光明
殺されかけるセリ。
起死回生の一打はあるのか。
どんっ・・・
大きな黒と茶色の塊が木にぶつかり、鈍い音が聞こえた。
とっさに横に逃げた自分がいる。よそ見をしなければ、十分避けられる速度ではあるため、あまり危なくはないが、それでも塊が迫るのには、恐怖を感じる。
「どうすんのこれ・・・さわれないし、絶対逃してくれないやつだろ。。。」
どこに目があるかもよくわからないが、明らかに自分に体を向け威圧している。
「来るんじゃなかった来るんじゃなかった来るんじゃなかったあああああ!!!どうするどうするどうする!!!」
そういって、自分の手持ちを某青狸のように探すが、もともとこんなモンスターを退治するために来たわけではないので、有用な物は何一つ見当たらない。逃げながら探すが、後ろでは、
どんっ・・・
どんっ・・・
どんっ・・・
どんっ・・・
と何度も直進し、木にぶつかる音が聞こえ、更に自分を焦らせる。
その焦燥から足がもつれ、転けそうになるが、慌てて大勢を整える。が、そのもたつきが、自分の足に毛の塊を触れさせたのは、特段変なことではなかった。
ずっ・・という音が肌から感じるや否や、骨が直接叩かれた錯覚を起こした。
「ああああああああああっっ・!!!!!」
痛い、痛いという思いしか出ない、漫画のように、”糞まだまだ・・・”なんて思うのは、所詮ストーリー上の話だということを改めて実感する。
あまりの痛さに、返しがついている毛を無理やり引きちぎる。もちろん肉も幾分持っていかれるが、それをどうともしないレベルの突発の痛みが広がったため、無意識のうちに行っていた。
痛めた足をおさえながら、がむしゃらに走り、背の高い藪の中に逃げ込んだ。
プス・キャタピラーはあまり賢くないのだろう、何度も木にぶつかるうちに、セリを見失っていた。ただ足から滴る血を追いかけて、見つかるのはそう時間がないだろう。
くそくそくそ・・どうすればいい、逃げるのも無理、倒すにもあの毛を触ることすらできない、使えるような道具もない。
なんで俺はここにいるんだ・・・。あの依頼人必ず殺す。殺してやる。(それも生きていればの話だが・・・)
何も考えられない自分の目に、一筋の白いものが目に入った。
なんだ、これが、光明というやつか?あれは、例えじゃないのか、実際に見えるものなのか?
よく見ると、それまでおとなしく自分の肩に乗っていた虫の口から、出ている。。。
これは何だ?よしことは別の生き物のように、独立して動いているの白いものは、何だ。
・・・ふと思い出す。来る前に見た本に書いてあった寄生生物。それがこれなのか・・?
まるで、変な冗談かのように可愛らしい体から出ている気色悪い白い触手のようなもの、よく見ると、その表面には複数の穴があり、表面はぬめりで覆われている。
よしこを見ると、安心しろと言わんばかりに、頼もしい顔をしている。さっさと命令しろとな。
「ふふっ」
その外見とのギャップに、何だかおかしくなる自分がいた。
「死なばもろとも。しがない蟲使いに何ができるか知らないが、あの本を信じて、こいつを信じて、やってみますか。」
こんなことでは死ねない。必ず殺す。
少なからず、落ち着いた心を取り戻し、戦うことを決め、藪から顔を出すと、眼前数十cmのところに広がる毛の塊にまた・・・
また、思考を持っていかれた
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