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【電子書籍化】病弱だった少女は転生して強い魔力と愛する人たちを手に入れた  作者: 冬野月子


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思惑 08

塔の外に出るとベルハルト様は無言で私の手を引いて早足で歩き出した。

…また怒ってる?

いつもの訓練場の東屋までくると、隣に座らされる。

「…また僕が知らない事を明かした」

「え?」

「エミーリアの母親の事」

ああ…

「…その話は私もつい最近お父様から聞いたばかりなので」

「つい最近って?」

「ここで…お父様達の前で魔法を見せた日の夜です」

私はベルハルト様にお父様に言われた事を話した。


「———本当の親に会いたい?」

私の話を聞いてベルハルト様はそう尋ねた。

「…そうですね…もしも会えるなら」

どうして私を手放したのか、聞いてみたい。

漫画のエミールが肉親と別れた理由も知らないから。

エミが読んだ中にはその答えは出てこなかった。


「じゃあ、旅に出たらエミーリアの両親を探しに行こう」

ベルハルト様は真っ直ぐに私を見つめている。

———でも、その旅は…私の正体を知られる旅でもあるのだ。

もしも私の親の事を知ったら…それでもベルハルト様は、私と一緒にいてくれるだろうか。

「エミーリア?」

思わず俯いた私の頭をベルハルト様が撫でる。

「ベルハルト様…私…」

言ってしまったら…ベルハルト様は……

「…私は…多分、人間じゃないんです」


「人間じゃない?」

「父は…お父様の弟だと思うけれど…母は……」

ぐ、と息を飲んだ。

「魔物…なんです」


魔物にも色々な種類がある。

その中でも人間とよく似た、魔物の中でも特に強大な魔力を持った一族がいる。

そしてその長は『魔王』と呼ばれている。

エミールの…本当の父親だ。


「———どうして魔物だって思うの?」

「私の…目です」

「目?」

「本当は…私の目の色は、赤いんです」

これを見せるのは怖いけれど。

私は目の色を元に戻して…ベルハルト様を見た。


赤い目は魔物だけが持つ。

〝エミール〟も…普段は菫色の瞳をしているけれど、大きな魔法を使う時はその目が赤くなる。


ベルハルト様は…赤い目の私をどう思っているだろう。

その表情から…心までは読み取れない。

無理やり魔法で心を覗く事もできるかも知れないけれど、そこまではしたくない。

……やっぱり、魔物なんて気持ち悪いかな。

目を伏せると…柔らかなものが額に触れた。

え…


「———綺麗な瞳だね」

ベルハルト様は優しい笑みを浮かべていた。

「赤は、エミーリアによく似合う色だ」

「…気持ち悪くないですか」

「どうして?」

「だって…魔物なんて…」

「———君が何者でもいいよ。人間じゃなくてもね」

ベルハルト様が私の頬を両手で包み込む。

「エミーリアは僕の、唯一の存在だ」

「ベルハルト様…」

「僕のエミーリア」

ベルハルト様の青い瞳が視界いっぱいに広がった。

そして唇に柔らかくて温かなものが触れて…

えええ?!

い、今!口に…?!

「瞳だけじゃなくて頬まで真っ赤になったよ」

ベルハルト様が目を細める。

だ、だって今!

「キ、キスした…」

「うん、したよ」

うんって!だって唇へのキスは!

「結婚…しないとダメだって…」

「そうだね。だから僕達はもう結婚したんだよ」

…その理屈はおかしくないですか?!

「君は僕のものなんだから。少しくらい早くてもいいじゃん」

そう言うともう一度…さっきよりも長くキスをされた。


「可愛いエミーリア。大好きだよ」

そう言って笑うベルハルト様は…眩しすぎて。

…こんなに眩しく見えるのは…光属性の魔法のせいなのか……私も、ベルハルト様が…好きだからなのかな。


ずっと…私が人間ではないと知られたら、ベルハルト様に嫌われてしまうかもしれないと怖れていた。

だから自分の…ベルハルト様への気持ちには気付かない振りをしていた。

だけど…大丈夫、なのかな。

「ベルハルト様…」

「ん?」

「私も…大好きです」

ベルハルト様の目が大きく見開かれ———すぐに細められた。

「初めて好きって言ってくれたね」

だって…

「…人間じゃないかもって知られて…嫌われてしまったら…こわくて…」

「僕がエミーリアを嫌うわけないよ」

「でも…」

「———そんなにエミーリアが不安に思ってたなんて。まだまだ足りなかったのかなあ」

はあ、とベルハルト様はため息をついた。

え?何が…?


「これからもっともっとエミーリアの事好きっていうし、態度で示すからね」

ちゅ、と音を立てて唇が触れる。

「もちろんキスもたくさんするよ」

えええ?!

「大好きだよ、僕の可愛いエミーリア」

……ベルハルト様が眩しすぎて見られません…。

思わず目を閉じてしまった私をベルハルト様が抱きしめた。


視界を閉ざしていてもベルハルト様の眩しさは身体に伝わってきて…まるで光に包まれているようで。

それはとても心地よい感覚だった。

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