルハルト様を映した。

「ベルハルト…私の息子はあなただけよ。あなたなら父上のような立派な王になれるわ」

「母上…あなたは———」

私を抱きしめるベルハルト様の腕は震えていた。

「…ああ、あなたが王になるのにその娘も邪魔ね」

王妃様の瞳が私を見据えた。

「お前もディートと一緒に…」

「やめろ!」

ベルハルト様が王妃様から隠すように私を抱え込んだ。


「…もういい…王妃を連れていけ———」

深く息を吐いて陛下が命じた。

「牢…いや、部屋に入れて出られないよう閉じ込めておけ」


来た時と同じように兵に引きずられるように王妃様が去ると、思い空気が部屋中を覆った。

「どうして……」

ベルハルト様が呻く。

「どうして母上が———」


「ベルハルト…お前も部屋に戻って休め。エミーリア。ベルハルトに付いていてくれるかい」

「…はい」

陛下の言葉に頷いて、私達もディート様の部屋を出た。



自室に戻るとベルハルト様はのろのろとソファに腰を下ろした。

その隣に座ると、私の手をぎゅっと握りしめる。

「エミーリア———」

私の肩に埋めてきた頭を、空いた手でそっと撫ぜる。


もっと…早くに思い出せば良かったのだろうか。

王妃様が第一王子を殺そうとすると…漫画で知っていたのに。

思い出せていれば止められただろうか。

それとも———

運命は変えられないものなのだろうか。



「僕が…いなければいいんだ」

長い沈黙の後でベルハルト様が口を開いた。

「ベルハルト様…」

「僕がいるから兄上はいらないと…殺されようとするんだ」

頭を起こして私を見る。

「僕は王子をやめる」

私を見つめる青い瞳には強い意志が宿っていた。

「城を出る。一緒に来てくれるよね」


「はい、もちろんです」

私はベルハルト様の手を握った。

「どこまでも一緒に行きます」

「ありがとう…僕のエミーリア」

額を重ねて、笑みを交わすと私達は唇を重ねた。




クローゼットの中から街へ行く用の服を取り出し着替える。

母親の赤いペンダントをつけて…その他のアクセサリーをいくつか袋に入れる。

とりあえずこれを売れば当分の資金になるよね。

家族に置き手紙も残したし、これで大丈夫かな。


「よし。行こう」

マントを羽織り、窓を開けるとひんやりした夜風が吹き込んできた。

これから使う魔法は初めてで…緊張するけど。

大丈夫、出来る。

だって私は———エミールなんだから。


身体が浮き上がった。

わあ、鳥みたい。

あっという間に屋敷が小さくなって…すぐに王宮が見えてきた。

ベランダでベルハルト様が手を振っている。


ベルハルト様が手を伸ばしたので、腕の中に飛び降りた。

「天使が来たのかと思ったよ」

私を抱きしめてベルハルト様が笑った。

天使じゃなくて…魔物ですけどね。


「ディート様の容体は?」

「大丈夫だよ。ショックは受けているけど…でもきっと大丈夫。兄上は意外に心が強いから」

「王妃様は…」

「———あんな人、知らない」

一瞬ベルハルト様の表情が硬くなったけれど、すぐに笑顔になった。


「さて、どこへ行こうか」

「…西へ行きましょう」

「西へ?」

「はい」

西にはあの漫画の主人公達がいるはず。

そして私の家族も———


「分かった。じゃあ西へ行こう」

顔を見合わせて手を繋ぐ。

とりあえず夜が明ける前に…この国を出てしまおう。

「では、飛びますねベルハルト様」

「ああ…その前に」

「はい?」

「〝様〟は付けないで。その丁寧な言葉もなしで。僕たちはもう王子と伯爵令嬢じゃなくなるんだから」

「———分かったわ、ベルハルト」

私がそう言うと、ベルハルトさ…ベルハルトは嬉しそうに笑った。

…笑顔の眩しさはきっといつまでも王子様だけどね!


顔が赤くなるのを誤魔化すように、私は夜空を見上げて飛び上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ